私の、ロシア人ママに対する印象は、
「若くして結婚。スマートな体形のママ達。ソ連時代の影響で、男女平等」
でも、これって本当なのでしょうか?
最近は、経済発展や育児関連の手当増加に伴い、一度落ち込んだ出生率が回復しているそうです。今回は最新のロシアの妊娠・出産事情を探ります。


取材協力者・田中ひとみさん(仮名)の退院記念写真。ロシア人は皆、晴れ着にフルメイク。

ソ連崩壊で激減した出生率は、政府の支援や経済発展により回復

さかのぼること30年。ソ連時代は国が出産を奨励したため、ロシアの合計特殊出産率は2.0を超えていました。しかし、1992年ソ連崩壊から出生率は急激に低下し、1999年には1.2まで落ち込みました(注1)。

危機感を感じたロシア政府はさまざまな施策を打ち出し、2006年、プーチン大統領によりに育児手当等の増額や「母親基金」という大規模な出生給付制度が導入されました。

以前は経済的理由で子どもをたくさん持てないという家庭が多かったのですが、2000年頃より経済が上向きになり、2人目を持つ余裕がうまれました。
現在の合計特殊出生率は、1.57(日本は1.34)まで回復しました。

政府のサポートだけでなく、ロシア社会は子どもに優しく、子育てしやすい環境だと聞きます。

【ロシアの夫婦をめぐるデータ】(注2)
ロシア人女性の平均初婚年齢は、24.4歳(世界銀行調べ)
離婚率は、6割(ロシア国内統計)
ロシアのある世論調査では女性の3分の1はDVを受けていて、全国紙「MK」は年間10,000-14,000人が死亡していると報じています。
DVに関しては「平手打ち法」という法律の罰則が改正軽減されたことで、ますます深刻化しているようです。

出産・子育て支援制度は、意外と手厚い(注3)

「母親基金」は、住宅購入の費用・子どもの教育費・年金基金への積立等の目的で支給されるもの。生後3年経ってから給付されます。

当初は2人目の子どもが対象でしたが、2020年より第1子483,88RUB、第2子155,550RUBの合計約639,432RUB(約90〜100万円)が支給されるようになりました(注4)。ロシア人の平均月収が10万円に届かないことを考えるとけっこうな額です。地方では、母親基金支給額が年収の2倍にあたることも。

また、妊娠一時金をはじめとてし、産休中には出産手当として、会社から個人の毎月の平均給与額が支給されます。出産一時金は日本円で3万円程度です。

ただ一方で、育休手当は1歳半までは給与の40%、以降3歳までがくっと減少します。

公立病院の妊婦健診。ノンストレステストは、数人一緒に行う。
妊婦健診を担当する医師。

育休は3年間、幼稚園は朝7時〜夜7時まで3食付き

ロシアの育休は最大3年間。世界でも最長レベルです。しかも、母親が早期復職などの事情があれば祖父母も育休を申請できます。

ロシア連邦統計局によると、ロシア女性の育休期間は平均29カ月(注5)。幼稚園(保育園と同一)は2歳からなので、幼稚園に子どもを入れたタイミングで復帰する女性が多いようです。

夫婦共働き文化のロシア。ソ連崩壊に伴い、公共の保育施設が減り、子どもを預けられない家庭が増えましたが、現在は改善されてきました(注1)。

乳幼児2人を連れてモスクワに駐在している田中さんは言います。
「幼稚園は7時〜19時、私立は8時〜20時のところも。朝昼晩の三食付き、日本円で3,000円程度。ただ、都市部の公立幼稚園では順番待ち200人でなかなか入れない。仕方なく、私立幼稚園に行かせる家庭も多い」

田中さんによると、夫婦共働きといっても、ロシアの場合は家事育児を男性も平等に行うわけではないらしいです。社会主義の影響を受けながらも、伝統的な家父長制が息づく社会が続いています。どうやらロシアの女性は、家事・育児・仕事をすごいスピードとパワーでこなす頑張り屋さんのようです。

少し古い数値ですが、2017年にはロシアの上級管理職に占める女性の割合は47%、世界第一位となりました(注6)。

田中さんによる観察です。
「育休中だな、と思っていると、次の子どもを妊娠しているママ達が多いかな。子ども3人を立て続けに産んで、入社10年目だけどそのうち7〜8年は産休という人もいる。それでも、元の職・地位に戻れるように法律で保障されている」

仕事で活躍する女性が多いのは、しっかりした仕組みで支えられているからなのかもしれません。

公立の産院。施設自体は古い。

(写真はすべて、田中さん提供)

(この記事は、2021年7月20日時点のデータに基づいて執筆しました)