千葉県といえば、勢力図の入れ替えが激しい県である。そんな中、木更津総合、専大松戸などの常連に続いて安定した実績を残しているのが千葉学芸だ。

 千葉県北東部の東金市に所在する千葉学芸は2000年に男女共学となった。野球部がスタートしてからも、目立った実績がなかった。しかし転機となったのが2017年だった。三重で監督、千葉黎明でコーチを務めた高倉伸介監督が就任。2017年秋には県大会で専大松戸に逆転勝利。2019年春、ベスト8。そして2019年夏秋はベスト16、2020年夏、秋とベスト8入りを果たし、県内上位常連となった。果たしてその躍進の要因はどこにあるのか。

最初は驚きの連続

高倉監督の話を聞く選手たち(千葉学芸)

 「最初は驚くことばかりでしたね。いろんな学校で監督、コーチを務めさせていただきましたが、初めての光景ばかりでした」

 高倉監督は三重県出身。元巨人の高橋 由伸(桐蔭学園出身)、元中日の川上 憲伸(徳島商出身)と同世代で、三重高、名城大では投手として活躍。現役時代から指導者を志していた高倉監督は母校・三重高のコーチ、監督などを務め、皇學館でバトミントン部を指導。未経験ながら、インターハイに導いた実績を評価され、千葉黎明でコーチを務め、関東大会出場に貢献した。そうした実績を評価され、2017年に千葉学芸の監督就任が決まったのだ。

 高倉監督は三重県時代、強豪校の指導だけではなく、県立高の勤務もあり、少人数のチームを率いた経験や、他競技での指導経験もある。ただ、優れた指導実績だけで高校野球は勝てるほど甘くない。驚くほど野球に対して情熱がない高校生を指導しなければならない時がある。それが千葉学芸だった。

 「ある日、ここ(学芸グラウンド)で練習試合があったんですが、変則ダブルヘッダーで、うちの選手たちが2試合目の空き時間があったのですが、その時、彼らはウエートルームの2階にベランダがあるのですが、そこで日向ぼっこして休んでいるんですよね。野球に対する準備をするわけではないので、かなり時間をかけて話をしていきましたね」
 部員14人のスタートだったが、やる気さえあれば向上はできる。しかし千葉学芸はそれ以前の問題だった。

 千葉学芸はずっと弱かったチームだったわけではなく、2010年夏にベスト16入りするなど、県大会でもベスト32〜16に入ることもたびたびあった。しかし、近年は初戦敗退が続き、低迷が続いていた。高倉監督が赴任する前の秋も、敗者復活戦の代表決定戦までいっている。強豪校と呼べるものではないが、全く弱いわけではない。野球に対して、真剣さが失われていたのだ。だからこその行動だったのだろう。
 そこから高倉監督は生活面の指導に入った。まず社会に送り出せるよう、生活面について完璧にできるように行った。
 「指導者が『まあいいか』で適当に済ませてしまうと、問題が後々に起こる。そこに乱れがあればかなり叱ったと思いますし、長い時間をかけて指導したと思います」

 そうして、少しずつ上向き、秋の県大会は見事に専大松戸に逆転勝利をおさめ、初戦突破を決めた。この1勝がのちの躍進のきっかけとなった。

 2018年4月、高倉監督がリクルーティングをしてきた今の高校3年生たちが入学。プロ志望を提出した146キロ右腕・小芝 永久、捕手・斎藤 直樹など23名が入部。2018年は夏初戦敗退、秋も初戦敗退となったが、この冬の間にしっかりと実力をつけ、2019年春には拓大紅陵にコールド勝ちするなど、ベスト8入り。また有薗 直輝、板倉 颯汰など実力のある選手が入るようになり、夏、秋はベスト16。この夏、秋はベスト8と、着実にステップアップをしている。

なぜ千葉学芸には部員が集まるのか

シートノックを受ける選手たち(千葉学芸)

 こうした実績により、赴任当初の部員は14人だったが、今では3学年になると100人を超える大所帯となった。

 ただ、千葉にも同様の実績を残す学校があってもこれほど部員数が増えることはあまりない。まして千葉学芸は千葉市内の学校ではなく、電車の本数が千葉市内と比べて少ない東金市にある学校であり、グラウンドも学校から自転車で移動しないといけない。もちろん寮はあるが、千葉市、市原市の生徒は通いながら来ている。千葉市内と比べると通うには不便な千葉学芸になぜ人が集まるのか。

 まずグラウンド環境が揃っている。専用グラウンドのほかに、2面もあるサブグラウンド、ウエイトルームがある。そしてブルペンは屋根付きな上に照明もあり、夜間でも投げ込みができる。

 そして練習の雰囲気がとてもいい。強豪校となると罵声を浴びせながら選手を追い込んでいるチームがあるのも事実である。千葉学芸は決して緩いというわけではないが、過度にプレッシャーをかけるわけではなく、良いプレーがあれば、指導者も、選手もしっかりとほめたたえる。

 適度な緊張感で練習ができているのだ。この風景を見学に訪れた中学生に見せると、「雰囲気がいい」という声がほとんどだという。

 今年の主将・斎藤 聖弥もその雰囲気に惹かれ、入学した1人だ。よく、中学3年生に感じた印象で気に入って、入学してみたら、実際は違ったと感じ、入学時に描いていたギャップに苦しむという話を聞く。

 斎藤の場合、中学3年生の時に感じた印象は、実際に入学しても変わらなかった。

 それに付け加えて、近年の躍進の成果もあり、県外の生徒が今まで以上に多くなっているという。高校野球においてリクルート活動が注目をされているが、中学生が千葉学芸に行きたいと思わせる環境づくりをしたことが、今の躍進を下支えしているのであろう。

 今回はここまで。後編では秋の勝ち上がりを振り返っていきながら、強さの秘密に迫っていく。

(記事=河嶋 宗一)



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