紅白戦風景(※野球部提供)

 夏の甲子園が中止となり、多くの著名人から悲哀のコメントが聞かれる。しかし本気で高校球児を共済しようと思ったら、大きなハードルがある。それでも、今の高校3年生たちのために思案をしている指導者を紹介したい。

 それが山口県立柳井高等学校の舛永隆宏監督だ。1958年には甲子園優勝経験を持つ伝統校を率いる舛永監督は2018年1月から野球部公式Twitterのアカウントを設立し、日々の野球部の活動について発信を行ってきた。

 今回、5月20日の甲子園中止を受けて、桝永監督はこう提案した。
「各県で代替大会で優勝したチームは、3、4年後にマスターズ甲子園のように1試合プレーできる形があっていいのではないか」

 いますぐにではなく、今後の未来という形で実現をしてもいいのではという案だ。
「代替大会をご準備いただいていることは大変ありがたいことです。その先に甲子園というご褒美という形があってもいいかと思いました。それが今、練習に取り組む選手たちの原動力となると考えています」
 こうした案が浮かんだのは、以前、柳井高校のOBとしてマスターズ甲子園に出場したいと思い、どんな大会なのか、どんな仕組みなのかを調べた。マスターズ甲子園はいわゆるトーナメント形式の大会ではなく、1試合形式の大会となっている。

「今年は難しいと思いますが、数年後には大人の責任で、用意を準備していくような声があってもいいと思います。この大会は日程の都合もあり、マスターズ甲子園のように1試合でもできれば良いと思っています。

  選抜が中止になったあと、多くのプロ野球選手から救済案という声があがりましたが、彼らや野球に携わる方のほとんどが高校野球OBであり、なんとかしてあげたいという気持ちは多く持っていると思います。
 みんなの知恵、金、時間を作って準備してあげることが大事ではないかと思っています。こうした声を広げていければと思い、発信をさせていただきました」

 京都大学野球部OBの舛永監督は、この意見をOBたちにも広めており、発信後、多くの方々からメールでいただいたという。

 

 前例がないことを実現するには、大変困難なことである。やはり無理か…と諦めてしまうことも多い。

 ただ声を挙げなければ、賛同する人は出てこないし、意見を述べて最初の提案からブラッシュアップさせようと思う方も出てこない。

 舛永監督がこのような行動を起こすようになったのは、日々成長を見せていく3年生たちの姿を見て、なんとかしたい思いがあったからだ。
「本校は進学校ということもあり、文武両道をモットーに掲げていますが、本当に今年の選手たちは真面目に取り組んでいて、休校期間中も意識高く自主練習に取り組んでおりました」 

 また今年はプロジェクト方式を設け、打撃、トレーニングなど各項目のプロジェクトリーダーを設け、選手自らが練習メニューを考案する方式をとってきた。その結果、昨秋よりもチーム力は大きくレベルアップしている手応えは掴んでおり、この夏にかけていた中で、中止が決まった。



トレーニング風景(※野球部提供)

 20日の発表後、多くの選手が落胆をしていたが、指導者、OB、女子マネージャーの励ましもあり、再び立ち上がり、25日から練習再開では前向きに取り組んでいる選手たちに舛永監督は尊敬の思いで見ていた。だからこそいろいろ案を発信し、大人たちと議論しあがっている。

 桝永監督のように現場に関わる方々が立ち上がっているのは、ただ野球をしたい、大会をして勝利を目指したいだけではなく、選手たちがこの3年間、上達のために、いろいろな悩み、葛藤を乗り越えながら、心身ともに成長をしていく姿を目の当たりにしているから。

 それが高校野球の本質であり、ここまで頑張ってきた彼らに、これまで成果を発表する舞台を与えてあげたいと思っているのだ。

 柳井高校の3年生の多くが高校で、プレーヤーとしての野球を終え、自分が就きたい職業を目指して、勉学に励む。

 一部の選手に話を聞いても、「真剣な野球は高校野球で終わり」と答える。そしてこう誓った。
「自分の野球人生の締めくくりだからこそ夏を迎えたい。そしてトーナメント方式ならば優勝を目指したいと思っています」

 小さな声、小さな活動も積み重ねていけば、将来、選手へ還元される。2020年はそのきっかけの1年になるかもしれない。


 柳井高校の3年生たちの思い、ここまでの3年間の軌跡、葛藤、夏の大会にかける思いは別の機会で紹介をしていきたい。

(記事=河嶋 宗一)

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