千葉県といえば、勢力図の入れ替えが激しい県である。そんな中、木更津総合、専大松戸などの常連に続いて安定した実績を残しているのが千葉学芸だ。

 千葉県北東部の東金市に所在する千葉学芸は2000年に男女共学となった。野球部がスタートしてからも、目立った実績がなかった。しかし転機となったのが2017年だった。三重で監督、千葉黎明でコーチを務めた高倉伸介監督が就任。2017年秋には県大会で専大松戸に逆転勝利。2019年春、ベスト8。そして2019年夏秋はベスト16、2020年夏、秋とベスト8入りを果たし、県内上位常連となった。果たしてその躍進の要因はどこにあるのか。今回は、後編をお届けする。

タレント力の高さに頼らないチーム作り

板倉颯汰(千葉学芸)

 今年の千葉学芸は高校通算41本塁打でさらに最速143キロを投げ込む二刀流・有薗 直輝が注目される。しかし今年はそういったタレント力の高さに頼ったチームではない。

 この秋の県大会4試合では43イニングを守り、4失策。心身のタフさが求められる延長16回もあった専大松戸戦があったことを考慮すると、非常に素晴らしい数値だ。

実際に勝ち上がりを見ても、
1回戦 4ー3 東海大市原望洋
2回戦 3ー2 日大習志野
3回戦 5ー2 木更津
準々決勝 6ー7 専大松戸(延長16回)

 実際に県大会の試合運びを見ても、実に守備が堅かった。特に無失策で終えた東海大市原望洋戦を振り返ると、パワー自慢の東海大市原望洋の各打者が放つ鋭い打球に対し、しっかりと対応ができていた。

 その守備の秘密はどこにあるのか?
 練習を見てみると、実に基本忠実だ。キャッチボールを見ても、スローイング、捕球姿を見ても、実に正確で、素早い。さらにボール回しに入ると、ノーミスでさらに素早く周回をしている。高校生でこれほどミスなくできるチームはそうはない。

 高倉監督によると、千葉学芸の練習を視察した野球関係者から「キャッチボールや、ボール回しを見ても、基本がしっかりとしている」と高い評価を受けているようだ。

 そしてシートノックに入ると、内野手が実に軽快に打球を飛ばす。守備の要である二塁を守る齋藤 聖弥、遊撃・鈴木 結翔だけではなく、三塁に回った有薗も軽快な守備を見せる。内野守備に関しては高倉監督も高評価するように、高校生レベルでは高レベルの守備を築いていた。

 こうした高い守備力を築いているのはシートノックの雰囲気にある。練習の雰囲気を見るととどことなく楽しそうだ。良いプレーがあれば、「ナイスプレー!」という声が飛ぶ。これは高倉監督が大事にしているという。
「守備ってプレッシャーがかかるし、苦しいものだと思うんです。気持ちだけでも楽しくやったほうが上達するかなと思ったんです。打撃も極めるのに楽しいという声があるように、守備もそういう考えがあってもいい」

ステップアップの鍵は「連携」と「状況判断」

最初に話し合う選手たち(千葉学芸)

 そういう考えにいたったのは常葉菊川との練習試合だ。

「当時、私が三重にいて、甲子園で活躍している時の常葉菊川さんと練習試合をさせていただいたのですが、その時、ノッカーも、選手も楽しくやっている雰囲気があったんですよね。これだと思いましたね」
 キャッチボールなど基本というものは大事に行い、シートノックでも真剣さの中に楽しめる雰囲気を作った。
さらなるステップアップへ向けての課題は連携や状況判断だ。準々決勝の専大松戸との試合で判断ミスで勝敗に響いたことが今年のチームの反省点となった。

 「やはり走塁のミスですね。これが大きかったと思いますね。もちろん打撃、ノックも大事。ケースを想定して、それに応じた守り、走塁。様々な取り組みとして、チームの課題として取り組んでいます」

 外野手が入り、中継プレーが入ると、これまでのノックの雰囲気が一変。少しの判断ミスも高倉監督は見逃さず、なぜそのプレーをしてしまったのかを説明し、どのようにすればいいか解決策も説明をしていく。それを選手自身がインプットし、監督の指示がなくても円滑に中継プレーができるように行う。

 この日はシートノックのほかに、マシン相手のシート打撃は走者付きで行い、中継プレーの練習を繰り返し、さらに挟殺プレーの練習も行い、守備の精度をさらに高めている。

 専大松戸に敗れて、一層の投打の底上げをしている千葉学芸。足の怪我により投手として調整不足だった有薗は大会後の練習試合でも好投を見せ、140キロ台も計測。取材日に投球練習を見たが、変化球の精度も高く、投打で大暴れが期待できる内容だった。

 そして斎藤主将はこう意気込んだ。
 「今回の接戦になると負けてしまうということがあったので、自分たちは上に行かないといけないので、打撃面、守備面を上でやっていける力をつけていきたいと思います」

 

 2020年夏は市立船橋、2020年秋は専大松戸と名のあるチームと対戦することがいろいろな課題が見えた。2021年以降も県内上位をキープし、そして初の甲子園出場を勝ち取るために、この冬は勝負の季節となる。

(記事=河嶋 宗一)



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