第10回 どんな花も最後まで楽しみ、循環していく仕組みを作りたい    〜フラワーショップ「hanane」代表 石動力さん

2色に変色した規格外のバラ 提供:hanane

722,713本。

最初は100円という価格に惹かれて来ていただけの人も多かったそうですが、最近はそこにも変化が出てきたと、代表の石動力さんは言います。

「チャンスフラワーがどういう花なのかをちゃんと理解したうえで、選んでくれる人が増えました。売り場に立っていると『いい取り組みですね』と言っていただくこともあります」

hanane代表取締役、フラワーアーティストの石動さん 撮影:成見智子
hanane店舗内。花つみをきっかけに常連客が増え、規格品の花の売上も増えたという 提供:hanane

なぜチャンスフラワーが生まれるの? 特別授業を開講

花つみは自社店舗だけではなく、美容室、アパレルショップ、飲食店など全国約70か所で開催されるようになりました。エシカルやSDGsの気運の高まりとともにフラワーロスへの理解が広がり、石動さんの元には、全国の学校から授業のオファーも来るようになりました。

東京・渋谷区の青山学院初等部での特別授業は、今年で二年目。農家から店頭に花が届くまでの流通のしくみや花の出荷規格、チャンスフラワーとSDGsへの取り組みなどについての講義と、使用済みペットボトルなどの廃材にチャンスフラワーをいける実践授業をしています。ふだん花を見ることはあっても、触れる機会が少ない生徒たちがチャンスフラワーを手にした瞬間、教室の雰囲気がぱっと明るくなるそうです。授業後、生徒たちから届いた手紙には、こんなことが書かれていました。

「花のことについて学べたこと、かざってみたこと、とても楽しかったです」

「食品ロスだけでなくお花も1つの命なので、チャンスフラワーを大事にしようと思いました」

「これからも、チャンスフラワーのことは忘れずに過ごしていきます」

山形県の高校の華道部の生徒にリモートで特別授業を行った時は、講義後の質疑応答で、県内の花農家のことや、山形県内から出荷されている花の種類などについての質問も出ました。実際に花に触れることで、子どもたちはその花の裏側にある農家の仕事や、日本国内のマーケットの現状、そしてフラワーロスが出てしまう理由などについても関心を持つようです。

花の流通の仕組みについて、特別授業で話す石動さん 提供:hanane
特別授業はリモートでも実施 提供:hanane

チャンスフラワーが業界を変えるきっかけに

 hananeは今年、「クイーンズスクエア横浜」(横浜市)で、チャンスフラワーを使ったクリスマスイルミネーションの装花を担当しました(前回記事で紹介)。9月には、大手広告代理店の(株)電通と提携した取り組みを実施。SDGsに対する意識向上をはかるため、希望する従業員の自宅へチャンスフラワーのミニブーケを贈りました。

最近は多くの企業が、エシカルやSDGsを取り入れたイベントやプロモーションを実施する気運が高まっていると、石動さんは感じています。

「ただ花を飾るのではなく規格外品を使い、イベントで飾ったり店頭で配ったりする企業が増えていますね」

チャンスフラワーの意義が伝わることは、より多くの人が花を手にするきっかけになります。その一方で、規格品の花は「高い」「値段の基準がよくわからない」といった声は、石動さんがこの業界に入った20年以上前からあるそうです。でも、ここへきて業界全体の流れも少しずつ変わってきたと石動さんは見ています。

「どこかで線引きをして決まりを作らないと花の価格設定ができませんから、規格自体はとても大事なものです。ただ、そこに入らない花にもなにかしらの価値を持たせることが必要だと思っています。花農家は、出荷先の規格にあわせて出荷しますが、物流網の広がりやインターネットの普及により、今はその市場に合わないものをECサイトで直接売ることもできるようになりました。市場も変わってきていますね。チャンスフラワーは今、主に4つの市場と提携して仕入れていますが、それまでは市場が規格外品を卸してくれるなんてありえなかった。最初は、怒られるのを覚悟で交渉に行きましたよ(笑)」

クイーンズスクエアのクリスマスイルミネーション。土台部分にチャンスフラワーを使用 提供:hanane

枯れた花もリサイクル可能に!

21年11月末時点で、花つみの実施回数は通算4,369回。実はこの取り組みを進める過程で、石動さんはずっと考えてきたことがあります。

「捨てられてしまうものに価値がつき、有効活用されるようになりました。でも、最後の1ピースが足りない。土に還すとか、循環する、という部分が欠けていたんです」

hananeは2022年からバイオ資源の研究企業と連携し、草花のごみや廃材を活用した工業製品や土木建築材料の加工製造に関わることになりました。具体的には、自社店舗や花つみの実施店舗で出る花のごみを、原材料として提供します。花つみの実施店舗には回収ボックスを設け、前回の花つみで購入したチャンスフラワーを来店客から回収。それが再利用に活用されることで、一般消費者もSDGsに貢献できる形になります。
この技術を使ってコンクリートを製造する場合、葉の形や花びらの色などを残して加工することもできるそうです。プラスチック製品や紙類の加工時にも、植物の色合いなどを残すことが可能とのこと。今後、自社の営業や活動に積極的に活用していきたいと石動さんは語りました。
「花つみで使用している桶も、こうした製品に置き換えられるといいですね。いずれはラッピングペーパーとか、アレンジメントを作る時に花を挿す吸水スポンジなどの製造も目指していきたいです」

多くの人に花を楽しんでもらうだけでなく、枯れたのちも役立てられる方法を探し、最後の1ピースを見出した石動さん。チャンスフラワーを起点に、花の生産から消費、そしてリサイクル・再生産までの完全な循環を創り出すことをめざしています。

hanane虎ノ門の 店舗で開催する花つみの様子 撮影:成見智子
石動さん制作のアレンジメント。色鮮やかな生花に、ドライ素材を効果的に使っている 提供:hanane

各地の「花つみ」のスケジュールやhananeの活動を知るには
ウェブサイトでは月別のイベントカレンダーを掲載。インスタグラムではイベントの模様や、店舗や商品などを紹介しています。
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