岩手県盛岡市在住の作家のくどうれいんさんが、プライベートで友人を案内したい盛岡のお気に入りスポットと、手土産を交互に紹介します。

2.べアレンビール

やっぱりべアレンビールがなくちゃね。ちょっと格好つけてそんなことを言うようになって、わたしはようやく盛岡の人になった気がする。
お酒の飲める人が来るとなれば、盛岡を案内するときにべアレンビールを飲まずに帰らせることはほとんどない。きょうは飲めないというのなら、ぐいっと鞄の中に無理やり入れてでもお土産に持たせる。

ビールが好きな人は各々自分のお気に入りの銘柄があると思うのだけれど、べアレンが好きな人も、それと同じように「わたしはピルスナー」「ぼくはスタウト」的な好みを持っていることが多い。べアレンビールにはいろいろな種類があるので、盛岡に来たらぜひ酒屋さんやスーパーに寄ってみてほしい。最近缶ビールも出たので持ち運びやすいかも。わたしはかぼすラードラーも大好き。

べアレンの愛らしいところは、まずはその濃い茶色の瓶だ。それから、熊のマーク。定番のビールはいくつかあるけれど、わたしはたいていクラシックを飲む。
いろいろ言う前に、まずはすみません、乾杯!

くは〜!おいしい。
ぐびぐび飲めるのにとても奥深くて、「ごほうびビール」を飲んでいるぞ!というしあわせがこみ上げてくる。

地ビール、クラフトビール、と呼ばれるものは急激に増えた。旅先で折角だからとクラフトビールを飲む機会も増えたが、正直なところ、お洒落に提供されるIPAのようなビールはわたしの口にはあまり合わないことが多い(濃すぎてあまり量が飲めないうえ、なぜか悪酔いする)。べアレンビールのクラシックはドルトムンダ―というスタイルで、ヱビスビールと同じものだと聞いてなるほどと思う。気さくにすいすい飲めて、それでいて奥深いのだ。べアレンビールからは堅実な雰囲気をずっと感じている。お洒落なものとしてのクラフトビールというよりも、もっと食卓や宴会の場に親しまれているような印象がある。べアレンビールは2023年の今年で20周年になるとのこと。成人じゃないか。おめでとうございます。

もう一本なにかおすすめはと言われたら、わたしは迷いなくレモンラードラ―をおすすめする。クラシックを飲む、とさっき言ったが、もしそのメニューにレモンラードラ―があればわたしは迷いなくこちらを注文してしまう。

こちらも乾杯!

へーっへっへ。うま。なんだろこれ。毎回飲んでいるはずなのに毎回おいしいな。
レモンのさわやかな酸味と僅かな苦味で、それなのにちゃんとビール。飲みやすいのにぜんぜん甘ったるくないからのどごしもさらっとしていて、暑い日に飲むのなんか最高!あっという間に飲み干してしまう。こちらはアルコールが2.5%なので、お酒があまり強くない人でも比較的飲みやすいと思う。

さらに、わたしがお土産として密かにおすすめしたいのは、べアレンビールの栓抜き!このサイズ感がなんとも言えずかわいい。瓶のべアレンビールを買う人に、新幹線の中で飲んで貰えるようにほいっと買って渡すことがある。

栓抜きは盛岡駅の酒屋さん等で販売されている。小さくて、べアレンのマークが入っている。そしてなんと、飲みさしの瓶の蓋としても利用できるのだ。

最高!(しかし、毎度おいしくて飲み干してしまい蓋としてつかったことはない)

べアレンビールはなによりも「よ市」で飲むのがいちばんおいしいのですが、その話はまた今度。盛岡に来たのなら、ぜひ飲んで、持って帰って!

ベアレンビール

公式Webショップ本店
https://baeren.jp/

くどうれいん

作家。1994年生まれ。著書にエッセイ集『わたしを空腹にしないほうがいい』(BOOKNERD)、『虎のたましい人魚の涙』(講談社)、絵本『あんまりすてきだったから』(ほるぷ出版)など。初の中編小説『氷柱の声』で第165回芥川賞候補に。現在講談社「群像」にてエッセイ「日日是目分量」連載中。