この連載では、韓国に留学中の前田エマさんが、現地でみつけた気になるスポットを取材。テレビやガイドブックではわからない韓国のいまをエッセイに綴り紹介します。第9回目は、”美しい茶博物館”の名の通り、とても清潔で心が落ち着くお茶の店「アルムダウン茶博物館」へ。

世界を通したお茶の世界の、その繋がりにドキドキしている。

外国で、お茶屋さんに行くのが好きだ。
アジア圏だと、特に熱心にお茶屋さんへ出向く。
パフォーマンスさながら見事な手付きでお茶を淹れる店もあれば、おじいさんが店の奥から面倒臭そうに出てくる良い意味で雑な店もある。
小洒落た店もあれば、古びた倉庫のような店もある。

土産物店や韓紙の店が立ち並ぶインサドンのわき道を入っていくと、立派な韓屋(韓国の伝統的な家)が見えてくる。
ここ「아름다운 차 박물관」(アルムダウン チャ パンムルグァン)は日本語に訳すと”美しい茶博物館”。とても清潔で心が落ち着くお茶の店だ。
韓屋の良さを残しながら改装した店内には、自然光が差し込んで気分がいい。
茶葉や茶器を買うだけでなく、喫茶としても利用できる店だ。

韓国茶はもちろん、中国茶、日本茶、紅茶やハーブティーなど、充実したお茶の種類に目移りしてしまう。
お茶を使ったデザートもあるのだが、紅茶を使ったかき氷が、とにかく最高だ。
淡い茶色をした氷の山は、潔いほどシンプル。
その上に、コンデンスミルクや、香ばしいクルミやアーモンドなどのナッツ、小豆のふっくらとした食感がきちんと残る餡子を、自分が好きなタイミングで載せて、自由に楽しむ。
甘すぎず、大きすぎず、ちょうどよく、最後に溶けてしまった氷をごくりと飲むと、ロイヤルミルクティーのようで、そこもまたいいのだ。

韓国茶には、色々な種類がある。茶葉を使うものもあれば、茶葉を使わないものもある。

茶葉を使うものは、収穫する季節によって名前が変わる。かなりすっきりとした印象。
茶葉を使わないお茶も、種類が多く、韓国の人々に愛されている。
眺めているだけでも楽しい、花を使った花茶。
トウモロコシから作られた、香ばしいオクスス茶。
免疫力を高めるなど、身体に良いとされる高麗人参をはじめとする健康茶もある。
赤色が美しい、果実から作られたオミジャ茶もそのひとつだ。
今回いただいのは、菊の花のお茶。

購入できる茶葉は少ない量から用意されてあり、パッケージもおしゃれなのでお土産にもぴったり。
さまざまな作家の茶器は、韓国の伝統を感じながらも、現代でも使いやすいデザイン。
クスッと笑ってしまうようなユニークなものもあれば、職人のわざにハッとするものもある。

オーナーのコレクションである骨董品を展示したギャラリースペースもあり、新旧が入り混じるこの空間は、とても贅沢な場所だ。
茶器にまつわる作家だけでなく、この店とどこかシンパシーを感じるようなペインティングアーティストたちの展示なども行われている。

ここ最近は毎日飲んでいるくらい珈琲も好きだけれど、私は“お茶派”である。
日本にいる時から、あちこちお茶の店へ行き、茶葉を買ったり、淹れ方を教わったり、店それぞれで出してくれる茶器を楽しんだり、意外な飲み方を覚えたりしてきた。
と言っても、知識もなければ、強いこだわりもなく、ただ自分のためにいろいろ飲んでいるだけ。

朝ごはんの時に紅茶を飲み、原稿を書く前に中国茶を淹れ、おやつの時間にはほうじ茶、夕食の後に日本茶、寝る前にはハーブティー。
お茶は、私の生活にとってかかせない存在だ。

私はまだ韓国茶のことが全然わからない。
これから少しずつ、まだ味わったことのないお茶を、気楽に楽しく知っていきたいと思う。
少しずつ広がっていく、世界を通したお茶の世界の、その繋がりにドキドキしている。

アルムダウン茶博物館(아름다운 차 박물관)

ソウル特別市 鐘路区 仁寺洞キル 19-11
서울특별시 종로구 인사동길 19-11
定休日無し 11:30〜20:00

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前田エマ

1992年神奈川県生まれ。東京造形大学を卒業。オーストリア ウィーン芸術アカデミーの留学経験を持ち、在学中から、モデル、エッセイ、写真、ペインティング、ラジオパーソナリティなど幅広く活動。アート、映画、本にまつわるエッセイを雑誌やWEBで寄稿している。2022年、初の小説集『動物になる日』(ミシマ社)を上梓。現在、ソウルの語学堂に留学中。
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Photo:Mio Matsuzawa