滋賀県・信楽町。世界中から陶芸家が集まり、滞在しながら作品制作が行われ、至る所で信楽焼のたぬきが出迎えてくれる焼き物の街です。そんなクリエイティブな一面に加えて、長閑な里山風景に素敵なカフェやショップが点在するのも魅力。その中でも、ひっきりなしにお客様が訪れるパン屋さんを発見しました!

地元の方に代々と愛される菓子屋の新たなYAKUME(役目)

信楽焼のたぬき。信楽に来たら探さなくても出会えます。
世界から陶芸家が集まり作陶する本拠地「陶芸の森」。

信楽で100年以上続く菓子屋〈くめや菓舗〉。〈YAKUME BAKERY〉はその伝統を受け継ぎ「YAKUME」という新たな屋号でパン屋さんとしてスタートされました。昔ながらの木造の家屋が並ぶエリアに現れるお店は、周りの静かな環境とは裏腹に閉店を待たずに完売してしまうこともしばしば。私は事前に何点か予約してお取り置きをお願いしました。

このロゴマークが目印!
甘いものからお惣菜まで。
お昼過ぎに到着すると結構少なくなっていました。休日は予約がおすすめです。

甘いスイーツ系からお惣菜パン、食パンにコッペパン、サンドイッチまで多い時には50種類ものパンが並ぶそう。バリエーションの幅広さに訪れるたびにわくわくします!小さい子も大人も好みのものがちゃんと見つかる懐の深いラインナップだから、お昼ご飯に家族の分をまとめて買いに来るお客様も多そうでした。

「あんバター」
ざくざくとクランブルが崩れる瞬間って幸せ。

コッペパンは口にしっくりなじむちょうど良いサイズ感。白パンのようなふわっと柔らかな口当たりで、最後はにゅっと溶けるテクスチャーです。その真ん中からほこっ?とこちらを伺うように顔を出すのはみんな大好き(だよね?)クランブル。クランブルのざくざくに頬を緩めていると、愛しのバターちゃん、目が合いましたね?(発言怖)。自家製のあんこはさすがお菓子屋さんの逸品。それでもバターは果敢に挑んでいくのです。主役の座は私のものよと言わんばかりに。でもあんこは余裕の微笑み。バターをちゃんと甘やかして対等に引き立て合っています。すっかりポピュラーになった“あんバター”ですが、クランブルが入ることによってお菓子感がプラスされた変化球が楽しい。

「シナモンロール」
きめ細かい質感が断面からも伝わります。

密度の高い生地は繊維ひとつひとつに柔らかな弾力があり立ち上がるよう。よって、一口の充実感がすごいです。特に一口目、ファーストコンタクトの食感がすごい。みっちリと詰まっているのに隙がありどこまでもふっくらしています。シナモンロールでここまで生地に惹かれるとは!香りはしっかりするのに決してシナモンが偉ぶっていないのも新鮮。ただただ自然にそこに存在している感覚です。上の金平糖みたいな砂糖はしゃりっと甘くにじんでアクセントに。こんな優しい気持ちになれるシナモンロール、初めてだよ…。

「リンゴデニッシュ」
大きめのリンゴの内側までキャラメル色に染まっています。

キャラメル色に染まったりんごは、そのルックスをいい意味で裏切っていてみずみずしい。キャラメル風味でほろ苦く香ばしいのに、内側にはフレッシュな水分が蓄えられています。
デニッシュはというと薄いパイが幾重にも重なっているからなのか、軽やかでさらさら食感。デニッシュでありがちなぎとっとした脂感はなくて、むしろバターもさらさらと香り漂ってくる印象です。カスタードのクッションでまろやかさは引き出されつつも、甘さも強くなくてあっさりといただけるデニッシュ。こんなにさらりとしたデニッシュなら朝一からいただきたい!

「シチューパン」
繊細な口溶けのパン生地と滑らかにつながるシチュー。

こちらは打って変わってもっちもちの生地です。シチューの相方は俺だと言わんばかりにシチューとの一体感はばっちり!上に飾られたパン粉が焼かれてかりかりになっているから、揚げパンのようなフランクなジャンクさを醸し出しているのも分かってるよねぇ(何様)。トップのチーズもあいまってグラタンのようです。シチューは柔らかなコクで、これまたしつこくないのが朝にうれしい。シチューの旨みがじんわりと溶け出し口内の隅々まで行き届きます。

「リンゴとバナナ」
デニッシュ生地にリンゴとバナナ、上にはダマンドクリームがON!

デニッシュ生地にキャラメリゼされた大ぶりのりんごとバナナがオン。キャラメリゼって言葉にめっぽう弱いのは、秋のセンチメンタルな気候のせいなの(ただ好きなだけ)?バナナは繊維質を感じられる程フレッシュな生感が残っていて、りんごからはシナモンの香りが漂うような(おそらく…)?デニッシュ生地はこちらもさくっと軽くて、ダマンドクリームの濃厚な味わいとバランスがよき。

芸術の秋。信楽駅から徒歩でもいける距離のお店なので、まずはこちらでパンをゲットしてから、陶芸の森でアートとしての陶芸を楽しみつつその広大な森の中でピクニックがてらパンをいただくのはいいルートかも。信楽散策の始まりにぜひ訪れてみてくださいね!

過去の連載はこちら


花井悠希の「朝パン日誌」一覧