2019年の夏の甲子園準優勝を果たした星稜。大エース・奥川 恭伸の快投により、再び復活を予感させた。秋になっても北信越大会4連覇と強さを堅持している。今回はそんな星稜の現状をレポート。今後の展望を伺った。

新チームスタートが遅くても思いのほか結果を残すことができた

「星稜第3期黄金時代をつくる」と書かれたホワイトボード

 高校野球のチームを取材してチームそれぞれでカラーが出ていると感じるのはベンチ内の掲げているボードである。練習メニュー、自己啓発を促すワードなどなど多種多様だ。その中で星稜野球部グラウンドのホワイトボードに刻まれている文字が強烈だ。

「星稜第3期黄金時代をつくる」

 その実現のために星稜の一選手として何をしなければならないのかを書かれている。実際に練習をのぞいてみると、穏やかな雰囲気を残しながら、それぞれが目的意識をもって練習をしている。強豪校の練習はピリピリしたイメージを想像するが、星稜はそうではなく、こういう雰囲気から奥川をはじめとした主体性のある選手を育ててきた。

 その結果、2017年秋から着実に結果を残している。
2017年秋季北信越大会 準優勝
2018年センバツベスト8
2018年選手権出場 1勝
2018年秋季北信越大会優勝
2018年明治神宮大会準優勝
2019年センバツ 1勝
2019年春季北信越大会 優勝
2019年選手権 準優勝

 2年前の秋から圧倒的な成績である。

 この秋になっても北信越大会優勝を決めた。もう黄金時代は始まっているといっていいだろう。

 8月22日の決勝戦を終えて、新チームのスタートが大幅に遅れ、基礎練習もできない。そんな中でも 県大会に入っても危なげなく勝ち進んでいった。林監督はスタート直後から思いのほか戦えている手応えはあった。

「昨年はバッテリーなどセンターラインは残っていましたが、今年は内山、荻原、知田の3人が不動のレギュラーで経験者も少ない。練習試合もそんなにできない中、まだ完璧ではないですが、思った以上にゲームができていました。甲子園組ではなかった選手が学校でしっかりと練習した貯金が生きていたのもあると思います」

 県大会に入っても危なげなく勝ち進み、北信越大会でも優勝。今のところ公式戦は全勝。81得点、13失点と安定した試合内容だ。

 その中で甲子園を経験した選手だけではなく、甲子園ではベンチ入りしていなかった選手も着実に成長を見せている。

 まず夏の甲子園・仙台育英戦で1本塁打7打点の活躍を見せたスラッガー・今井 秀輔。今井は9月では「まだ打てるポイントが狭いので、打つポイントを広げていきたい」と語っていた北信越大会では15打数7安打4打点の活躍。林監督は入学時からスラッガーとして期待をかけて育ててきて、その期待に見合う成績を残しつつある。



寺西成騎

 また、大型右腕・寺西 成騎の成長も著しい。1年夏の甲子園では143キロをマークしている。しかしそれからは思うような結果を残せずいた。それでも林監督はキーマンと期待する。
「寺西の成長がこのチームの浮沈も握っているといっても過言ではないです。それだけのスケール、爆発力が彼にはあります。大事に1年間かけて育てていきたい」

 寺西も指揮官の期待を感じ取っていた。「コントロールを磨きにかけていきたい」と取材日のピッチング練習では回転の良いストレートを投げ込んでいた。

 そして寺西は北信越大会3試合、17回を投げ、25奪三振、3自責点と結果を残し、エース・荻原に匹敵するピッチングを見せた。

新戦力も台頭も、まだチームは発展途上

星稜野球部 練習中の様子

 甲子園ではベンチ入りしていなかった1年生たちも結果を残した。主将・内山の跡を継ぐ遊撃手として出場している出村 夢太は北信越大会で16打数7安打と大当たり。守備力も高く、林監督からの信頼も高い。レフトの中田 達也は中学から野球を始め、それまではゴルフをやっていた変わり種だ。北信越大会では19打数9安打1本塁打8打点と結果を残している。

 またセンターの吉田 竣希はチーム一の俊足で、去年のセンター・東海林 航介よりも足が速いという評判だ。さらに2年生の花牟禮 優は北信越大会で2本塁打5打点と大活躍。北信越大会のチーム打率.411、4本塁打と打線については林監督は「昨年より上」と評価が高い。

 新チームのスタートが遅れても、なおチーム力を高く維持できているのは、先輩たちの高い実績により、「これができて当たり前の基準」が高くなったこと。それは大きな財産だと林監督は語る。
「3年生たちは一生懸命やって、あのような実績を残し、大きな財産を残してくれました。特に決勝戦から見えた景色は今の選手も見ていることも大きいと思います」

 星稜の選手が素晴らしいのは、満足せず、さらに上を目指そうとしていることだ。それは主将の内山のコメントが示している。
「今年は甲子園準優勝とはいえ、個人としては悪かった部分しかないです。決勝戦は4番の差を感じました。履正社の4番の井上さんが3ランを打ちましたが、4番として勝利に導く仕事とは何か、4番の打撃がどれだけ勝敗に結びつくかが分かった試合でした。4番打者としての打撃を磨いていきたいと思いました」

 準優勝では満足しない。あくまで目指すのは日本一なのだ。そのために林監督は1年間かけてチームを作っていきたいと考えている。
「潜在能力が高い選手がいるとはいえ、チームとしてはまだ発展途上の部分が多いですから、1年間かけて作っていきたい。それはこれまでと変わらないです。去年のチームもそうでした」

 まだ手にしていない日本一の座。まず神宮大会はそれを手中できるチャンスがある。

「星稜第3期黄金時代」は始まったばかり。そこに日本一という快挙を刻むために、隙のないチームを作り上げる。

(記事=河嶋 宗一)