この数年の社会の変化を経て、都会に遠すぎない、“郊外”での生活を選ぶ人が増えている。そこで実現したライフスタイル、部屋づくりをレポート。今回は、〈按田餃子〉店主・按田優子さんのお部屋をご紹介します。

よく訪れる長浜海岸。海を見ながらコーヒーを飲んでぼーっとすることが多い。
家から歩いて10分ほどの丘にある畑。自分たちが食べるだけのブロッコリーや大根を育てている。

料理家であり、人気店〈按田餃子〉の経営者でもある按田優子さん。昨年、神奈川県三浦市にアパートと畑を借り、都内の自宅との二拠点生活をパートナーとスタートさせた。

アパートに向かう坂道は緑のトンネルのよう。
砂浜で拾った貝殻。

住宅街を抜けた坂の上。気持ちよく視界が開けた南国風のアパートが、按田さんのセカンドハウス。1週間のうち、半分はここで過ごす。「都内に通える距離にもうひとつ家があったらいいなと思って、場所を決めずになんとなく探していたんです。ネットでこの部屋を見つけて『これは!』と思って翌日見に行き、即決。そこからとんとん拍子でした」部屋は70㎡ほどの2LDK。玄関を入ると20畳以上のリビング&キッチンが広がり、3面ある窓から光と風が循環する。晴れた日は富士山を拝めるおまけ付きで、家賃がなんと6万円!

『壁の一部をペールピンクに塗る。』真っ白で味気なかった壁の一部をピンクに塗装し、「ピンクに合う」モノトーンのストライプ生地でカーテンを手作り。余り布はパンツ(P.42〜43で着用)にした。飾ったイラストはデザイナーであるパートナーの作品。
収納しづらいキッチンツールは、自作のボードに掛ける。ホームセンターで買った板にフック代わりの釘を打ち、台所道具の収納ボードに。海岸で拾った流木にはキッチンペーパーやゴム手袋を。「しまいにくい道具も使いやすい。木材は別の用途で使うこともできて合理的です」
『浜で拾った石も、立派なインテリアに。』海岸に行ったら、色や形が好みの石と貝を探すのがお決まり。気に入った小物と一緒に食器棚の上に並べるとオブジェのよう。「新しいものが加わったり、たまにちょっと配置を変えたりして楽しんでいます」

築50年以上の古い物件ではあるが、自由にDIYできるところも決め手になったという。「あるものを変身させたり、拾いものを生かすのが好き」と話す按田さん。壁を一部だけ塗ったり、ふたつの棚の上に天板を置いてキッチンの作業台を作ったり。近所の海で拾った石を飾り、得意の手芸でカーテンやテーブルクロスもこしらえる。インテリアの随所に創意と自作が光り、さらには引っ越しを機に揃えた家具や家電、道具類は、地元のリサイクルショップ、その名も〈爆安屋〉で「笑っちゃうほど安く」手に入れたものが大半とか。

『椅子のストックを持ち、気分を変える。』窓辺に椅子をスタッキング。ダイニングチェアは固定せず、毎日好きなものを選ぶ。「100円くらいだったのでとりあえず買い、気分で使い分けたらすごく快適でした。友だちが来た時にも活躍します」(按田さん、以下同)
和洋がミックスされた、開放的で飾らない空間。食器をしまう「初IKEA」のキャビネットや真ん中の作業台と柱が、ゆるく仕切り役に。かさばりがちな飯台やざるは壁に飾って収納。
『欲しい家具はDIYで。』引っ越した当初は座卓で食事をしていたが、部屋の雰囲気に合わせて脚を長いものに付け替えてテーブルにした。テーブルクロスは、白い生地に〈ユザワヤ〉で買ったレースを付けたもの。アンティーク風の仕上がりに。

ヨーロピアン調の小さな机やレトロな椅子の数々、大きな籐のかごなど、とても安価とは思えないユニークで佇まいのいいものたちが、風通しのいい空間でいきいきしているように見える。「今はネットで何でも買えるけど、それじゃつまらないなと。拾いものもそうですが、偶然の出合いを大事にしているので、リサイクルショップの『何が買えるかわからない面白さ』がたまらないんです」按田さんは決して「節約重視」なのではない。作業台の天板は家具職人の特注品だし、譲り受けた輪島塗の漆器はしっかりお金をかけて塗り直し、100円で買った器と同じようにヘビーユースしている。

『家具も食器も、地元の激安ショップでセレクト。』生活に必要なさまざまなものを、リサイクルショップ〈爆安屋〉で調達する。「商品の入れ替えが早いのでほぼ毎日来ています。掘り出し物を見つけるのが快感(笑)」。

「家や暮らしは評価してもらうものじゃない。自分が良ければいい」というのが按田さんの考え。だから、映えや世間の物差しにとらわれない。好みが近いというパートナーと、気に入ったインテリアを心おきなく楽しみ、心地よい空間づくりを進めている。二拠点生活を始めて約1年。仕事をある程度手放し、時間と心に余裕が生まれたのが一番の収穫という。タイムスケジュールで慌ただしく動く東京と比べ、生活スタイルも思考回路もまったく違うと、按田さん。「晴れたら浜辺を散歩したり畑で作業したり、雨や強風の日はミシンで何か縫ったり読書したり。自然に合わせながら、やりたいことしかしていないから楽しくて(笑)。ここで見つけたものを仕事につなげたら、また面白い展開になりそうです」

〈爆安屋 三浦店〉
神奈川県三浦市初声町下宮田2776-1
0120-919-608
10:00〜19:00 無休

【DATA & PROFILE】

【PROFILE】
あんだ・ゆうこ/東京・代々木上原と二子玉川の〈按田餃子〉を共同経営し、雑誌などでレシピ提案やエッセイも執筆する。現在、三浦の食材を使った新メニューを考案中。

【DATA】
人数:2人暮らし
所在地:神奈川県三浦市 駅からバスで8分
築年数:54年
居住歴:1年

(Hanako1209号掲載/photo : Kenya Abe text : Asami Kumasaka)