秋の滋賀大会で4位となり、21世紀枠の近畿地区候補に選出された伊香。エースの隼瀬 一樹(2年)を中心に守り勝つ野球を繰り広げ、初戦で滋賀学園を破るなど印象に残る戦いを見せた。

 滋賀県最北端の高校である伊香はJR木之本駅から徒歩15分のところにある。今年は暖冬ということもあり、取材日に雪は降っていなかったが、例年は豪雪に見舞われる地域だ。

 約3万人の地元住民の尽力で開校された歴史から校訓は「三萬一心」となっているが、それはグラウンドにも表れている。スコアボードやベンチなどは地元住民の手によって作られたもの。地元の後押しを受けて甲子園出場を目指している。

 前編では伊香のこれまでの戦いを振り返っいったが、後編では伊香ナインの支えとなっているマネージャーの存在について紹介していきたい。

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21世紀枠候補に選出された伊香(滋賀)滋賀学園に金星をあげた理由【前編】

甲子園出場に向けて 隼瀬の人柄

マネージャー 右から2番目が山本陸

 甲子園で勝つために取り組んでいるのが得点力の向上だ。選手たちの間で足を絡めて点を取る、タイムリーで点を取る、長打で点を取るという3パターンの得点方法を考えて、練習を重ねてきた。長打で点を取ることに対して苦戦していたが、外野の頭を越す以外に野手の間を抜く長打を打つ方法もあるということを考えながら打力の強化を目指している。

 それでも小島監督は「最後は苦手な部分は大会で出る」と見込んでおり、同時に投手力と守備力の強化も怠ってはいない。「目指すは1対0の試合」と勝つためには滋賀学園戦のように1点を守り切る野球が理想としている。

 そのためには隼瀬の好投が必要となる。小島監督は彼の実力面だけでなく、内面を高く評価している。伊香には先天性の脳性まひで電動車椅子生活を送るマネージャーの山本陸(1年)がいるが、彼を野球部に誘ったのが1年生時に同じクラスだった隼瀬だったのだ。体育の授業でサッカーをする際には山本にキックオフさせるよう周囲に促すこともあったという。

「隼瀬が凄いのは人に優しいというところなんです。見えない壁が僕らの社会の中でもあると思うんですよね。学校の中でも車椅子の子がいても、積極的に関わる子は少ないわけじゃないですか。でも、隼瀬が関わりを持ってくれることによって、他の部員が坂道で車いすを押してあげたり、授業の移動を支えてあげたりと人が元から持っている優しさを引き出してくれました。彼らには言っているのは『障碍者用のエレベーターや駐車場が整ったとしても助ける人は整っていないから、助けられる人になってほしい』ということなんです。それを感じ取ってくれたのが隼瀬たちなのかなと思っています。人のことを思いやれる部分は他のチームより長けていると思いますね」

 山本も体が元気なら野球をやりたいという気持ちがある。現在はキャッチボールができるようになることを目標にリハビリに励んでいるそうだ。練習ではリハビリを兼ねて外野ノックのボール渡しをすることもあるが、それがチームにいい影響を与えていると小島監督は話す。

「陸が渡したボールは僕も気持ちを込めて打つんですけど、ある外野手の野球ノートにも『陸君が渡してくれたボールは絶対に落とせない』と書いてあったんです。そういう気持ちで捕ってくれているので、お互いが高め合っています」

 公式戦ではスタンドから声援を送っている。「声をかけてくれていて、そうだなと思うこともあるので」と隼瀬は試合中に山本がいるスタンドに目をやることもあるそうだ。

地域のために甲子園出場を

小島義博監督

 伊香のある湖北地区は少子高齢化が進んでおり、今の2年生からは1学年3クラスに減少した。必然と入学者も減り、来年度の新入部員確保にもあまり手応えを感じられていない。だからこそ甲子園に出て、地域を盛り上げたいという想いが小島監督にはある。

「もう一度、伊香高校や地元に活力を生み出す原動力になりたいと思っています。僕らが活躍することによって子供やお年寄りに勇気を与えられるでしょう。昔のように甲子園に行って、地域が一つになるというような学校を目指したいと思いますね」

 伊香は過去に5度の甲子園出場歴があるが、勝ち星はまだない。主将の竹原は「甲子園で校歌を歌いたい」と甲子園初勝利に意欲を燃やす。

 人の温かさを直で感じられる伊香高校野球部。センバツ出場校が決まる24日は彼らにとって歓喜の日となるだろうか。

(文・馬場 遼)

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