すぐ沈む太陽、押し寄せる寒さ、それに雪...キャンプビギナーの前に立ちはだかる“冬キャンプ”という大きな壁。ということで今回は、知っておきたい「冬キャンプの防寒対策」を、キャンプ雑誌・fam_mag編集長の槻真悟(けやきしんご)さんに教えていただきました!あると心強い、槻さんの冬キャン推しアイテムもご紹介します。
【寒さ対策】ベテランキャンパーに聞く! 冬キャンプを楽しむための服装選び
初心者にとってハードルの高い冬キャンプ。
アウトドアを快適に過ごすためには、寒さはかなりの強敵です。
自分でキャンプをするようになって約2年が経った筆者ですが、冬キャンプはまだ片手で数える程の経験しかありません。
そんな初心者でも冬キャンプを楽しむ極意を、アウトドア雑誌「fam_mag」編集長であり「おぎやはぎのハピキャン (メ〜テレ)」の監修者でもある、ベテランキャンパーの槻真悟さんにインタビューしました!
槻 真悟氏
グッズ&ライフスタイル誌「fam_mag」の編集長。ファッション系モノ誌、カルチャー誌、スニーカー誌など、さまざまな紙媒体の編集に携わる。「おぎやはぎのハピキャン(メ〜テレ)」の監修者でもある。
【基本編】冬キャンプの防寒対策の服装 レイヤリングを制すものは寒さを制す!?
冬キャンプの服装で、槻さんが意識していることは何でしょうか?
首、手首、足首をなるべく冷やさないようにしています。
「首」が付く部位には大きな血管が通っているので、その部位が冷えると体感温度も下がってしまうためです。
なるほど!では、「首」部位を出さないように、とにかくたくさん着込めば良いのでしょうか?
むやみにたくさん着込むというよりは、適切な厚み、適切な素材の衣類を適切なレイヤリングで身にまとうことがポイントです。
薄いものをたくさん着用しても、暖かくならないですからね…!
着込めば良いってもんじゃないんだ!素材や厚みを適材適所で着ていくことが、冬キャンプを快適に過ごすことに繋がるんですね。
●レイヤリングとは?
そもそも、レイヤリングって何ですか?
レイヤリングの考え方を、簡単に説明すると…
【レイヤリングとは】
服装を3層の重ね着(アウターレイヤー/ミドルレイヤー/ベースレイヤー)にすること。
-
アウターレイヤー
防水・防風性のあるジャケットなど -
ミドルレイヤー
身体を保温する目的の服、保温性があり、かつ通気性のあるもの -
ベースレイヤー
汗を吸い取る吸水速乾性がある肌着、かつ保温もできるものなど
こんな感じです。また、気温や天候に応じて以下のような考え方で服装を選ぶのがおすすめです!
【気温・天候別の服装の考え方】
-
最低気温-3〜5℃程度&晴れの場合
素材にこだわりながらしっかりと着込む(基本のコーディネイト)
-
雪中キャンプの場合
基本のコーディネイト+防水を意識する
-
最低気温5〜10℃程度&晴れの場合
基本のコーディネイトから気温に合わせて引き算をする
基本の服装から、天候や気温に合わせて足したり引いたりしていくことが大切ですよ。
ベースのコーディネートを決めておけば、服装にあれこれ悩まなくてよさそう。この方法なら初心者でもチャレンジできるかも!
【実践編】冬キャンプの服装を気温・天気別に解説! レイヤリングコーディネートの参考に◎
首を隠す、レイヤリングをする...というのはわかったけど...もっとカンタンに、初心者にもわかるように参考例を出して説明してもらえないでしょうか…!?
では、具体的な気温ごとにレイヤリングの服装提案をしていきます!
●最低気温-3〜5℃で晴れている場合のレイヤリング
【上半身】
-
ベースレイヤー
厚手生地のウールの下着 -
ミドルレイヤー1
フリース -
ミドルレイヤー2
(必要に応じてソフトシェル) -
アウターレイヤー
ダウン(防水じゃなく撥水程度でOK/フィルパワーは高いほうが◎)
※補足
- ソフトシェルとは:ストレッチ性のあるソフトな素材かつ機能性に優れたウェア
- フィルパワーとは:羽毛のかさ高性を現す単位のこと
【下半身】
-
1層目
厚手生地のウールのタイツ -
2層目
フリースパンツ(またはダウンパンツ)
※補足
焚き火をする場合は、難燃素材のパンツを着用しましょう!化学繊維のものだと、火の粉が燃え移りやすく危険です。
【足元】
- アウトドアソックス二重履き(または厚手のウールソックス)
- 中綿入りのブーツ(THE NORTH FACE「ヌプシブーティー」など)
THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)のヌプシブーティーは、もはや冬の定番ブーツですね。
キャンプ場でも履いている人を、よく見かけます。暖かく快適に過ごせそう。モコモコの見た目も可愛いですね!
●雪中キャンプの場合のレイヤリング
【上半身】
-
ベースレイヤー
厚手生地のウールの下着 -
ミドルレイヤー1
フリース(またはソフトシェル) -
ミドルレイヤー2
インナーダウン -
アウターレイヤー
ハードシェル
インナーダウンとしては、こちらがおすすめ!
クルーネックタイプのインナーダウン。袖の着脱が可能で、ダウンジャケット・半袖ダウン・ダウンベストの3種類をコレひとつで手に入れられるのが魅力です。
【下半身】
-
1層目
厚手生地のウールのタイツ -
2層目
フリースパンツ -
3層目
レインパンツ
【足元】
- アウトドアソックス二重履き(または厚手のウールソックス)
- 防寒ブーツ(ソレル「カリブー」など)
カナダ生まれのウインターブーツブランド、ソレルの代表的なモデル「カリブー」は、発売からおよそ40年間変わらず愛されている、スタンダードなスタイルのブーツです。
ちなみに、ソレルのブーツは筆者も愛用しています!足首のふわふわが可愛くて暖かくて、冬キャンプでは手放せない一足です。
●最低気温5〜10℃で晴れている場合のレイヤリング
【上半身】
-
ベースレイヤー
薄手のウールの下着 -
ミドルレイヤー
フリース -
アウターレイヤー
中綿入りのジャケット or 防風のシェル
【下半身】
-
1層目
薄手のウールのタイツ -
2層目
普通のパンツ(チノパン・デニムなど)
【足元】
- アウトドアソックス
- 普通のアウトドアブーツ(またはアウトドアスニーカー)
昼夜で寒暖差がある場合も、調節できるレイヤリングなら安心ですね。
この方法なら真冬から春先までも、快適にキャンプができそう!
fam_mag編集長槻さんおすすめ! ネットで買える「3首」を冷えから守る冬キャンプ用防寒アイテム
槻さん、冬キャンプにおすすめの小物があったら、教えてほしいです!
では特別に、ネットでも買えるおすすめの「3首を冷えから守るアイテム」を3つご紹介しましょう!
ということで、ネットで購入できる槻さんおすすめの防寒アイテムを紹介します!
●1)手首の冷え対策に:フーディニ(HOUDINI)のパワーリストゲイター
手袋とは違って、指先を自由に動かせるタイプの防寒アイテム。
手首の冷え対策に活躍します!
●2)首の冷え対策に:ダイワの撥水中綿フーディーウォーマー
フーディとしてもネックウォーマーとしても使える防寒小物。
首の冷えを防ぐだけで、かなり暖かくなりますよ!
●3)足首の冷え対策に:アクリマのホットウール ソックス
保温性の高いウールソックス。防臭効果もあります。
足首の冷え対策におすすめです◎
どのアイテムも、今持っているアイテムにプラス買いすることで、より一層暖かく過ごせそう!防寒小物を揃えて最強状態で冬キャンプに挑みたいですね。
【小技編】冬キャンプですぐに実践できる! 知っておきたい防寒方法 焚き火時や寝袋での小技も
他にも、ベテランだからこそ知っている防寒対策ってありますか?
それでは、意外と知られていない冬キャンプでの暖の取り方を紹介しましょう。
初心者でもすぐマネできるやつがいいな...
初心者でも大丈夫!すぐに試せる防寒方法です!
イエ〜イ!そういうの、待ってました〜!
●焚き火の前では上着のファスナーを開けると暖かい!
焚き火の前では、上着のファスナーは開けておいた方が暖かいんですよ。
...え?普通に考えたら、ファスナー開けると寒くないですか!?
防風性の高いアウターを着ているときは、ファスナーを閉めているとせっかくの暖気をシャットアウトしてしまう場合があります。
前面のファスナーを開けることによって、暖かい空気が背中側にまでまわり、体全体が暖まりますよ!
ちなみに、私も牛田浩一さんに教えてもらい、ある寒い冬の日に実践してみたら、かなり暖かかったんです…!焚き火のありがたみが倍増した気がしました。
牛田浩一さんって...fam_magで「達人が教える基礎知識100」を連載していた超ベテランキャンパーですね!説得力あります…!
▼雑誌fam_magでの連載を大幅に加筆修正し、まとめた一冊がこちら。
初心者でも読みやすい、キャンプの教科書的な本になっています。
▼コチラの記事でもくわしくご紹介しています!
●焚き火の前ではサンダルに履き替えると足が暖かい!
また、焚き火の前ではサンダルに履き替えるのがおすすめです。
えっサンダルって...寒くないですか!?
理由は上記、上着のファスナーを開けることと同じです。防寒性の高いブーツなどを履いている場合、焚き火の恩恵を100%享受できない可能性がありますからね。
敬愛する「焚き火マイスター」こと猪野正哉さんの書籍[『焚き火の本』]にも書かれていました!
なるほど〜。
寒い状況であるほど足元や下半身を冷やさないことが大事なので、あえてサンダルに履き替え、素肌に近い部分で火の暖かさを感じましょう。
サンダルだと、テントの出入りも楽チンで一石二鳥ですね!
槻さんの言う『焚き火の本』は、タイトル通り焚き火の知識とハウツーが詰まった参考書のような本になっています。
焚き火をもっと身近なものにしたい、という著者の想いが詰まった一冊です。
▼コチラもチェック!
●ダウンの寝袋の中では薄着のほうが暖まりやすい
ダウン寝袋の中では、薄着の方が暖まりやすいんですよ。
えーっ、絶対たくさん着込んだほうが暖かいですよね?!空気の層が、できるような…!
ダウン寝袋(ダウンジャケットも同様)は、人間の体から発せられる熱をダウンで吸収・保温し、寝袋内に暖かい空気の層を作ることで快適さを生み出す仕組みです。
それゆえ、厚着の状態で寝袋の中に入ると体の熱がダウンまで伝わりにくくなり、結果として寝袋が本来持っている機能性を引き出せなくなります。
ダウン寝袋って、そういう仕組みなんだ...。
また、重ね着のしすぎによって生まれるゴワ付きは、時に睡眠の妨げにもなります。
ダウンの寝袋で寝る際は、薄着または体温を通しやすいフリースなどを着用することをおすすめします!
●細部まで注意!間違った対策方法&知っておきたい防寒のポイント
他にも、冬キャンプの防寒対策における小技、ありますか?
例えば、熱は頭から逃げていくので、帽子選びをおろそかにしない、とか?
頭から熱が逃げる!初めて聞きました。
あとは、たまにインナーダウンをアウターレイヤーで着ている人を見かけますが、これは意味がなさそうです。
インナーダウンは、ミドルレイヤーに着るからこそ効果を発揮するつくりになっていますからね。
なんでも着込めばいいってわけじゃなく、着る順番が大切なんですね。
あとは…
テントの中では、コットの下は荷物などを詰め込んで冷たい空気の対流を阻止するといいとか、銀マットはアルミ蒸着面を上にすると自分の体温が反射しやすくなって体が暖まりやすい、とかでしょうか。
おぉ〜!いますぐ使える小技、ありがとうございます!早速キャンプで試したくなってきた!
冬キャンプデビューは対策を万全に! 服装や防寒対策の技がわかれば初心者でもチャレンジできる
初心者にとっての高いハードル、冬キャンプを乗り越えるための技を、ベテランキャンパーでありfam_mag編集長である槻さんにお聞きしました。
そういえば、筆者は同じくキャンプ初心者の友人を11月末の氷点下の中、ゆるい防寒対策しかせずに山の上のキャンプ場に連れて行ったことを思い出しました。(鬼か?)
震える友人、飲みかけで凍るお茶...私たちの友情も凍りついていた可能性は高いです。
今回教えてもらった数々の技を知っていれば、あの時ももっと快適に過ごせたかもしれない...。
ベテランキャンパー槻さんから教わった防寒対策を実行して、暖かく快適な冬キャンプを楽しんでみてはいかがでしょうか?