今年の甲子園は履正社、明石商、星稜、中京学院大中京の4強の中で唯一、完投がないチームがある。それは中京学院大中京である。なんと岐阜大会初戦からすべて継投策で勝ち上がっている。さらに、すべて3人以上が投げている。継投策で2人リレーはどこにでもあるが、全試合3人以上が投げているというのは記憶にない。なかなか例にない継投策をしている中京学院大中京に継投策を行った背景を聞いた。

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第101回全国高等学校野球選手権大会

昨秋の逆転負けの反省から継投策に

元謙太(中京学院大中京) 

 今年の甲子園に入ってから中京学院大中京の継投リレーは以下の通り。

北照戦 不後 祐将-赤塚 健利-元 謙太
東海大相模戦 不後 祐将-村田 翔-元 謙太-不後 祐将-赤塚 健利
作新学院戦 不後 祐将-元 謙太-赤塚 健利-元 謙太
星稜戦 不後 祐将-元 謙太-赤塚 健利- 村田 翔- 不後 祐将

 この徹底ぶりである。ちなみに元、不後については秋季大会で完投している。完投能力がある投手に対して、この戦略を取る意図は何か。

 その意図について森昌彦コーチが詳しく語ってくれた。
 「昨秋の東海大会ではほぼ不後が1人で投げていましたが、終盤に逆転負けをして、この春から継投策で戦っていこうと橋本監督と話し合って決めました。だから、春は不後をあまり投げさせないで、他の投手を作っていこうという方針になりました」

 昨秋ではスタミナが切れて、代え時だと思っても、自信をもってリリーフできる投手がいなかった。その課題を克服するために行ったのが継投策だったのだ。

 森コーチは、96年のアトランタオリンピックの代表でもあり、抑えの切り札として活躍し、銀メダル獲得に貢献している。さらに橋本哲也監督は、NTT東海時代の先輩で、橋本監督のオファーでコーチに就任した。

 豊川高校のコーチ時代にはプロ注目で、2014年センバツ4強に導いた好投手・田中 空良(東邦ガス)を育て上げており、投手育成能力は高く知られている。そんな森コーチ主導で、不後以外の投手をしっかりと育てる方針を取った。

 春季大会では不後はあまり投げず、元は野手を兼任しながら登板。その間、赤塚、村田、ベンチ入りの吉田 直哉を育てる方針に切り替えた。

いつでも投げられる準備を徹底させ、甲子園で大躍進

不後祐将(中京学院大中京)

 安定感が課題だった赤塚については、昨年、トルネード気味のフォームに修正させ、縦振りで投げさせるフォームに切り替えた。他の投手についても、キャッチボール、投球練習で横振りを修正させ、縦で回転する投球フォームに修正させた。

 その結果、多くの投手が球速をあげ、赤塚においては最速148キロを計測するまでにレベルアップした。

 さらに森コーチは、赤塚には常々、準備の大切さを説いていたという。
「もし、不後が1球目に投手ライナーに当たってしまって、いきなり降板になってしまうかもしれない。その時、いつでもいける準備ができているか?など、たとえ話をしながら、いつも準備について話してくださいました。だから、練習試合から、いつでも投げられるような意識で準備していましたし、夏の公式戦でも、いつでも全力で投げられたと思います」

 実際に中京学院大中京のベンチを見ると、初回からどの投手もブルペンに入ってキャッチボールをしたり、野手出場の元も合間を見てブルペンで投げていた。そういう準備が実り、岐阜大会でも継投策で勝ち上がった。夏の甲子園に入ってからも、エース・不後については、80球〜90球を目安に交代させ、場面や試合状況に応じて継投するプランを遂行してきた。

 この策が上手くはまり、エースの不後に負担をかけず、準決勝まで勝ち上がることができた。しかし、星稜は強かった。

 3回まで6失点。不後は、「疲れはあったと思いますが、研究されていたと思いますし、さすがでした」と脱帽。森コーチも、「体に重さがありました。厳しい試合展開になりましたが、よく投げました」と労った。

 ただ、最後はエース・不後にこだわった。
「もちろん最後を締めるのは、不後と決めていました」と語る橋本監督。不後も監督の心意気に感謝した。
「最後は自分が投げたかったので、投げ切ることができてうれしかったです。負けはしましたが、最後の登板でやり切ったと思います」と試合を振り返った。

 橋本監督は、この夏について、「奥川君のようなスーパースターの投手がいれば、完投させる方針にしたかもしれません。ただ、うちは、完投できる投手陣ではないので、そういう中で、選手たちは良く戦ってくれたと思います」

 昨秋の東邦戦の負けは、中京学院大中京のチーム作りを大きく変えるきっかけとなった。終盤に強いチームとなり、継投策を武器に、この夏、全国ベスト4まで駆け上がった。

 新チームになり、主力投手で残るのは、元1人のみとなった。他は未知数の投手陣だ。9月には県大会が始まる。先輩たちの背中をみて学んだ戦い方を糧に、中京学院大中京は、次はどんなチーム作りをするのか楽しみである。

(記事=河嶋 宗一)

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