ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足! 毎週さまざまなコンテンツをレポートします。第58回は、編集者として活躍する藤田華子さんが、ブランディングディレクターの行方ひさこさんに話を伺いました。

ブランディングディレクター。あまり聞き慣れない言葉かもしれません。
行方さんの言葉では、”ニュートラルなマインドで、ブランドの本質を明確にし、伝えるべきメッセージを創りターゲットに届けるコミュニケーションの仕組みをつくる”プロのこと。

時にはブランドの中の人すら気づいていない「価値」を見つけ、大切に編集し、届けていくーーその軸にあるのは、「良い行いが注目を浴びてほしい」という行方さんの想い。ナチュラルにサステナブルを追求する原体験からスタートしたキャリアと、目下進行中の、オリジナル調味料の開発について伺いました。

0.2歩を、5回に分けて1歩に

〈伊勢丹 新宿店〉で不定期に開催している企画展「時」では企画からキュレーションまで。次の開催は9月末の予定。
丹波篠山のガイドブックに寄稿させていただくため、陶芸家・柴田雅章さんの取材へ。
老舗器メーカーでのイベントの企画とディレクション。
サステナブルに特化したテイクアウト用パッケー「TAKEPACK」。 ブランディングサポートから生まれた「nuco」は、売上の一部が保護猫犬に寄付される。
サステナブルに特化したテイクアウト用パッケー「TAKEPACK」。 ブランディングサポートから生まれた「nuco」は、売上の一部が保護猫犬に寄付される。

ーー行方さんは、いつからブランディングというものにご興味を持たれたのですか?

「私が子どもの頃は“サステナブル”という言葉こそありませんでしたが、合成洗剤を使わず、着色料が入った食べ物は控える、そんな考えを持った母のもとで育ちました。マイバッグを持参してスーパーに行くのも、古い服をバザーに出すのも当たり前。そういった活動を素晴らしいと思ってはいたんですけど、子どもながらに、だんだんデザインの面に目がいくようになったんです。『良いことしてるんだったら、もっとたくさんの人も参加したくなるくらいかっこいいアウトプットにしない?』って」。

ーー小学生のときにすでにその視点をお持ちだったとは!

「それが、“ブランディング”という、私のお手伝いの仕方に繋がっているんだと思います。小さいころに感じた『世の中の良い行いが、きちんと注目を浴びてほしいな』という気持ちです」。

ーーなるほど、原体験がいまに繋がっているんですね。とはいえ、現在に至るまでのご経歴は紆余曲折あったようで…。

「そうなんです(笑)。もともと、学生時代にお付き合いしていた彼と卒業と同時に結婚したのですが、彼に『働いて欲しくない』と言われていたので、就職活動もしたことがなくて。あるタイミングで夫とその友人とのアパレルブランドの立ち上げに参加する運びになりました。私、銀行のATMを触ったこともなければ、ビジネスメールを打ったこともないくらい世間知らずで…。経験がない分、とにかく、見よう見まねでがむしゃらに取り組みました。友人との食事は10年間で片手で数えられるくらいしかないかもしれません」。

ーーハードな働き方ですね。そこでビジネスのベースを、体当たりで身に付けていかれたんですか?

「はい。忙しくはありましたが、どうしたらもっと良くなるかを考えて、ただただ楽しんでやる、その積み重ねだったように思います。そうしているうちに、だんだんと仕事の幅が広がっていきました。そして30歳を迎える年に独立に向けて勉強しようと思い、いくつかのビジネススクールに通い始め、そこでSWOT分析などのフレームワークなどビジネスの基礎を学びました」。

ーーグルテンフリー・ヴィーガン対応の身体にも環境にも優しいプラントベースのアイスクリーム「et TERRAM(エ・テラム)」のプロデュースもされていますね。

「サステナブルに特化したECサイトをお手伝いするお話をいただき、オリジナル商品を作る提案をしました。ヴィーガンの文脈で何かを作るんだったらと、米ちゃん(サステナブルグリルをコンセプトとしたレストラン『The Burn』料理長・米澤文雄シェフ)にお願いしました。私も20代のときヴィーガンで、ここ数年は米ちゃんがヴィーガンにも力を入れているので」。

ーー行方さんも、もともとはヴィーガンだったんですね。

「幼稚園生の頃から、好物は春菊の胡麻和えや、うどの酢味噌和えとかが好きで(笑)。中学時代にはオーガニックに興味を持って、自分でお弁当を作っていました。あと20代中盤に離婚を経験して、それからスピリチュアルというか、自然と自分の関係や、広くいうと環境問題や地球温暖化にも興味を持つようになったんですよね」。

ーーそういう経緯があったんですね。「et TERRAM」は、米澤シェフが「味に妥協せず作りました」とおっしゃっていたとおりすごく美味しくて。あと、食べた後にヴィーガンについて考えるきっかけにもなりました。美味しさと、メッセージを届けてくれるアイスだなと。

「うれしいです。美容や健康面でココナッツミルクと、カシューナッツをベースに、すべて植物由来。素材の味と香りを活かしています。グルテンフリー、乳製品不使用、白砂糖不使用なので、アレルギーの方にも、ヴィーガンの方にも、年齢も問わずにお召し上がりいただけます」。

ーー“プラントベース(植物由来の食べ物を中心とした食事)”は最近、美容や健康面だけでなく、地球環境にやさしい食べ物としても注目されています。

「そうですね。畜産動物の飼育には、メタンガスや水資源、エネルギー消費問題もあります。いっぽう植物は、そういった環境への害が少ないと言われています。これまで豆乳を使ったヴィーガンアイスはあったのですが、大豆アレルギーの人は食べられなくて。『豆乳じゃないから、食べられる!』というお声をいただきましたね」。

ーーうれしいお声ですね!ちょっと聞きにくいのですが、身体や環境に良いものは、原材料コストがかかるイメージがあるのですが…?

「そうですね。どうしても、流通しているアイスと比べると割高にはなります。なので、選んでいただくためにはおいしさやデザイン、そういった要素で妥協はしたくないなと思ってこだわり抜きました。あっさりしているので、お食事後のお口直しにもぴったりなんですよ」。

食品の商品開発のため、原料となる野菜の畑へ。

ーー行方さんの次の一手は、オリジナルの調味料づくりなんだとか。

「豆板醤を作っています。兵庫県・丹波篠山市のイベントで『何かやってみよう』というお話が出たんです。丹波といえば黒豆。それで、自作したこともある豆板醬がいいのではと思いました。意外とシンプルな作りなんですよ。麹と味噌を基本に、ちょっと白味噌を入れてアレンジしたり。日常的に、お肉やお魚にかけても美味しくて、全ての食材を把握して、無添加で作ることで、食生活を豊かにしてくれる可能性を感じています」。

ーーオリジナルアイテムの開発、とっても楽しそうです…!

「実は以前から、無添加の調味料はほとんどないから、調味料を作りたい気持ちはあったんです。大阪のレストランの方と一緒に作っているんですけど、酵母は生きているので、発酵の具合で味はどんどん変わりますしとても面白いです。丹波篠山で豆を収穫して、車で大阪まで運んで、どの配合にするかを相談して進めて…。夏ごろには販売できると思うので、そしたらECや、想いで共鳴できるような店舗さんでも販売できればと考えています」。

0.2歩を、5回に分けて1歩に

ーーお仕事をするうえでのマイルールを教えてください。

「感情を、あまり出さないようにしていますね。常に安定していられるようにと心がけています。もともと10年間くらい男性ばかりの職場で働いていて、女性である私が感情的に何かを話しても、伝わらないことが多いなと実感として学んだんです。逆に、感情表現が豊かな方とご一緒するときは、ぶつからないように引くことも。バランスを大事にしています」。

ーーご本も読まれるとか?

「独立するときに広い世界を知りたくて、7〜8年は年間300冊くらい読んでいました。ラッキーなことに『この本いいよ』って勧めてくれる人がいたんです。でもビジネス本や自己啓発本ばかりだと、美しい言葉が出てきにくくなってしまうから、感受性を磨く本を読んだ方がいいんじゃないかと思うようになって。いまは幅広く読んでいますね。今日は手塚治虫さんの本です」。

ーーパワーの源を教えてください。

「『世の中のためになるかな』というのが、お仕事をご一緒するときに考えること。なので、そもそもスタートがパワーの源かもしれません。そして私、仕事とプライベートが分かれてないので、調味料を作るのもプライベートの延長ですし、『ぴったりだな』『ご一緒したいな』と思ったら、仲良くしている友人に声をかけることもあります。それは楽しみですし、パワーの源かもしれません」。

ーー軽やかなスタンスが素敵です。

「私自身もアパレル業界に身を置いていましたが、まさか洋服屋さんでお皿が売られる時代になるとは思ってなかったです。だからあまり決めつけずに、『こうしたらおもしろいんじゃない?』っていう方向に進めたらいいですよね」。

ーーHanako読者にも、キャリアに迷う方が大勢います。メッセージをお願いします。

「私は、何かに向けて一歩を踏み出したんじゃなく、0.2歩を5回くらい続けて前進しているんだと思います。まず、好きな器屋さんに行って、個展に行って、いいと思って発信したら誰かの目に触れて…今は共感の時代なので、勇気を持って発信するって大事だと思いますね。伊勢丹さんで催事をさせいていただいたときも、バイヤーさんがずっと私のSNSを見てくださっていて、急にお話をいただいたんです。すぐに何か実るようなやりかたではないかもしれませんが、まずは0.2歩を5回くらい。これなら、始められるような気がしませんか」。

行方ひさこさん

行方ひさこ(なめかた・ひさこ)
アパレル業界でのブランド経営、ディレクター、デザイナーの経験をもとに、一貫したストーリーを紡ぐコンセプトワークを推進。作り手の想いを伝え、地域からメーカーまでブランドの向かうべき方向を示す。食と工芸、地域創生などローカルをテーマに活動中。