経堂の街をテクテク10分ほど歩くと出会えるパン屋さん。名前は〈onkä(オンカ)〉。アイヌ語で“発酵する”という意味のこちらのお店のアイコンは、パズルの1ピース。パズルのピースのようにささやかな幸せをつなげていけたらという気持ちが込められていると知り、いそいそと幸せを探しに行きました(他力本願)。

日々のパンも、特別なパンも

お店は経堂の駅前の商店街を抜けた先、開けた緑道のお向かいにあります。小さなお店が並びついつい目移りしてしまう商店街は、あまり経堂に詳しくない私にもウェルカムな雰囲気で足取りが軽くなります。ガラス張りの小さなお店は、クリーンな空気が清々しい。お店の大きさと比例するかの如く、ちょこんと小ぶりのパンがずらりと並ぶ様はきゅんと来るかわいさです。甘いのからお惣菜系まで多種多様なラインナップは前に立つだけでお腹が空いてきますよ。こちらは〈パンとエスプレッソと〉の姉妹店。いつもお世話になっています(一方的に)!と心の中で敬礼しながら選びました(器用だな)。

「キャラメルクリーム」。
この茶色がキャラメルによるものと思うとたまりません。

これはほんまもんのキャラメルや(突然の関西弁)!砂糖の粒が徐々に焦げて飴化するその瞬間がクリームに閉じ込められているよう。砂糖がキャラメルへと移り変わる様子が映像となって脳内で再生されるほど、キャラメルのほろ苦さやその後のご褒美のような甘さがクリームの中でもくっきりと現れて、これは紛れもなく私達が恋い焦がれるキャラメルの味。温めるととろりんと緩むクリームからはこってりとしたコクも届きます。はむっとかじると、生地はふわっとしたコンタクトの後にクリームとシンクロしてぐにゃりと形を変える柔軟性の高さで、もちっと残る余韻が印象的。

「タンドリー風エビとトマトのフォカッチャ」。
見よ、このぷりっぷりの白肌!

フォカッチャは季節に応じて変わるみたいなので、いまは変わっているかもしれませんが…。フォカッチャ生地はふわふわのクッションのような柔らかさ。その上で跳ねる海老さんはぷりっぷり!跳ねるその身を揺らして食感の良さを主張します。パンにトッピングされた海老でここまでぷりっと活きがいいのは初めてかもと思うほど。そして、噛んだ瞬間にエネルギーが炸裂するジューシーなトマト。海老の上には想像以上にスパイシーなカレーペーストが舌をピリピリと驚かせて、最後にチーズが焼けた香ばしさを放ちます。これはもう立派な1皿の料理。それが皿じゃなくパンの上で繰り広げられているなんてロマンがあるではありませんか(ロマンとは?)

「食パン」。
こんがりの皮がパリッ。

一口目は甘さをほとんど感じません。それ故に小麦の香ばしさがじんわりと控えめに、でもじわじわと伝わってきます。その香ばしさを楽しんでいたら自然な甘みがふわっと現れて最後は優しく包みます。気づけば優しい微笑みが溢れている自分がいます(おそらく)。表面をさくっといった後の内側はとてもソフト。ふわりと触れた後はすぐにふにゃんととろけます。特徴を前に前にと出し過ぎず、ジャムやバター、何にも合わせられそうな余白を残してくれているそんな食パン。変幻自在、お気に召すまま、どうぞ。

パンの生地がおいしいのはもちろん、甘いもしょっぱいもここでしか出会えないような組み合わせのおやつパンやお惣菜パンがいっぱいで、ショーケースの前でふふふと思わず味を想像して笑みが溢れてしまいます。そして、お家に帰って答え合わせをしてまたにんまり。あ、これですね、幸せって。またふらりと幸せを見つけに行きたいと思います。