野球ファンの間で大人気コンテンツとなっている「ドラフト会議」。ドラフト会議で新人選手を獲得することは、プロ野球球団の骨組みを作って行く上で欠かせないものであり、その成果を高めるため12球団は綿密に戦略を練っている。今回は長年、巨人のスコアラー、編成に関わった三井康浩さんにお話を伺い、当時のドラフト秘話をシリーズ別で掲載。第3回は2017年ドラフトの中心だった高校生スラッガーからの考察である。

これまでの関連記事はこちらから!
巨人のスコアラー・編成部に関わった三井康浩さんが語るドラフト秘話 岡本和真はなぜ1位になったのか?
「獲得すれば、10年は間違いない」巨人のスコアラー・編成部に関わった三井康浩さんが語る小林誠司獲得秘話

巨人は清宮の次に安田より村上を評価していた

ヤクルトで活躍する村上宗隆の高校時代

 2017年は野球ファンをワクワクさせるような高校生スラッガーが4人現れた。まず1人目は高校通算111本塁打を放った清宮 幸太郎(早稲田実業)、2人目は清宮に並ぶスラッガーとして注目を浴びたスラッガー・安田 尚憲(履正社)、3人目は甲子園新記録となる6本塁打を放った中村 奨成(広陵)、そして4人目は村上 宗隆(九州学院)である。

 一般的な知名度でいえば、清宮が圧倒的。そして中村は甲子園新記録の本塁打を達成し、爆発的な知名度を獲得。安田は2年夏から甲子園を経験し、清宮の対抗的なスラッガーとして人気があった。

 3人に比べて村上は1年夏の甲子園以外、出場なし。だからこそ、実力の高さはあまり知られていなかったが、3年生になったとき、各球団が猛マーク。関東遠征となれば、多くの球団が視察。6月には早稲田実業、九州学院との練習試合が実現し、多くのスカウトが詰めかけたように、スカウトの中では高評価だった。

 ただドラフトは相対的な評価で決まる。野手の一番人気はもちろん清宮。中村は中日、地元・広島の2球団。安田・村上はハズレ1位。もしくは2位候補として考えていた。

 巨人は当初、2位候補として考えていた。三井さんはこの事情をこう語る。
 「高校生であれくらいの選手はいなかったですね。当時は岡本 和真(智辯学園出身)がくすぶっていて、左の大砲がほしいという方針で指名に行きまして。安田も左の大砲ですが、評価は村上の方が上でした。
 ただ2位候補として考えていたところで清宮が取れなかったので、繰り上げて獲得を狙いましたが、ヤクルトに獲られましたので、当日の駆け引きもありますね」

 巨人と同じく、東京ヤクルト、東北楽天の2球団も繰り上げて1位指名。結果的に村上は取り逃してしまった。

 だが村上は素晴らしい選手だったとはいえ、高卒2年目で36本塁打を打つとは思いもよらなかっただろう。逆に清宮は怪我などもあり2年間で14本塁打。安田は2年間で1本塁打、中村は出場なしとこの2年間で実績は大きく開いた。

チャンスを与える球団があっても誰にも追いつけない成績を残すのは本人次第

三井康浩さん

 三井さんはここまでの予想以上だったと振り返る。
 「清宮は良いものはあるけど、ここまで思った以上に活躍をしていない。高校生はやはり大成するのは時間かかりますから。そう考えると、村上は成長が早いですね」

 その成長速度の早さは球団の方針にも大きく影響する。仮に村上が巨人だったり、他球団であれば、同じような実績を残すことはできたか?といえば、難しい。

 「ジャイアンツだと、もう少しチャンスが少ないかもしれないので、成長が遅れていたと思います。こればかりは入団しないとわからないです。ただ使ってもらえる球団に入ったのが一番です。
 大田 泰示や岡本も、少ないチャンスで打てないからファームでくすぶりましたよね。そういうジンクスはジャイアンツにあるので。
 ジャイアンツは選手を獲得する球団なので、若手はワンチャンスをモノにしないといけません。ヤクルトのように村上君にずっとチャンスを与えることはジャイアンツにはないですから。だから、チームの質にもよるんです」

 振り返れば、巨人の高卒若手にチャンスを与えるのは、首脳陣、球団の覚悟がなければほとんどない。坂本 勇人は高卒2年目に144試合すべてに出場したが、8本塁打43打点。ここから年々成績を伸ばしていったが、坂本もプロ初本塁打が満塁本塁打と、事あるごとに勝負強さを結果を残し、生き残った。さらに希少な大型遊撃手。我慢して起用する理由ができたのである。

 東京ヤクルトも巨人の球団事情と比べてもチャンスは与える球団だろう。ただ村上は4月までに6本塁打、5月には二桁本塁打に到達。そして疲労が顕著となる8月には、月間10本塁打を達成した。

 チャンスを与えたとはいえ、こんな芸当ができる選手はそうそういない。
 スカウトや球団はきっかけを与えることはできる。それをモノにするのは選手の努力、素質、勝負強さ次第。野球人の想像を遥かに上回る結果を残した村上 宗隆はやはり傑出のスラッガーなのである。

(記事=河嶋 宗一)


関連記事
◆巨人・岡本選手のドラフト秘話はこちら→第243回 巨人のスコアラー・編成部に関わった三井康浩さんが語るドラフト秘話 岡本和真はなぜ1位になったのか?
◆巨人・小林選手のドラフト秘話はこちら→「獲得すれば、10年は間違いない」巨人のスコアラー・編成部に関わった三井康浩さんが語る小林誠司獲得秘話
◆2003年世代の野手は吉野創士(昌平)を筆頭に名門校だけではなく、新鋭校にも注目スラッガーが登場!【前編】