ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。第43回は、エディター、ライターとして活躍する大場桃果さんが、廃棄された野菜や果物から紙を作る〈Food Paper〉に取材。伝統工芸士・紙漉き職人の五十嵐匡美さんとブランディングを担当する安田昌平さんに話を聞きました。

息子の自由研究を参考に、野菜や果物を使った紙作りに挑戦。

福井県越前市にある、五十嵐製紙の工房の様子。

ーー〈Food Paper〉を手がける五十嵐製紙は1919年創業の老舗だと聞きました。長い歴史のある工房がこのように新しい取り組みをすることになった経緯について教えてください。

五十嵐さん:きっかけとなったのは、福井県が主催する経営とブランディングの講座でした。無事に創業100周年を迎えることができたけれど、日本の住環境が変わって襖紙や壁紙の需要が減りつつある中で、何かしらの工夫をしないと続けていけないかも…という危機感があり、講座に参加したんです。そこで現在〈Food Paper〉のディレクションを行っている「TSUGI」の方々と出会いました。

安田さん:前担当の新山が「食べられる紙を作ってみたい」と相談したところ、五十嵐さんが「実は息子が食べものから紙を作る研究をしている」とおっしゃって。“食べられる紙”ではないけれど、面白そうだなと感じて案を進めることになりました。

五十嵐さん:そのプランを二人で発表したところ最優秀MVP賞を獲得し、2020年2月に開催された〈中川政七商店〉さん主催の大見本市に商品を出さないかと誘っていただきました。それから大急ぎで〈Food Paper〉のコンセプトを固めて商品を作っていきましたね。

よく見ると、みかんの皮のような粒が残っているのがわかる。

ーーなるほど。和紙業界では、原材料の不足も課題となっているそうですね。

五十嵐さん:そうなんです。和紙作りには楮(こうぞ)や三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)といった植物が使われるのですが、山地の開発に伴って自生している量が減ってきています。それに加えて、生産農家さんの高齢化も影響しています。最近はクマがよく出没するため、危険を避けて山へ入らないという人も。人の命に関わる問題なので、私たちも「取りに行ってください」と強くお願いすることもできなくて…。

ーーそれは福井県周辺に限らず、全国的にそうなのでしょうか。

五十嵐さん:はい。他の和紙産地も同じ悩みを抱えているようです。

ーーだからこそ、これまでとは違う材料を使った紙づくりがキーとなったわけですね。〈Food Paper〉の商品を作るにあたってハードルになったことはありましたか?

五十嵐さん:どういう商品群に落とし込むかはとても悩みましたね。考えた末に、多くの方に手に取ってもらいやすい紙文具にしようということになりました。

匡美さんと次男の優翔さん。彼が小学生の頃に毎年続けていた自由研究が〈Food Paper〉のアイデアの元となった。

ーー野菜や果物を紙にする工程で難しさを感じたことは?

五十嵐さん:それは意外とすんなりできました。なぜかというと、息子の自由研究があったから。食材ごとの特性や強度は彼が調べてくれていたので、それを参考にしながら商品を作っていきました。

地域の農園や工場から集まった廃棄食材が紙に生まれ変わる。

ブドウから作られた紙には皮が少し残っているのが特徴。

ーー現在使っている素材はどのように集まってきているのでしょうか。

五十嵐さん:例えばブドウに関しては、近所のブドウ農園でジャムを作る時に出てくる搾りかすをもらっています。そこは無農薬で栽培しているため虫の被害に遭ってしまうことも多く、そういったものを私たちが活用しています。

安田さん:あとは近くの小中学校で子どもたちが食べた後のみかんの皮とか。メインで扱っている玉ねぎやじゃがいも、にんじんは、福井県内にあるカット野菜工場から皮をもらっています。

「ストッカー」1,430円
「小物入れ」1,320円
「サコッシュ」3,960円

ーーそれは皆さんの方からお声がけをして取り組みが始まったんですか?

五十嵐さん:ほとんどがそうです。電話をしたり直接会いに行ったりして、ご協力をお願いしました。あとは、私たちの活動を知った近所の大根農家さんが葉の部分をたくさん届けてきてくれたことも。これから大根の季節になると思うのですが、先日「今年もまた持って行くね」と言っていただきました。

ーー捨てられてしまうはずのものがこうやって素敵な商品に生まれ変わるのは、食材を作っている方々にとっても嬉しいことですよね。

五十嵐さん:そうですね。みなさんに喜んでいただけているので、〈Food Paper〉を始めてよかったなと思います。

ーーちなみに一番人気の商品はどれですか?

安田さん:ノートやメッセージカードが人気ですね。カードは8種類あるのですが、全種類買われる方もいらっしゃいます。

ーーみかんやにんじんはなんとなく色のイメージができるのですが、ネギが想像以上にきれいで驚きました。

安田さん:これは長ネギの青い部分を使っています。焼き鳥のねぎまを想像してもらえばわかるとおり、料理で使うのってだいたい白い部分じゃないですか。だから、廃棄として出てくるのは青い部分がほとんど。その結果としてこのようにきれいな緑色になっています。

ーーなるほど!「これはどの食材のどういう部分かな?」と想像しながら使ってみるのも面白そうですね。

さまざまな取り組みを通じて、和紙の魅力も伝えていきたい。

ーーホームページに「廃棄野菜を受け入れます」と書かれていたのですが、実際にどこかから相談はありましたか?

安田さん:まだ本格的な取り組みには至っていないのですが、生産者さんや流通業者さんから「こういう素材で商品を作ってみたいからサンプル紙を作ってくれないか」という相談は毎月2〜3件ほどもらっています。最近だと、コーヒーの豆かすを使って壁紙を作ってほしいとか。

五十嵐さん:うちはもともと襖紙や壁紙をメインにしていたので、実は大きいものの方が得意なんです。

ーーブランドが始まってまだ1年ほどですが、これからそういった相談がどんどん増えそうですね。

安田さん:この1年の間にも問い合わせが徐々に増えていて、社会全体としてサステナブルなものづくりへの関心が高まっているのをひしひしと感じています。

「メッセージカード」(594円)は全8種。それぞれ風合いがまったく違うのが面白い。

ーー現在、商品はどういった方々に愛用されていますか?

五十嵐さん:お客さまの層はとても幅広いです。学校でSDGsについて学ぶ機会があるからか、商品を買ってくれたり詳しく話を聞きたいと言ってくれる学生も多いですね。

ーー子どもたちにとっても、廃棄食材がこうやって紙になっているというのは視覚的にわかりやすいし、サステナブルな循環について想像しやすいだろうなと思います。

安田さん:そうですね。〈Food Paper〉は和紙が元になっていますが、和紙ってそもそも高価なものなんです。普通の紙と比べると高いと感じてしまう人が多いと思うのですが、そういったイメージを払拭して、「こういう背景があるからこの価格なんだな」と知ってもらえるためのきっかけにもなればいいなと思っています。

ーー今後、挑戦したいことや計画していることは何かありますか?

五十嵐さん:今は5種類の商品ラインナップがあるのですが、それをもっと増やしていきたいですね。

安田さん:あとは、使い捨てで終わらないような仕組みを考えたいなと考えています。例えば〈Food Paper〉を使ったパッケージ作りとか。包装に工夫している企業も多いと思うので、そういった部分にこの紙を使ってもらうことでより一層「捨てずに再利用しよう」と思ってもらえるんじゃないかなと。作って終わり、売って終わりではなく、その先のことまで考えていけたらなと思います。

〈Food Paper〉