桑田真澄氏の巨人コーチ入閣により、著名人の間で量か質かの議論が多くなされている。あまり語れないが、現代の高校野球は強豪校はかなり練習のドリル化を図っている。

 かつては肉体的にも、精神的にも高負荷の長時間練習が当たり前だった。いわゆる絶対的な量の多さが第一だった。もちろん必要最低限の量をこなすべきだが、練習というのはその選手、チームの習慣や骨格を作っていくもの。その中に間違った方向性や心身にダメージを与えるものであれば、量が多ければ、損傷が大きい。

 桑田氏のような理知的な方は、目先のことではなく、その先を見据えてベターな行動、練習ができる先見性があったからこそ結果を残し、練習内容も見直されていった。

 強豪校はどういう練習をドリル化しているか。

天理が実践する捕球練習

 6人1組になって4か所に分かれてのボール回し。塁間の半分程度の距離をとって、正面にいる相手にボールを投げると、そこから二遊間の併殺プレーと同じ動きで隣にいる相手に足を使いながらトス。また3人1組での捕球練習もある。長い時間をかけるのではなく、1セット10球とそれほど多くない。

 元プロの中村良二監督は「惰性でやることは意味がないです。でしたら、短い時間で少ない回数でも効率よくやろう」と少ない数でも意識してやることにこだわっている。

大阪桐蔭が行うキャッチボール・ボール回し

 これはオフ期間で行われた練習メニューで、短い距離でのキャッチボールは3種類行っていた。まず半身体型から股関節を動かすことを意識したキャッチボール。続いて、アンダースロー気味のスローイングで体幹部を意識し、さらに正座の体勢から投げるキャッチボール。ただ腕だけの意識では投げられない。体幹部分を意識してコントロールよく投げる意識が見られる。

 さらにボール回しも工夫が凝られていた。

 ランダンプレーが織り交ぜたボール回しがある。ただのランニングスローではなく、たとえば、ホーム側がいる選手は一塁を向かう途中で、一塁から二塁へ向かう途中の選手へ投げる。

 二塁へ向かう選手は後方からボールを受け取るため、胸元に投げないといけない。

 これは時計回りだけではなく、反時計回りを行う。取材日の練習ではノーエラーを30本を行っていた。そして短い距離のボール回しを行う。半身の態勢から素早く投げる。

興南の超効率的投内連携


 沖縄県勢、初の夏の甲子園優勝をもたらした興南の練習も工夫を凝らしていた。それは投手のフィールディング練習だ。最近、投手の球速アップ、変化球のレベルアップは超一流投手や、研究者によって科学的にレベルアップできる方法が確立されつつある。しかし投手の仕事は投げるだけでははなく、クイック、フィールディング、牽制、多岐に渡る。こういったフィールディングをかなりプロの世界では重要視をされている。もし同レベルの投手がいれば、フィールディングがしっかりしている投手は生き残りやすい。

 そんな興南の練習法はどういうものなのかを説明すると、通常は転がった打球に対して、一塁、二塁、三塁へと投げていくが、興南の場合、マウンド上に投手が3人集まり、ホーム、二塁ベース、三塁ベースに立った選手がボールを転がし、通常の投内連携のように打球を処理する。

 たとえば二塁ベース方向に向かってダッシュした選手が打球を処理した場合、通常ならば三塁へ投げる動きが一塁ベースへ投げることになる。

 さらにマウンド上に4人集まって、勢いが弱い打球に対して捕球し、そのままベース方向に向かってグラブトス。これはスクイズ処理の練習だ。さらにベースカバーの練習も同時に3人行う。これなら限られた短い時間でも中身の濃い練習となる。

 投手の守備力が高ければ、自分の身を助けることになる。非常に大事な練習だ。

(記事:河嶋 宗一)

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