写真家の高野ユリカさんが写真と文で綴る新連載。街や建築についてのお仕事をフィールドワークとする高野さんが、街を歩いて見つけたスイーツを切り口に‶街と菓子”を語ります。

豆花、仙草ゼリー、雪花冰、胡椒餅、芋圓、パイナップルケーキ...台湾スイーツはお好きですか? 豆や果物の自然由来の滋味深い甘さのものが多い台湾スイーツを、私は自分の気持ちが荒んでいるときとかリセットしたいとき、無性に食べたくなります。吉祥寺、好! 台湾。

〈囍喜東京(キキチャトーキョー)〉「胡椒餅[KICHIJOJIスタイル黒ごま餡&マスカルポーネ]」は480円。豚&ネギの「台北スタイル」は540円、豚&チーズの「東京スタイル」は580円。東京都武蔵野市吉祥寺南町1-9-9 0422-26-6457

まずは駅から井の頭通りを渡って、台湾風の女の子のマスコットが立つ〈囍茶東京〉へ。真っ赤な壁に印象的な台湾フォントで大きく“吉祥寺”の文字が入った看板。そうよここは間違いなく吉祥寺、と教えてくれる。早速「胡椒餅[KICHIJOJIスタイル 黒ごま餡&マスカルポーネ]」を注文。店主さんが鉄瓶でお湯を沸かすのを横目に、保温ケースに入って出番を待つ餅たちをうっとり眺める。朝の餅は聖なるものに見えるよね。胡椒餅を二つに割ると中から出てくる黒ごま餡ととろけるチーズ感あるマスカルポーネ。いい匂い。甘いとしょっぱいのみんな大好きな組み合わせ...固めの薄皮生地は油が薄く効いてて香ばしい、好きだな、台湾の餅。

中央線の高架下を行き来する吉祥寺の人々。ファミリー層やご年配の方も多いので歩く速度はゆっくりだけど密度は高め。

ほぼ馴染みのない私にとっては、吉祥寺は大きく分けると井の頭公園側と商店街側に分かれるようなイメージだけれど、高架下を通ったり、駅構内を通ったりして反対側に出ようとするとき、特有の狭さに吉祥寺っぽさを見る。駅も商店街もぎゅっとした人の賑々しさがあって、独特の距離の近さや、都心とは違うのんびりしたゆるさが好きな人には堪らないんだろう。いつの間にこんなにたくさんの人が集まったのか。台湾の夜市寸前。

〈月和茶(ゆえふうちゃ)〉写真は吉祥豆花850円。各種トッピングもあり。杏仁豆腐などの台湾スイーツほか、ランチの時間帯は「台湾定食」も提供。東京都武蔵野市吉祥寺本町2-14-28 大住ビル2F 0422-77-0554

豆腐好きの私は、豆花がBest of 台湾スイーツですが、吉祥寺で人気の台湾カフェ月和茶の吉祥豆花は、もうシロップで泳げてしまえそうなくらい心地よく、ほんのり優しい甘さです。ひたひたに浸かる豆花に、タピオカ、ピーナッツ、ハトムギ、青豆、緑豆、芋圓、マンゴー風味の葛切り餅? がのっかって、みんなが総動員で癒そうとしてくれている。煮たピーナッツのふにって食感や、知っている他のそれよりずっと柔らかくて甘くない自然な味のタピオカ。豆花のことを考えるとき、意識はここではないずっと遠いところまで行けるような気さえする。この気持ちがせめて明後日の朝くらいまで続いたらいいのにな...と思いパイナップルケーキをお土産に二つ購入。パッケージ可愛いね。

帰りの電車で名東の箱を持ってる人を見かけてにやにや。この箱の行く先ともらった人の楽しそうな顔を想像したくなるね。
〈台湾カステラ専門店 名東(メイトウ)〉台南に本店を構える台湾カステラ店の初の支店。文中のかぼちゃチーズ1,382円、オリジナル1,058円。東京都武蔵野市吉祥寺南町2-1-25 キラリナ京王吉祥寺2F 0422-24-9038

吉祥寺ダイヤ街を通りながら駅に戻ると、構内に最近できたばかりの台湾カステラのお店に大行列が。黄色い看板に台湾っぽいフォントで“名東”のロゴ、さらに行き付けの整体師のような謎キャラクターに興味をそそられる。持ち帰り用の箱も黄色くて、箱を持って歩いている人を見かけると、すぐにここのお店のってわかるのがいい。ガラス越しに見える作業台の上の焼きたてのカステラは、包丁でカットされるたびにふるふると柔らかそうに揺れて(はぁ...幸せの溜息)。かぼちゃ味とプレーン味を購入。シュワァ? ふにゃん? みたいなエアー感。かぼちゃの方はチーズの塩味が効いてるし、オリジナルは自宅で温めて食べたら焼きたての食感が数日間そのままだった、すごい。このまま...もう少しだけ、気持ちは台湾のままでいさせてください。

写真と文 高野ユリカ

こうの・ゆりか/写真家。新潟生まれ。ホンマタカシ氏のアシスタントを経て、2019年に独立。建築、環境、街などの分野を中心に活動。 https://www.yurikakono.com/