前編では新チームスタート時から、昨秋までの軌跡を追っていった。今回の後編では、秋季大会が終了してからどんな課題を持って冬場を過ごしてきたのか。その試行錯誤の過程と今春までの期間について迫った。

点差以上に感じた打力の差

八千代松陰 エース 清宮虎多朗

 準々決勝で習志野に敗戦したものの、昨秋ベスト8入りを果たした八千代松陰。夏に鍛え上げた守備で、戦国千葉を勝ち上がることができ、確かな手ごたえを感じていた。

 一方で秋に見えた課題は打撃力だった。特に習志野戦でそれを強く感じた。兼屋監督は2対0という点差以上に差を感じたようだ。

 「体つき、打球の速さ、飛距離。すべてにおいて大きく劣っていると感じましたし、チームとしても、選手としても、体力強化と筋力強化、打撃力強化というのが定まってきました」

 同じく笹川も「パワーは凄かったですし、清宮のボールをフェンス際まで飛ばす選手もいて凄いなと感じましたし、そこがうちとの大きな差だと感じました。」

 そこから練習試合や練習では打撃力重視の野球でチーム作りを行った。兼屋監督は「秋のメンバー、打順では浮上することはできない」と様々なメンバーを起用しながら、実力を高めてきた。その中で期待している守備がウリの長岡は体の線は細く、パワーはあまりないように見えるが、スイングスピードは速く、バットコントロールも良い。秋までは2番だったが、1番を打つようになった。

 そして練習試合も終わり、オフシーズンに入った。

 とはいえ、八千代松陰のオフシーズンは特段変わっていることをやっているわけではない。週に1回は体重測定をするなど、体づくりの成果がどれだけ上がっているか確かめる場もあるが、体重が足りていないからといってペナルティがあるわけでもなく、食べる量、何を食べるかも各自の自由だ。トレーニングもこれといった特別練習もあるわけではない。

 

 しかしこのやり方もしっかりとした意図がある。

チャレンジャー精神で20年ぶりの聖地へ


マウンドに集まる八千代松陰選手たち

 「今は情報が溢れていて、検索すれば練習方法が分かる時代。学校での練習メニューは私が考えているところもありますが、もちろん選手たちに考えさせているところがある」と兼屋監督はそう話す。

 実際に、エース・清宮が1年秋、初動負荷トレーニングを始め、10キロ以上の球速をあげた例があるように、自分でしっかりと考えて行動することが、個人の成長に結びつくと考えている。

 そして迎えた春季大会。
 「守備のチームと思われているので、それだけではないというところを見せていきたいです」という笹川の意気込みとは裏腹に、西地区準々決勝で再び習志野と対戦し9対2で敗北を喫した八千代松陰。打線も2試合で4得点と沈黙した。

 今春は昨秋ベスト8に入ったことで、地区予選を戦うことなく、県大会に出場した。兼屋監督は地区大会を戦わないことに逆にやりづらさを感じていたが、指揮官の予感が的中した結果となった。

 「挑戦者という気持ちをずっと忘れることなく、選手には戦ってほしい」

 20年ぶりの甲子園へ。
 『課題克服の春』とはいかなかった。
 とはいえ、負けて改めてチームの方向性が間違っていないことを認識した春の大会になったのではないだろうか。

 西千葉の頂点にむけ、打撃力向上は避けては通れない課題。
 『課題克服の夏』となった時、選手が身にまとう「松陰ブルー」はより輝きをましているだろう。

 2018年夏。八千代松陰に注目だ。


(文=河嶋 宗一)