この夏、佼成学園は非常に悔しい敗戦を喫した。

 夏の西東京大会の決勝戦で東海大菅生と対戦した佼成学園は、9回表に1点勝ち越すことに成功するも、直後の9回裏に同点に追いつかれる。その後、延長10回にサヨナラ打を浴び、掴みかけた栄冠は幻と消えた。

 そんな中で迎えた新チーム。
秋季東京都大会一次予選は無事に突破し、2試合で20得点を叩きだした。チームのここまでに迫った。

安定したバッテリーに意外な選出だった福岡主将

今夏西東京準Vという成績で終わった佼成学園(*写真は準々決勝日大三高戦より)

 「精一杯やったので、相手を称えるべきじゃないですか。(東西対抗戦の)帝京戦を見ても、あれだけ粘るチームですから。本来であれば9回で終わってしまうところですが、非常にタフだチームだなと思いました」

 藤田直毅監督は夏の大会を振り返り、東京の頂点に立った東海大菅生を笑顔で称えた。
 結果的にチームは準優勝と悔しい結果に終わったが、チームの戦いぶりは満足できるものだったからだ。

 そして夏の好成績は、新チームの快調な出足にも直結した。
 夏に獅子奮迅の投球を見せた速球派右腕・前野 唯斗、そして捕手としてバラティーに富んだ投手陣をリードした野沢 京平のバッテリーが残ったことで、高いゲームメイク力がチームの土台となったのだ。

 「野球の王道として、やはりバッテリー中心のチームだと安定した戦いができます。
 前野、野沢のバッテリーがちゃんとしてくれてるところで、比較的チームは出来上がっているのかなという印象を持っています」(藤田監督)



福岡元翔主将

 1つ心配の種だったのは「主将選び」だった。
 今年は御多分に洩れず、佼成学園も春先からの3ヶ月以上を活動休止を余儀なくされた。新チームの主将を見極める期間も少なく、夏の大会も3年生中心にチームを構成。

 そこで藤田監督はこれまでにない試みとして、選手間で主将を決めさせたのだ。

 「いつもは自分で決めていましたが、長く1、2年生と会っていなかったので。
 その中で主将に決まった福岡 元翔も意外な選出で、僕の中で別の選手かなと思っていました。ですが、それも大事なことだなと思って任せてみることにしたんです。
 むしろみんなに聞いたことが功を奏して、新たな人材を発掘できたと捉えています」

 福岡主将のキャプテンシーを、藤田監督は「バランスの良い主将」と表現する。
 自分一人で頑張ろうとするのではなく、選手全員で考えながら一個ずつチームを進めていこうとする姿勢が見えるという。

 安定したバッテリーに、意外な選出から始まった信頼できるリーダー。
こうして佼成学園の新チームは、順調な滑り出しを見せた。

勝ち上がっていけた経験をプラスに

エースの前野唯斗投手

 福岡主将は、新チーム結成時の状況を「誰でもキャプテンになってもおかしくない状況だった」と振り返る。
 自律した選手たちも多く、精神的に大人な雰囲気があるのに加えて、西東京大会決勝まで進んだ前チームの良さをしっかりと受け継いでいることが大きな要因だ。

 藤田監督は「負けを経験したことよりも、勝ち上がっていけたチーム作りの良さを踏襲しているように感じていて、そこにプラスアルファで秋も頂点を目指そうという雰囲気があります」と語っており、また福岡主将も「夏は強豪校が相手でも関係ないぞと、みんなが強気でいける雰囲気がありました。勝ち上がっていけたことは、今のチームにも自信になっています」と話すなど、チーム状況の良さを感じさせる。

 鍵を握るのは、夏のマウンドを経験したエースの前野 唯斗だ。
 国士舘との準決勝では141キロを記録し、現段階でも都内では屈指の右腕と呼べるだろう。

 前野は夏の成績に胡坐をかくこと無く、経験を活かす思いで秋季大会に臨んでいきたいと意気込みを語る。

 「夏に2試合に先発して、完投できたことは大きな自信になり、また先輩たちの強気なピッチングを自分もできるようにしたいと思っています。
 まずは秋季大会をしっかり勝って、佼成学園の名を全国に轟かせたいと思います」



佼成学園の練習

 また佼成学園の選手たちは、長く決勝の壁を破ることが出来ていないことを強く意識している。
 10年間だけでも、2011年春、2012年夏、2015年春、2017年秋、そして2020年夏と東京都大会で5度も決勝戦で涙を呑んでいる。

 福岡主将は、この秋こそは決勝の壁を打ち破り、秋の東京都を制したいと強い思いを口にする。

 「佼成学園はもう何度も決勝戦で負けていて、何が足りないのかをみんな必死に考えています。今度こそ決勝で勝って優勝して、甲子園に行きたいと思います」

 一次予選では、初戦で1年生で4番に座る重藤 琳太郎(八幡南ボーイズ出身)に本塁打が飛び出し、また代表決定戦でも1番・一瀬 和生(川口シニア出身)と3番・三井 虎太朗(調布リトルシニア出身)の2年生にも本塁打が飛び出すなど、打線は好調をキープ。
 また投手陣もここまで失点を許しておらず、チームの状態は非常に良い。

 積年の悔しさを晴らす、躍進の秋となるか注目だ。

(記事=栗崎 祐太朗)


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