ピンと背筋を伸ばして、少しのヒールを履いて、コンと響く硬質な足音を聞きながら足を踏み入れるエントランス。ラグジュアリーホテルの緊張感が好きです。ステイしなくてもその非日常へといざなってくれる研ぎ澄まされた空気は、ホテル内のペストリーショップでも。今回は皇居外苑を望むロケーションも素敵な〈PALACE HOTEL TOKYO〉のペストリーショップへ。

大人のお楽しみ!?

店内にはパンやケーキ、焼き菓子、デリなどが均整を保ってずらりと並べられ、ジュエリーショップのように照明を当てられキラキラと輝く姿はまさにサラブレット集団な風格です。有名なマロンシャンティがこの日も美しくショーケースの中でおすまししていましたが、浮気はいかん!と一目散にパンコーナーへ(大袈裟)。〈PALACE HOTEL TOKYO〉のシグネチャーブレッドらしい「パンドマイス」やスタッフの方のおすすめなどをピックアップしました。

「チョココルネ」
見よ、このクリームのたわわさを。“割ったらすごいんです!?”

可愛いサイズ感、やどかりのようなコロンとした愛くるしさ、ぽてっとはみ出たクリーム。どこをどう切り取っても“かわいい”存在のこの子に、ナメてかかっちゃ怪我するぜ(誰?)。一口食べて驚くのはその濃厚さ。キャラメルかと錯覚しそうな糸を引くほどこっくりとした質感からは、濃密なチョコレートの味わいとコクがとろけだします。重く濃厚といえどもそのクリームは、ビロードのようになめらか。それもそのはず。このクリームにはチョコレートに生クリームを合わせたガナッシュが使われているんですって。
断面からもしっかりとわかる、ぎっしりと詰められたチョコレートクリームが真ん中にドンと構えていて、軽やかなパン生地がそれを縁取っているようなバランス。最後のくるりんと巻くしっぽ(?)まで重厚感は続きます。こんなに隙のない、大人だからこそ楽しめるチョココルネってこれまであったでしょうか?
「良いチョコレートを使ってます」ってスタッフの方が言っていたのも納得です。チョココルネだから子供にお土産って買うと間違いなく驚かされちゃう、エッジの効いた子。

「イタリア産焼栗とゴルゴンゾーラ」
きれいなマーブル模様は大理石のよう(本当?)。

ブルーチーズということで、こちらはちょっと温めてからいただきました。もっちりとしたフォカッチャ生地に包まれる、熱で溶けて緩んだゴルゴンゾーラが芳香を辺り一面に振りまきます。断面に美しいマーブル模様を描く青カビの熟された味わいは、バチバチに塩気がたっていながらもまろやかな口当たりと乳製品のコクに言いくるめられて豊潤に広がっていきます。どこからともなく蜂蜜が寄り添って、気づけば甘美な世界の入り口に。トップに飾られたマロングラッセをジョインさせて、めくるめく旨味の渦に絡めとられてしまいましょう。焼栗のほくっと感と栗の風味を媒介にした深い甘みは、ゴルゴンゾーラの刺激的な香りや塩気を一瞬にして違う見え方にさせます。甘じょっぱいって一言では収めきれない、複雑に響く必然な巡り合わせ。これまたお子さま注意報です(褒め言葉)!

「パンドマイス(ハーフ)」
細かな気泡がたっぷり。
温めてバターをのせて味わうのもオススメです。

〈PALACE HOTEL TOKYO〉のシグネチャーブレッドであるコーンブレッド。1961年の〈PALACE HOTEL TOKYO〉創業当初から愛され続けている一品です。鮮やかな黄色が物語る通り、とうもろこしの味わいがギュッとつまっています。驚くのはその食感。一口食べてふわっとした口当たりを感じたと思ったら、全組織が一斉にもぞもぞと違う方向に歩きだす感覚。“みんなして何なんだ!”って慌てふためく私がいます(大喜び)。味わったことのない、粒が立体のまま四方八方に広がっていくかんじ。少し温めるとほかっと緩んで、一粒一粒が柔らかくなり香りもさらに甘く立ち上ります。パウンドケーキ未満の優しい甘さは、とうもろこし発信の甘みかなと錯覚してしまうほど(錯覚じゃないかも)穏やかで、とうもろこしの香りがいつまでもそよそよと香るから、なんだか懐かしいような温かい気持ちになります。

Hanakoのスイーツ特集号にも載っていた「プティフールセック缶」
パレスホテルの品格が閉じ込められているような美しさ。

結局堂々とパン以外に浮気してるやん!って突っ込まれるのは重々承知でクッキー缶もちゃっかりゲット。こちらも洗練さの枠の中でエッジの効いたテイストが冴える一品でした。憧れホテルのペストリーショップは、スタッフの方の対応から包装までどこを取ってもスマートで、輝く店内で一つ一つ吟味して購入するその瞬間も含めて特別なもの。非日常を束の間でも感じられるペストリーショップでのテイクアウト、ハマってしまいそうです。