シンガポールはリキッド(液状)のような街だ。変化が速くてダイナミック。訪れるたびに「え!?」「こんな国だったっけ?」とイメージや予想を心地よく裏切ってくれる意外性や発見がある。そこで「知ってた? シンガポールはの街」と題し、4回にわたって編集部Sのシンガポールの旅をお届け。2回目は、変化の街と言いつつ、実は古いものも大事にしている、新旧を絶妙にマッチングさせるこの国の人たちの懐の深さについて考えてみた。

マレーシアとシンガポールには“プラナカン”という文化がある。プラナカンとは、15世紀以降、マレー半島に移住してきた中国系移民の末裔で、彼らは現地のマレー系の人々と結婚することで、中国とマレーの文化、ときに西洋のそれも取り入れて独自の文化を築いてきた。シンガポールでもそれらは残り、特に東部のカトン地区には、パステルカラーと西洋のバロック様式などをミックスした“ショップハウス”という独自の建築が残されている。
ということで2日目の朝は写真下、プラナカンの建物の中にあるオールドスタイルのカフェ〈Chin Mee Chin〉からはじめて、歴史の古いエリアや寺院、モスクなど、シンガポールの“Old”を、そして逆に夜は若者が集まるヒップなバーやレストラン、いわば“New”をまわってみた。
特筆すべきはシンガポールの人々の中ではNewとOldの間に境界線はなく、自然と共存していること。このあたりは日本人の感覚とも近いように思うし、そもそもアジアの素養なのかもしれない。

クラシックな朝食といえば、カヤトーストChin Mee Chin(チンミーチン)

シンガポールの朝食の代表的メニュー、「カヤトースト」が味わえるカフェ。“カヤ”は卵とココナッツとパンダンリーフ(独特の甘い香りが特徴)と砂糖で作ったスプレッドのこと。このカヤをトーストに塗って食べる。かなり甘いが、なぜか熱帯の国にいるとこの甘さがちょうど、と感じる。コーヒーはグラマラッカ(マレーシアのマラッカ発祥の椰子の黒糖)を入れて。やっぱり甘いが、この甘さがよい。

カヤトーストと卵、コーヒーのセットで5.4SGD。
2年前の2021年にリニューアルオープン。無理にレトロを狙っていないのに懐かしく落ち着く空間。
持ち帰りでカヤを購入することも可。

Chin Mee Chin

営業時間:8:00〜16:00
定休日:月休
公式サイト

Color is Power!Instagram Walking Tour

歴史の古いエリア、「ブラス・バサーとブギス」と、そこから少し離れた、イスラムやマレー文化の色濃い「カンポン・ギラム」を歩くツアー。こちらはインスタフォトの達人であるガイドさんがその場で撮り方のコツを教えてくれる。街はとにかく多彩で鮮やかな色に包まれている。アーティストが壁に描いたストリートアート(写真右)と淡いパステルのプラナカン建築(写真左)が混在する、まさにNew and Oldなシンガポールを体感。

ツアーはウォータールー・ストリートのスリ クリシュナン寺院からスタート。
これこれ! こういうなんでもない土産物屋、いいですよね。
果物屋。シンガポールではゆずをお祈りに使ったり、人にあげたりするそう。
Fernando Boteroの彫刻、『DRESSED WOMAN』。Parkview Square Forecourtというこのビルの持ち主が世界屈指のアートコレクターだとか。
カンポン・ギラム・エリアのハジ・レーン。勝手ですが私はここを日本のかつての「裏原」ストリートと解釈してます。

Instagram Walking Tour

所要時間:予約制で2時間
定休日:無休
公式サイト

プラナカンのティーブレイクKim Choo Kueh Chang(キム チュー クエ チャン)

お店は販売のみだが、今回はプラナカンの伝統衣装を試着した流れで、2階の部屋で「ブンガ トゥラン」と呼ばれる花のお茶と一緒にお菓子をいただきました。

〈Kim Choo Kueh Chang〉ではプラナカンの伝統菓子(ニョニャ・クエと呼ばれる)が並ぶ。右上のちまき、その下の「オンデオンデ」、左隣のパイナップル・タルトなどクラシックなお菓子やお土産が買える。

ちまきの吊るし方、いいですよね。
プラナカンの伝統的なビーズ刺繍で作られた靴は180SGD〜。
プラナカンの伝統衣装の試着も可能(35SGD)。衣装をレンタルして街を歩く場合は120SGDで、購入も可(クバヤと呼ばれるブラウスは138SGD〜、サロンと呼ばれるスカートは68SGDから)。

Kim Choo Kueh Chang

営業時間:9:00〜21:00
定休日:無休
公式facebook

シンガポールで風になるSingapore Sidecars

初日の夜の自転車ツアーに続いて、「自分の五感で街を体感する」編、今度はなんとサイドカー!  引っ張るバイクは1965年のVespaのレプリカ。が、安心してください、そんなに飛ばしません。ゆったりとしたクルージングです。けれど次々と建物や風景が後ろに流れていくのを見ていると、自分は果てしなく遠い場所にいるのだ、と浮世のあれこれを忘れて、異邦人になりきれるのではないでしょうか。

歴史的な場所を回るなどコースは相談もできる。
プラナカン建築が残るカトン地区から出発。
壁をアーティストに提供する取り組みも。写真はInk and Clog Studioによる『KJC TURTLE CAPE』。

Singapore Sidecars

営業時間:9:00〜23:00 (1時間198SGD〜)
定休日:無休
公式サイト

漢方×Bar=優しい夜 Synthesis

夜は“New”なシンガポールへ。写真の通り、ローカルのお洒落さんたちが集まるBar(といいつつごはんが美味しい)なのだが、創業者の祖母(漢方薬局に勤めていたそう)の知見を生かし、体に優しいカクテルや食べ物のメニューを志向している。店名のSynthesisは“合成”という意味。 

店の外観はBarとは思えないオールドスタイル。が中に入ると
中国系の夜の街を思わせる廊下が。この奥へさらに進むと、上の写真のようなモダンな空間が出現。
インド料理のパニプリをアレンジ。たまねぎ、じゃがいも、サーモンを揚げて。
左はジンとプーアル茶、グラ・マラッカ(椰子の黒糖)にタピオカをミックスしたカクテル。右はウイスキーにグアバ、うめぼしを入れて割ったハイボール。
ハーブを添えたチキンライス。この上にお湯をかける「泡飯」(というらしい)スタイルでいただきました。

Synthesis 

営業時間:11:00〜14:00(ランチ)、16:00〜21:30(ディナー)、バータイムは16:00〜22:30(金土〜24:00)
定休日:無休
公式サイト

アジアのベスト・バーNutmeg & Clove

シンガポールを代表する歌手、KIT CHANの代表曲『HOME』にかけて、右ページでは「RAMOS AT HOME」(4枚目写真の右)というカクテルを紹介。洒落てる!
このBarに限らず、西洋と東洋をうまくリミックスした空間がシンガポールには多い。
チャイナタウンの近くにあり、外国人のゲストも多い。
左から「F YOUR BANANA」、「FRIED RICE PARADIGM」、「RAMOS AT HOME」。カクテルの値段はすべて25SGD。

2017年からアジアのベストバー50にランクインし続けている(今年は7位)Bar。当然カクテルはどれもハッとさせられる、“輪郭”のあるものばかりなのだが、驚いたのはメニュー(もはや本のよう)で、店のカクテルとそれのイメージに合うシンガポールの有名人の組み合わせが見開きのイラストで紹介され、もはや一冊の立派なzineのよう。こういう遊び心のある店に出会うと嬉しくなる。

Nutmeg & Clove

営業時間:17:00〜深夜(金土 16:00〜深夜)
定休日:無休
公式サイト

見上げてごらんBarの天井をAtlas

左・目の覚めるようなくっきりとしたシンガポール・スリング。右・モクテルもあり。オレンジ、レモンにシャンパンビネガーを入れた「Farewell to Arms」16SGD。

「徹底的に、大胆に」のシンガポールイズム(勝手に決めてしまっているが)を象徴するのがこのBarだと思う。写真上のセンター付近の1300本のジン・コレクション(世界最大級とも言われる品揃え)のタワーは15m。アール・デコ調のきらびやかかつ重厚な内装。「どこまでやるんですか」と突っ込みそうになりつつも、座ってみるとこの派手さがしっくりくる。金ピカの天井を見上げているだけでなぜか不思議な多幸感。

Atlas

営業時間:12:00〜24:00(金土〜翌日2:00)
定休日:日月休
公式サイト

訪れた人:編集部S

カオス寄りの東南アジア好き。特に好きなのはビルマとラオス。シンガポールはトランジットで1泊したことは何度かあるが、きちんと滞在するのははじめて。今までのイメージが「静」だとすれば、実は体感や体験のできる場所やイベントが多いことがわかった今、「動」のイメージの街に。早くもまた行きたい。

知ってた? シンガポールは緑の街 シン・シンガポール旅
知ってた? シンガポールは手作りの街 シン・シンガポール旅
知ってた? シンガポールはデザインコンシャスな街 シン・シンガポール旅

Photo:Takahiro Idenoshita ※1シンガポールドル(=1SGD)は約109円です(2023年10月30日現在)