豊かな土壌から生まれる野菜や雄大な自然の中でのびのびと育ったジビエ、そしてワイン、日本酒、地ビール、ウイスキーなど県産食材やお酒の魅力にあふれる山梨県。そんな山梨県でいま、東京などの名店で修業したシェフたちが自身のお店を構えるケースが増えています。今回は山梨県の食材とお酒が持つ魅力を探りに“やまなし美酒美食フルコース”イベントに参加してきました。

山梨を拠点に活躍するシェフ3人による、特別コラボディナー。

ワイナリーの屋外テラスに設けられたこの日だけの特別レストラン。

イベントが開催されたのは、この春山梨県の河口湖エリア初となるワイナリーとして開業した〈7c|seven cedars winery〉の屋外テラスに設けられた野外会場。〈7c|seven cedars winery〉は、日本ワインの造り手100人に選出された山梨県を代表する有名女性醸造家の鷹野ひろ子さんが統括を務めるワイナリーです。

左から豊島雅也シェフ、加藤亮平シェフ、窪田帆貴シェフ。

この日のためだけに特別に集結したのは、山梨県内を拠点に活躍するガストロノミーフレンチレストラン〈TOYOSHIMA〉の豊島雅也シェフと、中華料理〈NIGRAT〉の加藤亮平シェフ、和食の窪田帆貴シェフの3人。豊島シェフは2013年にはボキューズドールにてteam Japanとして貢献し2021年にゴエミヨ山梨を獲得、加藤シェフは六本木ヒルズクラブ中華料理〈スターアニス〉や銀座のミシュラン1ツ星店を経験、窪田シェフは東京の神楽坂ミシュラン2ツ星店で7年修行するなど錚々たる経歴を持ちます。

このイベントに参加するシェフたちのほとんどが移住、Uターンして山梨県に自身のお店を開業(窪田シェフは今後開業予定)していることからも、山梨県の食材やお酒のもつポテンシャルの高さが窺えます。

山梨県オリジナルサーモンや、信玄どりを使った前菜の数々。

ワイナリーのガーデンを使って野外調理を行うシェフたち。
ナラやヒノキの薪火でナマズや鹿肉を火入れするシェフたち。

イベントでは、この日のために特別に設けられた土窯で調理したジビエと、和・洋・中のフルコースを〈7c|seven cedars winery〉のファーストビンテージと合わせて提供されました。

まずは〈7c|seven cedars winery〉から12月18日に発売が予定されている、スパークリングワインで乾杯。〈7c|seven cedars winery〉では山梨県内のブドウ農家13人と契約しており、このワインは契約農家から仕入れたデラウェアをメインにドイツ系のブドウ品種ジーガレーベを2%使用して作られています。

「鹿ジャーキー」。

乾杯酒に合わせて提供されたのが、豊島シェフによる鹿ジャーキー。豊島シェフは狩猟免許を持っており、狩猟解禁のシーズン(原則11月15日〜2月15日)になると毎日のように狩りを行い、仕留めたジビエを自身の手で調理し、お店で提供しています。この鹿ジャーキーは質のいい鹿が仕留められたときにしか作らない一品なんだそう。

鹿のもも肉を使い、醤油や蜂蜜、生姜、ニンニク、日本酒などで味付けした和風なジャーキーになっています。噛んでも噛んでもうま味がにじみ出る、味の余韻が長い一品でした。

「よだれ鶏」。

前菜は中華の加藤シェフによる「よだれ鶏」が登場。山梨県の銘柄鶏・信玄どりの胸肉を低温調理ししっとりと仕上げ、砂糖と紹興酒、醤油を1/3になるまで煮詰めて黒酢などを加えたタレに、アクセントで山梨県にある〈ギークスティル〉が手がけるクラフトジン「アムリタ」を入れています。ソースにジュニパーベリー、シトラス、レモングラスやユズをブレンドしたジンを使うことで、程よい香りのアクセントが加わった「よだれ鶏」になっていました。

「富士の介 薪のオイル」。

豊島シェフによる前菜「富士の介 薪のオイル」は、山梨県オリジナルの魚・富士の介を使った料理です。富士の介は、マス類で最高級とされるキングサーモンと山梨県で生産量ナンバーワンのニジマスを交配しており、キングサーモンのおいしさとニジマスの育てやすさを合わせ持っています。

この富士の介を2日間ほど干してうま味を凝縮し、40℃程度の低温で火入れしたのち、燻製しています。最後に太白ごま油で作った薪のオイルをまわしかけていただきます。芳しい薫香を纏った富士の介はしっとりとしていて、ラッキョウのソースやラディッシュなどが爽やかさを添えてくれます。

こちらに合わせていただいたのは、〈7c|seven cedars winery〉の「甲州バレルファーメンテーション」。少し熟成感のある白ワインが、富士の介の豊かな脂の味わいにキレを持たせてくれます。

河口湖産のナマズや、富士桜ポーク、シェフが仕留めた山梨の鹿肉を堪能。

「銀杏すりながし」と笹一酒造の「旦」。
薪火で焼いた銀杏もサービス。

窪田シェフが担当した椀物では、晩秋らしい「銀杏すりながし」が登場。河口湖で獲れたナマズを薪火で焼いてトッピングしており、湖のジビエともいえる野趣あふれる味わいと薪の香りがアクセントになっています。添えてあるユズは窪田シェフの自宅の庭で採れたものです。

合わせるお酒は、山梨県大月にある笹一酒造の「旦」という純米大吟醸。富士の御前水を仕込み水とし、水のよさが生きた柔らかい飲み口と、米の旨さが光った力強い味わいが印象的です。

「スッポン焼売&富士桜ポークの腸詰」。

続く5品目は〈NIGRAT〉の加藤シェフによる「スッポン焼売&富士桜ポークの腸詰」。天然のメスのスッポンを使った焼売には、黄色いスッポンの卵もトッピングされていました。レンコンのシャキシャキ感、トロっととろけるスッポンの卵がアクセントになった贅沢な焼売です。

腸詰に使用している甲州富士桜ポークは、山梨県畜産試験場が開発したランドレース種の系統豚「フジザクラ」の血を継ぐ雌に、同試験場が開発した系統豚「フジザクラDB」の雄を交配して生産された豚です。カリッカリのケーシングが香ばしく、豚の強いうま味を山椒がアシストしています。お好みでマスタードとXO醤をつけていただきます。

「モルトグレーンウイスキー 大樹海」を使ったハイボール。

これらの料理に合わせるのが、〈富士北麓蒸留所〉の「モルトグレーンウイスキー 大樹海」を使ったハイボール。お米を原料として、清酒酵母を使った珍しいジャパニーズウィスキーで、口当たりのよいクリアなハイボールになっていました。

「富士山麓鹿肉縄文焼き」。
河口湖エリアの土をまとって焼きあがった鹿肉の塊。

メインは豊島シェフが仕留めた鹿肉の縄文焼きです。ジャーキーと同じ日に仕留めた1歳半の雄の鹿肉は、血抜きを丁寧にしてから真空状態にして、0℃で2週間ほど熟成して微粒の電気を流します。この鹿肉のもも肉をさらしで巻いて、モミの木や朴葉の葉を巻き付け、ワイナリーの庭にあった土をまとわせ塩釜焼のようにして40分ほど薪火で焼き上げています。

ソースはペリグーでトリュフの代わりに香茸というきのこを使用。脂肪分の少ない鹿肉にあわせ、にんじんのピューレと地産のクレソンを添えています。筋肉をほぐしていくような熟成を施すことで、ジビエとは思えぬほどやわらかくみずみずしい肉質に感動。香茸のペリグーもトリュフに負けないで芳しい香りです。

鹿肉に合わせるのは、フジッコワイナリーの赤ワイン「プティ・ヴェルド2019」。北杜市明野町のプティ・ヴェルド種を100%使用したワインで果実感にあふれた味わいと、しっかりとしたタンニンが鹿肉のナチュラルな野性味に寄り添います。

「麻婆豆腐」。

〆は、豊島さんの鹿肉を使い中華の加藤シェフが腕を振るった「麻婆豆腐」。なめらかで味が濃い加藤シェフの手作り豆腐と合わせた麻婆豆腐は、ジビエだからこその力強い鹿肉の味わいが活きており、醤の使い方にシェフのセンスが光る一皿でした。薪火を使い、羽釜で炊き上げた青森県の限定地域米であるつがるロマンが進みます。

合わせるお酒は、なんとビール。富士吉田市にある〈BRIGHT BLUE BREWING〉の1周年記念スパイスエールで、ブラウンエールをベースに、みかんの皮、シナモン、クローブ、山椒が入っています。グリューワインのようなニュアンスもあり、寒いこの季節にぴったりで麻婆豆腐のスパイス感との親和性も高いペアリングでした。

〈7c|seven cedars winery〉外観。

命をいただくことの重さ、大地の恵みをいただくことのありがたさを身をもって体感する、そんな山梨での特別ディナー。今回のようなイベントが実現できたのは、自然豊かな山梨とその自然に真摯に向き合うシェフたち、そして真心を込めて作る生産者の方々がいてこそ実現できることだと感じました。

自然と土地が持つ力に魅了され山梨に移住し、食材をシェフ自ら仕入れてしまうという状況、そしてそれをいただけることの贅沢さは都心ではなかなか叶わないものでしょう。ファームトゥテーブルにとどまらない、ネイチャートゥテーブルな食体験が叶う山梨、ぜひ足を運んでみては?

〈TOYOSHIMA〉
山梨県南都留郡富士河口湖町船津3681-2
0555-75-0850
11:30〜13:30LO、18:30〜23:00(20:00LO)
日月休

〈NIGRAT〉
山梨県甲府市武田2-1-14
080-7613-9774
12:00〜14:00(土日のみ)、17:00〜22:00
水木定休、不定休あり
公式サイト

窪田帆貴シェフ
Instagram

〈7c|seven cedars winery〉
山梨県南都留郡富士河口湖町河口513-5
9:00〜16:00(ワイナリー前テラスのみ開放)
公式Instagram