『SPEED STAR FINAL』が1日、兵庫・神戸ワールド記念ホールで行われ、吉野正人が引退試合で完全燃焼。涙を浮かべつつも「俺はスピードスターとして21年走りきったぞ!」と絶叫し、レスラー生活に別れを告げた。

 吉野は2000年9月にメキシコでデビュー。“スピードスター"の異名通りのその圧倒的なスピードを武器に、闘龍門JAPAN、DRAGONGATEの中心選手として活躍し、タイトルを総なめにした。しかし、2019年12月、古傷の首の状況悪化に伴い、引退を表明。当初は2020年内に引退予定だったが、コロナ禍のため試合が減り、首のコンディションも改善が見られたことで、引退を一時延期。そしてこの日、苦楽を共にしてきた“土井吉"の土井と組んで、R・E・DのEita&ハルクと対戦する引退試合を迎えた。

 ラストマッチでも吉野は衰えぬハイスピードのファイトを展開。土井との連係も冴え渡り、流れるような連続攻撃を披露する。首を攻められると動きが止まり、苦しい時間が続いたが、土井のゲキを受けると奮起。場内の手拍子に押されるように、コーナー最上段からのケブラーダで宙を舞った。土井吉の代名詞とも言える合体フェイスクラッシャーやミサイルキック&ダイビングセントーンの同時弾、パワーボム&スワンダイブ式スリングブレイドなどもさく裂する。

 感傷的な雰囲気をぶち壊すように、Eitaは容赦なくパイプイスを持ち込んで吉野の腹部を殴打。脳天にも振り下ろすが、土井が間一髪阻止する。土井がイスを奪い取ると、Eitaは「吉野にいけ」と促すが、土井が最後に盟友を裏切るはずがなく、Eitaの脳天に振り下ろした。

 ならばとR・E・Dが総出で介入し、ハルクが猛攻に出るが、土井が身代わりになってフロントハイキックを受け止める。その気持ちに応えようと、吉野はラリアットをフルスイングで連発して2人をなぎ倒し、Eitaをトルベジーノからソル・ナシエンテに捕獲した。場内は手拍子で後押しする。

 だが、Eitaも脅威の粘りを発揮。ならばと吉野はライトニングスパイラルを仕掛けたものの、Eitaは急所蹴りで鎮圧した。すかさずハルクは雪崩式E.V.Oを敢行。なんとか肩を上げた吉野だったが、EitaがImperial Unoをぶち込む。これも返した吉野だったが、ハルクがファーストフラッシュで追撃すると、EitaはImperial Uno2連発でダメ押し。32分の激闘の末、吉野がごう沈した。

 吉野が激闘を戦い抜いて完全燃焼。土井の肩を借りて立ち上がると、対戦相手を務めたハルクやEitaと握手を交わした。引退セレモニーではたくさんの関係者から花束を受け取り、笑顔を覗かせる。

 マイクを持った土井は「俺ら2人でDRAGONGATEにおけるタッグの面白さを開拓したよな。ツインゲートのタイトルを作ったのも俺ら2人だ」と胸を張ると、「吉野に1分1秒でも長くリングにいてもらうために」と笑いを交えてマイクアピールを続けたが、最後は真剣な表情で「正直、吉野がいたから、自分はここまで来れました。吉野がいたから、このポジションを築けました。もう感謝しかないです。土井吉、楽しかったな。土井吉、最高やったな。土井吉ができてよかった。吉野と同じ時代にプロレスができて、いい思い出になりました。21年間、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました」と深々と一礼。2人は抱擁した。

 師匠のウルティモ・ドラゴンも「吉野、本当に俺のところに入門してくれてありがとう。心よりお前のことを誇りに思います。これから第2の人生があるけれど、これからもスピードスターで突っ走れ」とエール。スポーツ界からたくさんのビデオメッセージが届き、鷹木信悟、ミラノコレクションA.T.、フラミータ、アレックス・シェリーもねぎらいの言葉を送っていた。

 続いて吉野のあいさつに。「皆さん、本日は本当にありがとうございました。21年前に東大阪を飛び出してメキシコに渡って、校長に拾ってもらって、またこうして校長と再会もできて、このリングに立っていること、そしてここにいる仲間、このメンバーと最後までプロレスができたこと、本当に誇りに思います。ビデオメッセージもあんなにたくさんいただいて、こんなにたくさんの方にリングに上がっていただいて、こんな21年のプロレス人生、幸せでいいかなって思うぐらい今は最高の気持ちです。大きい怪我もたくさんありましたけど、21年、闘龍門からDRAGONGATEのリングで完走できたこと、それは本当に僕の中で嬉しく思ってます」。そう感謝の言葉を口にした。

 さらに、「今日で僕はこのリングを降りますけど、今ここに座ってくれているみんなはこれからもこのDRAGONGATEのリングで戦っていきますんで、彼らを精一杯応援してあげてください。あんたらが緩い試合してたら、俺がもう1回このリングに立つかもしれんからな。そうならんように、お前らでこのリング引っ張っていってくれや。来年のワールドは、もしかしたら俺はどこかその辺の席に座って見てるかもしれんからな。これからのDRAGONGATEを楽しみにしてるわ」と後輩たちにもメッセージ。最後に「21年間、応援してくれた皆さん、本当にありがとうございました。俺はスピードスターとして21年走りきったぞ! 俺がスピードスターや! 俺が吉野正人や! みんな見たか、おい! 最後にもう一言だけ言わせてください。21年間、本当にこんな俺を応援してくれた皆さん、ありがとうございました」と締めくくった。

 10カウントゴングから最後の選手コールを受けると、吉野は思わず涙。感極まった表情でマットにヒザをつくと、仲間たちに囲まれて最後の記念撮影に。笑顔を見せた吉野を仲間のレスラーたちが胴上げし、ウルティモが抱きしめる。仲間たちに深々と頭を下げた吉野は名残惜しそうに客席に手を振りながら、リングに別れを告げた。