少子化対策を成功させ、先進諸国の中では高い出生率を誇ってきたフランス。しかし、そのフランスもコロナで少子化に拍車が! 危機感を覚えた政府は、早急に少子化対策強化に乗り出しました。今回は、妊娠&出産に対する、フランスの手厚い国の政策についてリポートします。


第25回 国がここまでしなければ産まなくなる! 妊娠&出産サポート

日本の場合、出産をすると健康保険(自営業の場合は国民健康保険)から出産一時金が一律42万円もらえるが、出産は病気ではないので健康保険の適応外。検診費用や、42万円を超えた場合の入院費の差額は自己負担。居住地や病院、出産方法などによって費用は異なり、差額負担が大きくなることも。

しかし、フランスは出産にかかる費用は全国一律、健康保険(国保)がカバーし実質タダ。妊娠中の健診や、産後ケアも国が負担している。これがフランスが高い出生率をキープしてきた一因であることは明らか。

今回は、日本政府にも参考にしてほしい、フランスでの妊娠から出産までの主に「無料」部分をピックアップ!

たとえ財布が空っぽでも検診に行ける!

フランスでは妊娠&出産は全国一律「健康保険の適用内」。

遅くとも妊娠4カ月になる前までに医師(内科医・産婦人科医)または助産師の診断書を国保に送付(診断書は、妊娠に限らず全て無料。別料金は不要)。
この申請さえしておけば、妊娠5カ月までの検診料は国保が65%カバー。残り35%についても国民の9割が加盟している任意保険がカバー。ICカード式保険証(写真)でオンラインにより病院も薬局も精算。支払いは不要となる。

妊娠6カ月以降は国保が100%カバー。毎月の検診の他、トキソプラズマなどの血液検査や3度の超音波検査(3&5&8カ月)、医師から処方される薬も国保により支払われるので、例えば学生やまだ貯蓄のない若者、生活に余裕のない人なども心配なく通院はできる。

また妊娠7カ月には出産準備金として約12万5000円が母親の口座に振り込まれる。

公的医療受給のためのICカード式保険証。フランス在住者(移民や留学生も含む)のほとんどが所有。病院でも薬局でも国保とのオンライン精算ができるシステム。妊娠6カ月以降はほぼこのカード1枚で精算処理され、支払いは不要(高級クリニックや特別な薬など使用する場合は差額を支払う)。

公立病院での出産ならば、100%国保がカバー

妊娠中の禁煙治療なども国保が65%を保障(残額は加入している任意保険による)。
1人でもカップルでも参加できる出産準備講習会(全7回)も無料。

臨月まで産婦人科医に通い、出産は公立の総合病院の産科でというフランス人が8割。問題がなければ、分娩はほとんどの場合、助産師によって行われる。

また、9割以上のフランス人が無痛分娩を希望(国保保障)。妊娠8カ月に麻酔医との事前打ち合わせ(アレルギーや既往症など)はするが、公立病院でも麻酔医は24時間365日交代で勤務しているので、あらかじめ出産日を決めることは不要。陣痛が起こったら予約なしに病院に直行すればいい。

出産&入院費は帝王切開の場合も含め、公立病院は全て国保がカバー。

臨月まで通う産婦人科医や病院の医師が分娩するのではなく、助産師が行うのが一般的。

シャワー&トイレ付き病室を1人で使用が基本

100%国保が支払う公立病院でも、ほとんどの場合2人部屋を1人で使用。
私も3回の出産いずれも1人での入院生活。産後に他人への気兼ねなく、好きな時間に好きなだけシャワーやトイレを使えるのは、やはりとても気楽で快適だった。

基本は親子同室。でも預けたければ新生児室に預けることも可能。
私は安眠したいので夜だけ預けたが、「退院後のためにたっぷり充電」「泣き声を聴くと疲れる」「帰宅すれば上の子どもたちの面倒もしなければいけないから、今は静かに一人でいたい」と昼間も預ける人は多く、授乳のたびに看護師が気軽に部屋にベビーを運んできてくれる。

また、母乳については「ずっと禁煙していたから、すぐに吸いたい!」と最初からピルでホルモン調整し、母乳を止めてしまうことも自由(ピルも国保カバー)。各室についているバルコニーで嬉しそうにタバコを吸っている人も多かった。

(上)©️CH Annecy Genevois.(下) ©️l’Hopital Saint Joseph de Marseille(France)
入院期間は現在は産後96時間(3−4日)。帝王切開の場合は120時間(5日)が基本。私が第3子を出産した2000年頃までは入院は1週間だったが、財政困難で日数は減ってきている。ただし出産後12日間までは助産師が自宅訪問する母子観察期間が設けられている。

入院中の食事

食事の質は病院による。公立病院でもおいしいところもあれば、私立でもまずいところもある。概して給食センターに外注している病院はまずく、病院内で調理しているところはおいしいらしい。

驚いたのは朝食で、初日に「朝食は何を希望?」と尋ねられ、そこで咄嗟に答えたものが後日、ずっと続く。
一般的にフランス人は朝食に重きを置かないからというのもあるし、さらには「朝食はこれ」と普段から365日変わらぬものを食べている人が多いため、誰も不満には思わないらしい。
例えば「今日はコーヒー。明日はレモンティ。明後日はミルクティ」などという人は少なく「朝食はエスプレッソとタルティーヌ(バゲットにバターとジャム)」を飽きずに食べ続けることが当たり前。

第1子の時、初日にうっかり「コーヒーとタルティーヌ」を頼んでしまい、それが7日間続いたことに参った私は、第2子では「コーヒーとミューズリー。リンゴ」を所望。第3子の時には「コーヒーとクロワッサン。ヨーグルト。リンゴとオレンジ」と品数を増やしてみたが、まったく気にされず受理された。

同じ公立病院で3回、出産したが、食事は毎回おいしかった。前菜にサラダ。メインが肉料理か魚料理に温野菜。チーズ。デザートは果物かケーキ。+バゲット&水。希望により食後にハーブティ、が昼食と夕食の基本

産後の無料整体も、有効な少子化対策のひとつ

出産による骨盤底筋へのダメージは、たとえ安産であっても皆無ではない。それが元で後々、尿失禁症や腰痛、性交痛に悩まされる人も多いもの。
また、次の不妊や難産の原因にもなりうるとも考えられ、既に30年以上前から出産後の整体を国は推奨。10回(1回約30分)を国保が全額保障している。

自分のケア、自分だけの時間をもてることも出産後、育児におわれる女性にとってはとても有難いこと。また産後すぐの骨盤底筋の調整は体型の早期修復にも効果があり、それは肥満や糖尿病防止にもなり国保負担の予防にもなる、と国は考えている。

コロナが大きく影響「ベビー・クラッシュ」の危機!?

これまで先進諸国の中では少子化対策を成功させ、高い出生率を誇ってきたフランス。
それがコロナの影響で2021年の出生は大幅に減少。今も18〜34歳の51%が「まだしばらくは様子見。妊娠を控える」と答えている(Demographic Reserch)。

このままではベビー・ラッシュの反対「ベビー・クラッシュ」が起こるのではないかと政府は懸念。それでも「様子見のための延期」ではなく「もう子どもは生まない!」と決めた人が急増したイタリアやスペインよりは希望が持てるとも考え、政府は早急に少子化対策の強化をはじめている。

例えば生後2カ月から支給されていた育児支援金(1カ月1万1000〜2万3000円/収入による)を、妊娠7カ月から支給することに変更。
また第2子以降の妊娠の場合は、上の子どものベビーシッターなど妊娠中の保育料への補助金を増額。

そして、7月1日からは、父親の産休(有給)を14日間から28日間に延長(双子以上は32日間)。しかも、母親と調整して生後6か月以内に取れることにした。

前述の無料整体と同様、産むことを躊躇する人を相手に推奨や説得するよりも「すでに子どもがいる人」や「すぐに子を持ちたい人」を助成する方向に力を入れはじめている(そのため不妊治療や養子縁組への補助金も増額。同性カップルの生殖医療などへの制度も改正)。

©️CH Annecy Genevois
公立病院の産科にも分娩前の陣痛緩和のための水中ケア設備新設などを増やしている。少しでも心身への負担を減らし、次の妊娠を早めようという試み。特別料金は不要

コロナとメディアに振り回される日本政府の脆さを晒してしまったこの1年。
異国の良さを羨ましがっているばかりの時代は終了。伸びしろ(やれること。まだやっていないこと)はあり過ぎるほどたっぷりあるので、まずは「現金がなくても大丈夫!」な妊娠&出産を全国一律でできる制度を作って欲しいですよね。
続いて「お金がなくても大丈夫!」な育児&学費制度も考える。漠然とした「少子化対策」ではなく一歩一歩、着実確実、順序を追ってのステップアップ。 「とにかく真面目な国」と他国からイメージされる日本ならば、できるのではないでしょうか