生涯、家賃を払い続けるか。それとも思い切って家を購入するか。永遠の悩みでもあるテーマ、住まいとお金のこと。コロナ禍をきっかけに、家の存在意義を見つめ直す人が増えています。「買う」に踏み切った人、「借りる」選択にとどまった人。ます。今回は、都内と地方、それぞれの買う派でコストを比較。共通するのは「30代女性、一人暮らし」。年収や職種によっても住まいの選択は変わるけれど、一番大きなポイントは「どんなライフスタイルを送りたいか」。地方と都内、それぞれの住まいに関するお金事情を取材しました。

1.買う・都内/@東京都・世田谷

Nさんが運命の家に出会ったのは、中古物件紹介サービス「cowcamo」。「予算に見合う3000万円台の価格帯の物件が多く、いい点だけでなく懸念事項もオープンにしている点が信頼できると思ったんです」。

・Name:Nさん
・Age:30代
・Job:医療関係
・Income:年収約550万円

・購入時の物件価格:3000万円台(諸経費込み)
・間取り・広さ:1LDK・約42㎡
・築年数:45年(購入時)
・購入時の頭金:0円
・ローン支払額:12万円/月
・借入金融機関:大手メガバンク
・ローン返済年数:35年(変動金利)

「30歳過ぎまで貯金はほぼゼロ(苦笑)。なので、頭金を用意することは最初から考えていなかった」というNさん。当初はネット銀行や地方銀行でのローン借入れを検討していたが、広さや築年数が条件をクリア出来ず、結果的に大手メガバンクに。

寝に帰るだけの部屋から人が集まる我が家に。

憧れていた対面キッチン。
窓には目の前の公園の緑が広がる。最上階だけに開放感も抜群。
棚やハンギンググリーンを打ち付けられるのも購入物件ならでは。

小さな商店街が両脇に続く、どこか懐かしさ漂う東急世田谷線沿いのとある街。駅から歩いて5分もすれば緑豊かな公園にぶつかる人気エリアに、Nさんの家はある。購入した2年前は、まさにコロナ禍中。それでも「家を買う」と決断したのは、生活から“潤い”が消えたことがきっかけだった。「推しのライブもイベントも全て中止。帰省もできず、狭い部屋から出ない生活。気が滅入る毎日でふと頭をよぎったのが、母に前から勧められていた“家を買う”ことでした」

賃貸に住む=誰かのローンを肩代わりして払うこと。そう両親に言われていたことを思い出し、早速情報収集を開始。動き出してから約半年後、入って3秒で“ここだ!”と直感したという今の部屋に出会った。「最上階、角部屋、窓越しに見える公園の緑、遠くには東京タワーまで!築年数は経っているけれど、この眺望と日当たりはプライスレス。購入前に住んでいた賃貸に比べて広さは約2倍、月の支払いはプラス1・5万円。心配していた固定資産税も更新料とほぼ変わらなかったんです。狭い部屋に住んでいた頃は、休みの日は家にいたくないから出かけるので、結果的にお金を使っていました。今はむしろ、休日は一日中家にいたいくらい(笑)。友人が遊びに来る回数も増えて、生活の質は格段に上がったと言い切れます」

MY FAVORITE

55インチのテレビで推しのライブを見るのが至福の時間。
週末は“推し活”仲間が集合し、ライブDVDを鑑賞するのがNさんの楽しみ。「我が家に遊びに来た友人で、購入に踏み切った人も何人か。特にお金の話は聞くと勇気づけられるようです(笑)

2.5人掛けソファも楽々置ける13.2畳のリビングダイニング。
最大6 人までOK のダイニングテーブルとソファを置いても余裕のあるリビングダイニング。「この先ライフスタイルが変わっても、二人までなら十分ここで暮らせると思ったのも購入の決め手でした」

2.買う・地方/@栃木県・那須

リビング中央の凹みはかつての囲炉裏の名残り。テーブルセットやソファは那須のアンティークショップでいずれも約2万円で購入した掘り出し物。

・Name:Aさん
・Age:36歳
・Job:フリーランス
・ncome:年収約300万円

・購入時の物件価格:330万円(諸経費込み)
・間取り・広さ:庭付き一戸建て
・築年数:35年(購入時)
・購入時の頭金:0円
・ローン支払額:4万円/月
・借入金融機関:両親
・ローン返済年数:7年(無利子)

東京生まれ東京育ちのAさん。移住前は恵比寿で家賃15万円の賃貸マンションに住み、外食は週に5回。イベント関連の会社に勤め、ボーナスは年3回出ていたそう。現在はヨガインストラクターから地域の魅力を発信する手伝いまで、多分野で活躍中。

庭付き一戸建てに出会えたのは地域とのご縁から。

2階の和室をベッドルームに。
那須の冬に欠かせないペレットストーブ。「暖まるのに時間がかかるのが戸建ての難点。在宅中はなるべく一部屋で過ごすなど工夫しています」
小さなサンルームでの読書時間が癒し

誰もが羨む都会生活を謳歌していたAさんが、生き方に疑問を覚えたのは30歳の時。「再開発によって日々変わっていく街の姿を前に、自分はこの先も競争社会の中で生きていくのかな…と」一度抱えた疑問は不安に変わり、いつからか“東京から出る”という手段について考え始めた。「でも、いきなり移住は絶対失敗すると思ったんです。特にお金に対する価値観は、ガラリと変えないと難しいだろうと」

そこで、お金のやり取りなしで食事と宿泊場所を労働力や知識と交換する取り組み「WWOOF(ウーフ)」に参加。移住前1年をかけ、農家の手伝いをしながらお金に対する考え方を見つめ直すステップを踏み、仕事もフリーランスへとシフト。「今の肩書きは自称“那須観光大使”で、私が出来ることは極力お引き受けします。でも、やりたい仕事しかしないので、ノーストレスですね」

家とは、地域に溶け込む中で人づてに紹介されて出会ったそう。移住に伴う住宅購入の助成金として、自治体からは30 万円が支給された。「まさか戸建てを紹介されるとは思いませんでしたけど、これもご縁だな、って。よく仕事が不安定な今の状況で家を買ったことに驚かれますが、お金や将来の心配は、むしろ東京にいた時の方が大きかったです」

MY FAVORITE

野菜は道の駅で週に1度1,000円分をまとめ買い。
新鮮でおいしい野菜が破格値で手に入るのは地方ならでは。「なんてことのないシンプルな料理すら抜群です(笑)。ただ、別荘族も多いエリアなので、外食費は東京とそう変わらないかもしれませんが」

思わぬ出費は車の購入。でも地方では移動に欠かせません。
約30万円で購入した中古の軽自動車。「公共交通手段で動ける範囲には限界があるんです。駅前の賃貸で生活することも考えましたが、移住した以上は東京とは違うライフスタイルを送りたかったので」

(Hanako1209号掲載/photo : Kenya Abe, Wataru Kitao, illustration : naohiga text : Yoshie Chokki edit : Yoshie Chokki )