世界的人気の日本酒「黒龍」で知られる石田屋二左衛門株式会社。海外のワイナリーでワインと食事を楽しむような感覚で日本酒と親しむスペースを提案したいとのの強い思いから、全敷地面積3万坪という巨大な酒蔵観光施設を誕生させました。レストランやパティスリー、酒蔵、酒ショップなど多彩な顔を持つ〈ESHIKOTO〉。日本酒ファンにはたまらない酒蔵施設の誕生です。

臥龍棟(右)と酒楽棟(左)

永平寺で有名な福井県吉田郡永平寺町。自然に囲まれた美しい里山の一角にオープンした〈ESHIKOTO(えしこと)〉は、レストランやショップ、セラーなどを兼ね備えた、日本酒発信の総合施設です。“えし”とは古い言葉で“良い”という意味。“えしこと”はつまり“良いこと”を意味しています。また、“とこしえ(永久)”を逆に読んだものでもある“えしこと”。〈ESHIKOTO〉という名前には、福井の良いことをずっと伝えていきたいという思いが込められています、

黒龍酒造株式会社代表取締役水野直人さん(左)と醸造部部長で杜氏の畑山浩さん。

黒龍酒造を有する石田屋二左衛門株式会社代表取締役の水野直人氏。ブルゴーニュなどのワイナリーを訪れた際、交通が不便でブドウ畑しかない田舎でも、ワイナリーツアーで世界中から人が集まり、ワインや食、風土などを楽しむ姿に感銘を受けたと言います。素晴らしい自然と食材がある地元福井でも同じことができるはずと考え、福井の生産者や職人、料理人などを巻き込みながら、10年の構想を経て〈ESHIKOTO〉をオープンさせました。

臥龍棟内部の様子。

現在完成している施設は、臥龍棟と酒楽棟のふたつ。イベントやファーマーズマケットなどフレキシブルに使えるスペースの臥龍棟は、日本の西洋建築の礎を築いたジョサイア・コンドルの子孫であるサイモン・コンドルの作です。教会のようなアーチを描く天井が印象的な臥龍棟は、地元産の希少な“笏谷石(しゃくだにいし)や、名産の焼き杉の壁板、デザイナー結城美栄子氏による龍や火の精・水の精などのアート作品が効果的に使われています。樹齢200年の地元の杉を丸ごと1本使ったカウンターはまさに圧巻。奥には黒龍酒造が誇るスパークリング日本酒〈ESHIKOTO AWA〉のセラーもあります。

スパークリング日本酒〈ESHIKOTO AWA〉のセラー

臥龍房と名付けられた、〈ESHIKOTO AWA〉のセラー。地元の歴史ある古民家の扉や柱、笏谷石などを用いた趣のあるセラーの中では、AWA酒のための特別な技法で醸した日本酒が約9000本、静かに熟成を重ねています。15カ月間瓶内二次発酵させ、オリ抜きをしたら、さらに3カ月。そこからさらに10年以上熟成を重ねるものもあるそうです。シャンパーニュと同じ製法のようでいて、シャンパーニュのように糖分を加えずに熟成させる、米から作られる日本酒だからこそできるスパークリングです。

レストラン〈acoya〉内観

臥龍棟の隣にある酒楽棟には、レストラン〈acoya(あこや)〉、お酒に合うおつまみを提供する〈アペロ〉、パティスリー、酒SHOPがあります。大きなガラス張りのレストランは、明るくて開放的な雰囲気。樹齢250年以上の地元産美山杉の大きな一枚板で作られたカウンターテーブルが目を引きます。壁紙には越前和紙、床に笏谷石を使うなど、随所に福井の“えしこと”が散りばめられた空間です。

レストラン〈acoya〉から九頭竜川を望む景色

〈acoya〉の眼前には、九頭竜川が流れています。九頭竜川の古名は黒龍川。黒龍酒造の名前の由来です。眼下に広がる美しい大自然は、まさに天然のアート。「心癒される景色を眺めながら美味しいお酒と料理を楽しんで欲しくて、ここのロケーションを選びました」と水野社長。四季折々で変化する風景を楽しむために、季節ごとに訪れたい場所です。

野菜と豆のスープ「ガルビュール」

ランチメニューは、椀、主菜、副菜、パンがセットになっていて、永平寺の精進料理にちなんで“膳”で出されます。椀は、フランス南西部の郷土料理である野菜と豆のスープ“ガルビュール”を福井の食材で。へシコのあらと糠で丁寧に出汁を取り、福井の伝統保存食の打ち豆と旬の野菜をたっぷりと入れて煮込んだ、旨みたっぷりの食べるスープです。優しい味わいのスープが体に染み入ります。

黒龍吟醸豚バラ肉の五領玉葱とシェリービネガー煮込み(下)と、黒龍吟醸豚の豚足、豚耳、干し椎茸の春巻き仕立て(上)。
黒龍吟醸豚バラ肉の五領玉葱とシェリービネガー煮込み(下)と、黒龍吟醸豚の豚足、豚耳、干し椎茸の春巻き仕立て(上)。

主菜は、黒龍吟醸豚を2種類の調理方法で仕上げたもの。黒龍吟醸豚は、黒龍の酒粕を餌にして育てた豚です。一品は、バラ肉を永平寺町で作られる五領玉葱と一緒にシェリービネガー煮込みに。もうひとつは、豚足と豚耳のひき肉と干し椎茸を使った春巻き仕立てです。〈acoya〉では、食材に対して感謝を持ち、すべてを余すことなく使い切ることをポリシーにしています。

ベビーリーフとお花のサラダ

インスフィファームのベビーリーフ、ワトム農園のエディブルフラワー、徳太夫のクレソンなど、彩り鮮やかなサラダに使われる食材も、すべて地元産。野村醤油の醤油粕のパウダーと奥井海正堂の白板昆布を甘酢で炊いたソースでいただきます。地産地消がぎゅっと詰まったサラダから、福井の豊かさが伝わってきます。

ESHIKOTO梅酒13とESHIKOTO黄金梅酒ケーキ

〈ESHIKOTO〉特製のESHIKOTO梅酒13を作る時に漬け込んだ福井県産黄金梅と黒龍などの酒粕をふんだんに使ったパウンドケーキは、食後のデザートにぴったり。何も無駄にしないという精神がここにも生きています。淡いレモンの香りがする生地に梅のコンフィチュールを仕込んだケーキは、すっきりとした味わいの梅酒との相性も完璧。

酒楽棟の一角にあるパティスリー。ESHIKOTO黄金梅酒ケーキ1本3300円

レストラン〈acoya〉の横には、こじんまりとしたパティスリーがあり、ESHIKOTO黄金梅酒ケーキやチーズケーキを購入することができます。黒龍酒造のお酒をテーマにした、ここでしか手に入らない大人のための焼き菓子やビスキュイは、お土産にもぴったり。

テイスティングもできるショップには、黒龍酒造のレアな名酒がずらりと並ぶ。

酒楽棟の一角には、黒龍酒造のお酒が購入できるショップ〈石田屋ESHIKOTO店〉があります。黒を基調としたシックな店内には、存在感のある越前箪笥や美山杉のカウンターが。越前箪笥の中には、地元のアーティストが制作した酒器が展示され、購入することもできます。ただお酒を買うだけではなく、福井の自然や文化を楽しめるショップになっています。〈ESHIKOTO〉限定の新ブランド〈永(とこしえ)〉をはじめ、〈石田屋ESHIKOTO店〉でしか購入できない貴重なお酒が並び、テイスティングもできちゃいます。

ESHIKOTO AWA 2019 Extra Dry 7700円

〈ESHIKOTO〉と名付けられたスパークリング日本酒は、きめ細かで豊かな泡、芳醇な香り、シルキーな飲み心地が特徴。透明感があるドライな味わいは、食前酒はもちろん、料理と一緒に楽しむ食中酒にもぴったりです。糖分を加えず微生物の力で瓶内二次発酵をさせる、日本酒醸造者の技術の結晶のような新しいお酒は、ここに来たら必ず飲みたい1杯です。

北陸新幹線が福井に開通する2024年に、創業220年を迎える石田屋仁左衛門株式会社。それを記念し、本拠地である福井の魅力を世界に発信する施設として、約10年の構想を経てスタートした〈ESHIKOTO〉プロジェクト。今回オープンした〈臥龍棟〉〈酒楽棟〉に加え、2024年までには蒸留所、醸造ラボ、オーベルジュなども開業予定。レストラン〈acoya〉は、朝食、昼食、ティータイムを提供する。永平寺からも近いので、永平寺観光の際にはぜひ立ち寄ってみて!

福井県吉田郡永平寺町下浄法寺12-17
0776-97-9396(レストラン)
朝食2800円、ランチ3300円、ティー&デザート2500円
レストラン8:00〜18:00
(朝食8:00〜10:00LO、ランチ12:00〜14:00LO、カフェ15:00〜17:00LO)
ショップ10:00〜17:00
レストラン水、第1・第3火休、ショップ無休 
レストランは予約が望ましい。
44席
禁煙
20歳以上限定での利用。ペット不可。