
生まれはヨーロッパだけれど、日本ならではのコーヒー器具となったサイフォン。
火にかけるタイミングや混ぜ方に、その店のおいしさの秘密があります。
珈琲日記[ 四ツ谷 ]



お湯の動きを操り、豆と優しく混ぜ合わせる。横浜式の澄んだ味。
「サイフォンでコーヒーを淹れ始めたのは、35年前に横浜で初めての店を開いたとき。〈珈琲日記〉としては、日本文化の発信をテーマにするのが導入のきっかけでした。サイフォンがこれだけ普及しているのは、日本だけですからね」と話すのは、店主の小林正哉さん。生まれ育った横浜は、サイフォンの街。独特の淹れ方があると聞いて、教えてもらうことに。
スピードが特徴だというサイフォンだが、小林さんの手つきは一つ一つが丁寧だ。まずはフラスコからお湯が激しく上がらないよう、沸騰を抑えてゆっくりと漏斗へお湯を運ぶ。温度が安定してきたところでコーヒーの粉を投入。「最初から入れておくよりも苦味が出にくいんですよ」。ここで味が決まるという1回目の攪拌では、粉全体に一瞬でお湯を染み込ませる。豆から出る炭酸ガスが落ち着き、しっかりと香りが出てきたら2回目の攪拌で本抽出へ。「混ぜすぎるとエグ味が出るため、縦回転と横回転の波を同時に作り、短い時間で混ぜていきます」
構造上、フラスコには吸い上げられなかったお湯が残るものだが、抽出が終わるタイミングでこれを捨てるのが横浜式。「ほかではあまり見ない工程ですね。味のブレがなくなりますし、フラスコ内の圧力が正常になるのでコーヒーが落ちる勢いを緩めることができます」。こうして〈珈琲日記〉名物のクリアな味が出来上がる。

珈琲日記 [ 四ツ谷 ]
住所:東京都新宿区若葉2-7-1 ビデオフォーカスビル1F
TEL:03-5357-7238
営業時間:9:00〜17:00(16:30LO)
定休日:月休、不定休あり
席数:18席

ラフレッサ[新日本橋]


日々のルーティンに組み込みたい優しく寄り添う一杯。
ほっとする接客にほっとするコーヒー。1日に3、4回通うビジネスパーソンも少なくない。創業以来45年使い続けているサイフォン用に、味が強くなりすぎないようにブレンドと焙煎を調整。ブラジルとコロンビアを主体としたコクのある味を提供している。
ラフレッサ [新日本橋]
住所:東京都中央区日本橋本町4-2-8
TEL:03-3241-2613
営業時間:7:00〜20:00(19:00LO)
定休日:土日祝休
席数:32席
全面喫煙可

ヘッケルン[虎ノ門]


会いに行きたいマスターの、鮮やかな手つき。
1971年の創業から一代で続けてきた〈ヘッケルン〉は元祖ジャンボプリンでも有名だが、マスター自身にファンが多い。ブレンドはブラジルが主体。「豆は粗めに挽いて、さっぱりとしつつコクのある味にしてるよ」と教えてくれた。
ヘッケルン [虎ノ門]
住所:東京都港区西新橋1-20-11 安藤ビル1S
TEL:03-3580-5661
営業時間:8:00〜19:00(土〜17:00)
定休日:日祝、第2土休
席数:24席
全面喫煙可(3本まで)

珈琲館 紅鹿舎[有楽町]


パフェにもピザトーストにも、いつものブレンドをお供に。
ピザトースト発祥のこの店では、食事やデザートが大人気。どんなフードにも合うように作られた「べにしかブレンド」など、コーヒーはいつでも同じ味が作れるようサイフォンで。
珈琲館 紅鹿舎 [有楽町]
住所:東京都千代田区有楽町1-6-8 松井ビル1F
TEL:03-3502-0848
営業時間:11:00(土日祝10:00)〜23:00(フード22:15LO、ドリンク・デザート22:30LO)
定休日:無休
席数:58席
分煙(電子タバコのみ)

八百コーヒー店[千石]


体にスッと入ってくる、ライトな味わいのコーヒー。
日本にサイフォンを広めた〈KONO〉の本社近くに店を構えて社長と出会い、軽くてマイルドな味を出せるサイフォン式コーヒーを提供することに。お湯は粉と優しくなじませ、短時間で香りよく仕上げる。豆は時期により〈二三味珈琲〉や〈豆岳珈琲〉〈miepump〉などのものを使用。
八百コーヒー店 [千石]
住所:東京都文京区本駒込2-10-5 1F
TEL:03-3943-6884
営業時間:11:00〜18:00
定休日:月火休
席数:10席

photo : Kenya Abe text : Kahoko Nishimura
No. 1220
喫茶店に恋して。/道枝駿佑 (なにわ男子) 2023年04月27日 発売号
一日一杯のコーヒーを素敵な喫茶店でゆっくりと飲めたら。今号では、喫茶のスピリットを受け継ぐ新店、本や音楽、器選びに空間づくり…店主の哲学が隅々までいきわたる「学び」のある喫茶店などを徹底ガイド。全国の心地いい空間とおいしいコーヒーで、あなたのオアシスになる一軒を見つけてみませんか。コーヒー好きも魅了する、新たな日本のお茶の世界を覗く第二特集も必見です。
もっと読む