ゼロウェイスト、デカフェ、サブスクリプション、そしてインド…!?時代を敏感にキャッチするコーヒー界に、今年も新たな動きが。2022年のムーブメントを予感する、気になるワードをピックアップ!今回は、今年2月開店した〈小川珈琲 堺町錦店〉をご紹介します。

未来へ残したい喫茶文化は、原点を見直してリスペクト。

昭和初期に創業した老舗がいまも広く愛され、街のそこかしこには喫茶店の姿。多くの人がお気に入りの店や席を持つ京都は、喫茶文化と共にある街。そんな京都で創業70年を迎える老舗ロースターが手がけたのは、“100年先も続く店”をコンセプトにした新たな喫茶店。〈小川珈琲〉は昭和27(1952)年に創業した、京都を代表するロースターのひとつ。1990年代からいち早くサステナブルを意識し、有機JAS認証や国際フェアトレード認証などを受けたエシカルコーヒーを取り扱ってきた先駆けでもある。

奥に長い京町家の意匠を再構築する形でリノベーション。クリエイティブディレクターは〈alpha〉の南貴之氏、建築デザインは佐々木一也氏が手がけた。
ネルドリップのコーヒーを味わって

常に進化し続ける“本物”を追求し、2020年にはコーヒーの魅力を広く伝える〈OGAWA COFFEE LABORATORY(オガワコーヒーラボラトリー)〉を東京・桜新町に展開した。その一方で大切に守り続けたいと考えているのが、日本に脈々と受け継がれる喫茶文化だという。「コーヒーを通じて持続可能な社会に貢献したいと活動を続け、今年で70周年を迎えます。地元である京都に作りたかったのは、サステナブルな活動をより深くお客様に体験していただくための場」と常務の宇田吉範さん。原点を見つめ直したネオ喫茶店として作り上げたのが〈小川珈琲 堺町錦店〉というわけだ。

ネルドリップのほか、マシンを使ったエスプレッソドリンクも。
九条ねぎとしらすの玉子サンドイッチ1,000円、オーガニックハウスブレンド011ダーク600円。

軸となるのは、厳選し「GRANCA(グランカ)」の名前を冠した8種類のエシカルコーヒー。濃さとまろやかさを兼ね備えたコーヒーは、その魅力を最大限に引き出すネルドリップで提供する。〈小川珈琲〉として初の試みとなるネルドリップは、日本のコーヒー文化を象徴するものとして欠かせなかったという。オリジナルのネルフィルターはオーガニックコットンの糸探しから始め、織り方やケバの長さまで試し、約1年の年月をかけて作り上げたというエピソードからも、老舗の気概が伝わってくる。深みのあるコーヒーは、京都の喫茶店で愛されてきた味わいを受け継ぐもの。新たな挑戦が伝統を作ると感じさせる一杯だ。

食パンは店内に併設された工房で焼き上げられる。パンの購入も可能。

なじみある喫茶メニューもブラッシュアップして登場。ミックスジュースやプリンなどはモダンさを纏まとった姿になり、フードも地産地消を意識したものが揃う。とりわけ注目したいのは食パン。「100年先も食べ飽きない、毎日食べられる食パン」をと、京都を代表するブーランジュリー〈ル・プチメック〉創業者の西にし山やま逸いつ成なり氏に依頼。主張しすぎない食事パンを作り上げた。トーストするのは炭火を熱源とするチャコールオーブン、添えられるのは京都〈佐々木酒造〉の米糀を使った糀バターと、徹底的な追求がちりばめられている。

もうひとつ、密かに喫茶店らしさを感じさせるのがプレートに印刷されたロゴ。時代を経て〈小川珈琲〉を代表するモチーフになると思わせる可愛らしさが心を和ませる。舞台となるのは歴史を重ねてきた京町家。モダンに改装され、喫茶文化の新たなシーンを作る場として、これ以上ない空間となっている。

〈小川珈琲 堺町錦店〉

今年2月開店。坪庭を挟んで2つの空間が広がる。コーヒー豆の量り売りは容器の持参を推奨するなど環境への配慮も。
京都府京都市中京区堺町通錦小路上ル菊屋町519-1
075-748-1699
7:00〜20:00(19:30LO)無休
44席

(Hanako1208号掲載/photo : MEGUMI ( 〈ONIBUS〉〈æ〉〈Horiguchi Coffee〉), Wataru Kitao ( 〈BLUE TOKAI〉goods), Miyu Yasuda ( 〈Overview Coffee〉〈Torahebi Coffee〉goods) text : Yoko Fujimori, Emi Suzuki ( 〈æ〉〈Overview Coffee〉), Mako Yamato ( 〈Ogawa Coffee〉) edit : Yoko Fujimori)