智辯和歌山の優勝で沸いた第103回甲子園。非常にキャラが立った投手といえば、近江の2年生右腕・山田 陽翔の名前が浮かぶ。馬力の強さを生かした投球フォームから繰り出す最速146キロのストレートと、切れ味鋭いフォークを武器に、大会5試合すべて登板し30回を投げ、31三振を奪った。打席では本塁打を放ち、投打に躍動した。そんなニュースターの大会を振り返る。

気迫溢れるマウンド捌きで幾度のピンチをくぐり抜ける

山田 陽翔(近江)

 「あの場面での熱投といいますか、気迫が凄まじかったです。2年生とは思えない。3年生に勝るとも劣らない投球でした」

 準決勝、智辯和歌山戦の5回一死満塁を0点に抑えた2年生右腕の魂を込めた投球に、近江・多賀監督は心を震わせ、感動していた。

 幾度のピンチを強気のマウンド捌きでくぐり抜け、雄叫びを上げながらベンチに戻る姿は勇ましかった。

 山田の強気が、勝利を呼び込んだ試合といえば、2回戦の大阪桐蔭戦が挙げられる。

 大阪桐蔭は、初戦の東海大菅生戦では3本のホームランを放ち、前評判通りの実力を発揮。そんな打線を前にすれば、並の投手なら気持ちが怯んでしまうところだろう。 

 しかし、山田は違った。

 2回までに4点を先行されても、恐れることなくインコースを突き、大阪桐蔭のバットからは鈍い音の方が多くなっていった。

 続く3回戦の強打・盛岡大附戦でも同じだ。どんどん内角をついた。ファウルゾーンに大飛球が何度も飛んだが逃げなかった。「島瀧さんのミットに投げれば大丈夫だ」と気持ちを強くもって投手有利にカウントを整えて、10奪三振を記録した。

 山田も「懐を突いていかないと、強打者相手に力勝負では通じませんので、甲子園を通じて攻める気持ちが大事なことを学びました」と恐れることなく投げきることの重要さを実感していた。

最上級生になる秋。人間としても成長し、世代を引っ張る存在へ

山田 陽翔(近江)

 打っても山田は凄かった。

 準々決勝の神戸国際大附戦でホームランを放った。「あの一本は大きかった」と多賀監督も勝負の決め手に挙げた。3番もしくは4番に座り、バッティングでも貢献した。

 準決勝でも、敗れはしたがチーム唯一の打線を挙げ「あの一打で『よし、いける』と思わせてくれました」と多賀監督も振り返っていた。

 この大会、何度も勝負どころで山田は最高のパフォーマンスを見せ続けてきた。その原動力の裏には、ある「思い」があった。

 「2年生で試合に出させてもらっているというのもありますが、近江、そして滋賀代表として皆さんの思いを背負ってやらないといけないと思っているので、強い気持ちでいられますし、普段から実践を意識しているからベストを発揮できると思います」

 2021年の夏の甲子園の顔となった山田。2022年の高校野球を引っ張る存在として、一躍注目を集められる存在になったと同時に、警戒される存在にもなる。

 山田に対して「引っ張らないといけない立場に変わりますので、野球以外の面で、人間として成長できるかが大事だと思います」と多賀監督はあえて普段の生活から高い意識を持つことの重要性を説いた。

 山田もその点については、多賀監督と思いは同じだ。

 「(主将の)春山さんからも『当たり前のことを当たり前のようにやるように』とずっと言われていました。だから自分から率先して面倒なことにも取り組んで、周りに行動で示していけば、チームも絶対に良くなると思うので、取り組んでいきたいと思います」

 この夏、1球1球に気持ちを込めて投げた山田の546球。初戦の降雨ノーゲームも入れたこの球数は、多くの野球ファンの心に届いたはずだ。激戦区・近畿を勝ち抜き、「大人になった」山田が、再び甲子園のマウンドで雄たけびを上げる姿を見たい。

(記事:編集部)