今では野球ファンの間で大人気コンテンツとなっている「ドラフト会議」。ドラフト会議で新人選手を獲得することは、プロ野球球団の骨組みを作って行く上で欠かせないものであり、その成果を高めるため12球団は綿密に戦略を練っている。今回は長年、巨人のスコアラー、編成に関わった三井康浩さんにお話を伺い、当時のドラフト秘話をシリーズ別で掲載。まずは巨人の4番岡本 和真の指名秘話である。

岡本は巨人の4番を担っていくものがあった

2014年巨人に1位指名を受けた岡本和真

 12球団の命運を握るドラフト1位。その選手の成否は球団の数年後の明暗を分けるものといっていい。このドラフト1位について、三井さんは非常に難しいものと語る。

 まずドラフト1位野手についてどういう選手が指名される傾向にあるのか。三井さんはこう定義づけている。
「3拍子が揃ったトップの選手が1位、2位候補なんです。候補に入るだけで、圧倒的な打力や守備力があって、『これはすぐに1軍で使える。ドラフト1位で欲しい』と言う選手だからなんです」

 もちろん三拍子が揃わなくても、球団の編成事情でドラフト1位になるタイプがいる。まずはスラッガータイプだ。三井さんは2010年代から編成部に関わり、2018年のドラフトまで関わったが、そのスラッガータイプとして代表的なのが、2014年ドラフト1位の岡本 和真(智辯学園)だろう。

 高校時代の岡本の一番のストロングポイントは高校通算73本塁打の長打力。U-18代表の4番打者として活躍し、木製バットでも鋭い打球を飛ばし、岡本とU-18代表のチームメイトだった選手たちは岡本の打球を見て、「同じ高校生?」と目を丸くしたという。巨人も岡本の長打力を最大限評価していた。

「将来としてジャイアンツの4番を狙って指名です。本来は3拍子揃っている選手は1、2位候補になり得るんですが、そこで岡本のような圧倒的な長距離がある、将来1軍のクリーンナップで使える選手だと思えば、ドラフト1位で獲るんです」

 当時のドラフト市場を振り返ると、大学生では有原 航平(広陵-早稲田大-北海道日本ハム)、山﨑 康晃(帝京-亜細亜大-横浜DeNA)が即戦力投手として高く評価され、高校生では157キロ右腕・安樂 智大(済美-東北楽天)、2013年の甲子園優勝投手・髙橋 光成(前橋育英-埼玉西武)が将来のエース候補として高く評価されていた。

 その中で、巨人が岡本の単独指名に踏み切ったのは、当時の選手層から「和製大砲』の獲得が一番の補強ポイントと考えていた。
「編成の中で考えた時、投手より岡本を取っておいた方が、近い将来のジャイアンツにハマるだろうと。そういったことを考えるのが編成の仕事です。各ポジションの年齢とかを見ながら、『2、3年後には空くのかな?』と編成はデータを持っていますので。スカウトは持っておりませんが、編成はそういった仕事があるので持っていますが、空いたポジションに当てはまる選手がいれば、その需要にあった選手を指名していきます」

数少ないチャンスをものにした岡本がこのドラフトを成功させた

三井康浩さん

 当時の巨人の主力野手を振り返ると、当時34歳の村田 修一(東福岡出身)、33歳の阿部慎之助(安田学園出身)。まだ26歳の坂本 勇人(光星学院出身)がいたとはいえ、野手陣の高齢化は明らかで、世代交代は大きな課題だった。
 こうした編成を見ていくと、岡本はドンピシャの選手だった。

 また当時の山下哲治スカウト部長の強い推薦もあった。
「当時の山下スカウト部長が『この子が絶対だ』と言うので信じまして。1位のリストアップには最初から入っていましたし、絞り込んでいっても編成と踏まえても「当てはまりそう」ということで、全員で話し合って岡本になったんです。
 素材的にも最初から1位になるようなものがあって、編成との兼ね合いを見ても1位になりました」

 岡本は入団4年目に素質を開花させ、打率3割、30本、100打点を達成し、今では巨人に欠かせないスラッガーとなった。まさに球団の期待通りの成長を見せたが、三井さんは「岡本の台頭は早いほうだけど、時間はかかった」と語る。

 巨人はチャンスが少ない。入団3年目まで我慢強く育てようと思わせるまでの結果を残せていなかった。しかし4年目には開幕シリーズから結果を残し、高橋由伸監督が不振でも起用し続けた。岡本は不振を乗り越え、一回り成長することができた。

 改めて『2014年ドラフト1位 岡本和真』 は巨人の運命を変える大きな指名だった。そういえるのは、岡本の努力、そして岡本の才能を信じ続けた当時の首脳陣の心意気があったからこそだといえる。

(記事=河嶋 宗一)

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