今年、秋季近畿大会出場を決めた東播磨。東播磨の野球といえば、相手のスキをつく高度な走塁だ。その走塁を指導しているのが、福村順一監督だ。加古川北時代は2008年夏、2011年春に二度出場を導いた名指導者だ。近畿大会出場するまでどんな構想を掲げてチームを作り上げていたのか。

始動は遅くてもセンターラインは例年より固まっていた

福村順一監督(東播磨)

 今年は多くのチームがこの夏、3年生主体で臨んだが、それは東播磨も例外ではなく、今年の1,2年生たちはほとんど公式戦を経験していない。ただ福村監督は「独自大会の開催が決まった時点で、今の1,2年生たちだけでチーム作りをする準備を進めていました」と語るように、遅れを取り戻すために別働隊で動いていた。

 もちろんスタートが遅いことは影響があった。まず支部予選初戦では実力校・小野に2対4で敗退。敗者復活戦に回ったが、2連勝して県大会出場を決めた。福村監督は「まだ新チームがスタートして間もない頃でしたので、勝負の厳しさ、プレッシャーがかかった場面を経験したことがない選手たちばかり。逆に2試合公式戦を経験できて、良かったと思っています」と敗者復活戦を経験できたことを前向きに捉えていた。

 今では近畿大会出場を決め、市立和歌山相手にも接戦を演じ、一目を置かれる存在となった東播磨。しかし新チーム当初は「一生懸命やる子なんですけど、まだ野球を理解できていないんです」と厳しく評価をしていた。

 経験不足な面が課題であることを理解しながらも、秋季大会である程度戦えるチームになるためにセンターラインを中心に戦力を固めてきた。

 まず中学時代、2.3番手だったエースの鈴木 悠仁は入学から球速を大きく伸ばし、140キロ近い速球を投げ込む本格派右腕へ成長。そしてリードする正捕手・田中 慎二も福村監督が認めるほどの急成長。そして1年生の高山 隼は福村監督や、野球関係者も高く評価する守備力が誇るショートストップとして台頭。もともと遊撃手だった主将の原 政宗がセカンドに回った。原はセカンドとして強肩の選手で、福村監督は「併殺がとりやすくなりました」と、守備面でも手応えを掴み、夏休みの練習試合では智辯学園相手に勝利を収めるなど、一定の成果は収めた。

 そして主将の原は走攻守の中心で、野球を一番理解できている選手だと評価する。先輩やコーチによると、主将タイプではなかったようだが、今では誰もが頼りにする主将へ成長。実際に話をしていても頭の良さが分かり、しっかりと主張ができる選手。インテリジェンスが問われる東播磨の野球にはふさわしい主将だ。

 大会前、福村監督の構想の中では、秋季県大会を勝ち抜き、近畿大会に出場して、近畿大会ベスト4以上に入ってセンバツを目指すというものではなく、緊張感のある県大会を何試合か経験して、ベスト8までいければ、来春、来夏につながるという考えだった。

 これは謙遜ではなく、中学の強豪チームの主力が軒並み私学や甲子園常連校へ行くのに対し、東播磨は地元の中学軟式が中心。そういったチームに勝てるには、長い時間が必要だと冷静に捉えていた。

 取材日は8月31日(月)。通常だと部活動は休みの予定だったが、「しっかりと練習をすれば、ベスト16以上は狙えるチームでしたので、大会の2週間前の過ごし方が本当に大事です。なので、他部活が休みのときに練習をしようと思いました」。休みの日を変えて練習を行った。

 グラウンドは常に全面を使えるわけではなく、普段は陸上部、ソフトボール部、サッカー部と他部活が兼用。さらに強豪校のように照明器具もなし。冬場になると17時前には暗くなり、19時には完全下校をしないといけない。そのため、アップの時間を長く取れないため、選手たちはグラウンドまでダッシュをするなど、選手自らしっかりと練習に入るための工夫を行っている。

 公立校にありがちな制約の中、質の高い練習ができるために練習スケジュールを組んでいた。

野球脳を鍛える東播磨の走塁練習

走塁練習の様子

 グラウンドを全面に使える日こそ、機動力を生かした「ヒガハリ野球」を注入する日である。キャッチボール、フリー打撃などの基礎練習を終えると、実戦練習に入る。ケース練習ではセーフティバントをしたり、エンドラン、バスターなどいろいろな攻撃を絡め、ここでは守備、走塁の判断を磨く。

 選手の判断ミス、中継プレーのミスがあれば、すぐに練習を止めて、ネット裏から練習を見守る福村監督の指導が入る。機動力野球というと、走塁だけの指導だと思ってしまうが、守備に対する指導も細かい。遊撃手、二塁手はその場面に応じてどう動けばいいのか。何を想定して動けばいいのか。実に細かい。プロ志望の宮本一輝は「この3年間で鍛えられたのは野球脳の部分です」と語るように、福村監督が選手に指導する話を聞くと、野球はこんなに考えて動かないといけないのかと実感する。

 この練習の中で、福村監督が「生きた教材」と評価するプロ志望の宮本は抜群の走塁を見せる。スピードだけではなく、最後まで相手野手のボールに目を離さず、先の塁を伺っている。原政宗主将は宮本選手の存在はとても大きいと語る。

 「宮本さんが現役の時は、1人いることで、チームの雰囲気がすごく変わる先輩で、福村先生は多く指摘していただけるのですが、宮本さんはそれをプレーで体現してくれるので、僕たちにとっては非常に大きいです」そして大会前、原主将はこう意気込みを語っていた。

 「機動力が身上とする「ヒガハリ野球」を見せていきたいです。そしてセンバツに出場して1勝を上げる。その目標を達成するために、1日1日をどう過ごすのかを考えることが大事で、いずれは夏にもつながると思います」

 この秋は自慢の野球を十分に発揮した。県大会では市立尼崎、育英といった実力校を次々と下し、準優勝。近畿大会では市立和歌山相手に1対2と大接戦を演じ、前評判通りの戦いを見せた。

 そして11月、東播磨は制約のある環境の中で近畿大会出場したことが評価され、兵庫県の21世紀枠の推薦校として選出されることとなった。近畿地区の推薦校に選ばれるかは12月11日に決まる。

 どんな結果にしても、東播磨は来年、今まで以上に注目を浴びるチームであることは間違いないだろう。

(記事=河嶋 宗一)



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