今年デビュー10周年を迎えた俳優の広瀬すずさんは、もうすぐ24歳。心の中で次々と生まれている変化に刺激され、それらが内側で響き合うのを面白がっている真っ最中。ここ最近、心に留まったキーワードから、彼女の現在地をひもときます。

キーワード1:休み

デビューした14歳の頃は「朝から晩まで働くことがずっと続いていくのかな」──。そんなふうに思っていました。もちろん休みはあったけれど、長くお休みをもらって自分に向き合うとか、いたわるみたいな時間の過ごし方をしたことがなくて、ただひたすら前へと進む日々。そんな自分が好きだし、楽しくもあって、疑問を抱くこともなかったんです。

長期間の休みがなくても平気だった私が、休みの素晴らしさを実感できるようになったのはコロナ禍がきっかけです。当たり前のように続いていくと思っていた毎日が一変して、一回目の緊急事態宣言のときは1カ月くらいの間、ちょっとしたお仕事も一切できない状態に。でも、実際に休んでみると、「あ、お休みっていいものだなぁ」と思えたんです。

ちょっと忙しい毎日が続くと、今は次の休みはいつかな? ってわくわくしている自分がいます。最近のオフは、自分の運転でジムに行って、昨日、食べ過ぎちゃったな〜」と思ったら、カスタムサラダのお店に立ち寄る。アイスコーヒーを片手に車に乗り込んだりすると、「私、東京の人やん(笑)」って。そんなふうに思える自分がすごくうれしかった。〝生き急がず、気ままに生きる〟。今の私にしっくりきます。

キーワード2:食事

ありのまま〟っていう言葉で自分をごまかしながら、今まで大好きなジャンクフードをたくさん食べてきました。我慢せず、欲求のままに=〝ありのまま〟と解釈してしまうのはきれいごとで(笑)、当然だけど食べた分だけしっかり太ります。以前は、我慢が面倒くさくて、食べたらその分運動すれば大丈夫と帳尻を合わせてきたんですが、今はカラダのことを考えて食事を摂ること自体が楽しくなってきました。

今まで生きてきて「これが、私の人生だ!」なんて感じたことはなかったんです。でも、自分自身が充実している手応えを得られると、ほんのちょっとの充実感があるだけで、何をしていてもすごく楽しめる。ひとつ興味や好奇心が生まれると、それまで気に留めていなかった物事が急に鮮明に映るようになりました。それがまた一歩先へと派生していって、また新しいことに出会える。そのいい循環を絶やさずにいられたらいいです。今の私のテーマでもあるし、意識していることでもあります。

キーワード3:舞台

今、舞台『Q』が7月からの再演に向けて動き出したところです。2019年の初演が私の舞台デビューになるんですが、実はそれまでは自分の中で舞台は縁がない世界だと思っていました。私の周りの人は、舞を経験すると“ハマる”か“もう二度とやらない”か極端な二択に分かれていて、未経験の私にしたら舞台はとても異色な場所でした。舞台は最初が肝心という中で、縁があって初舞台で野田秀樹さんとご一緒できたのはとても幸運だったと思います。元々、野田さんの表現がとても好きだったこともあって、最初の稽古の時点で「楽しい!」と思えました。自分に合っているかはわからないけど、でも楽しい。それってすごく大事なフィーリングですよね。

舞台の魅力は、キャストとお客さんとで時間や空間を共有しながら、どんどん熱を帯びていくのを肌で感じ、現在進行形で生まれてくる感情を表現できるところ。映像でのお芝居とはまったく違っている点でもあって、映像の現場では、私はどこか自分の存在を客観的に捉えてしまうので、ときに熱が冷めるというか、演じている自分自身に対してひんやりとしてしまうことがあるんですね。ところが舞台は、高い位置でずっと集中を保っていて、雑念がない。本番一発だし〝生モノ〟という独特の緊張感がある中、頭を使わずに、勝手にカラダが動いて、感情があふれ出てくるんです。私の中では理想的なお芝居のあり方で、演じる喜び、その原風景に立ち返ることができる。こんなに開放的になれて、気持ちよく冒険できる場所を経験できて、「あぁ、うれしいな」って。映像では、「もうちょっとこうすればよかったかな?」と良くも悪くもセンシティブに思考が働くけれど、舞台ではある意味無責任でいられるのかもしれないです。目の前にお客さんがいるなら、もうがむしゃらにやるしかない。

これから毎公演を必死に生き抜く日々が始まります。縁がないと思っていた世界だけど、みんなが心血を注ぐ意味がわかる瞬間に何度も立ち会えて、「人生、何事もやってみるものだな」と舞台が教えてくれました。

広瀬すず

ひろせ・すず/1998年6月19日生まれ。主な作品に、映画『海街diary』『ちはやふる』シリーズ、『怒り』『いのちの停車場』、連続テレビ小説『なつぞら』、ドラマ『anone』『ネメシス』など多数。7月29日より舞台『Q』:A Night At The Kabukiが東京を皮切りに、大阪・ロンドン・台北と世界4都市を巡るワールド・ツアーをスタート。

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着物 参考商品(JOTARO SAITO 03-6263-9909)photo:Arata Suzuki(go relax E more) kimono dressing:Eriko Otake hair & make:Masayoshi Okudaira text:Hazuki Nagamine