全国屈指の名門として名高い天理(奈良)。昨秋の近畿大会でも4強入りを果たし、3年連続のセンバツ出場をほぼ手中に収めた。25年ぶりのセンバツ頂点への挑戦。今回はチームの昨年秋の大会を振り返る。

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奈良県3位からの「反撃」

戸井 零士

 日本ハムからドラフト1位指名された達 孝太投手(3年)が抜けて始まった新チームだが、南澤 佑音投手(2年)が新エースとして台頭。打線も甲子園経験者の戸井 零士内野手(2年)と内藤 大翔内野手(2年)を中心に活発だ。

 昨年はセンバツで4強入りを果たすも、夏は奈良大会準決勝で敗退。新チームの主将は1、2年生の投票で決められることになっており、今年のチームは戸井が自身の票も含めて満票を獲得した。

 副主将は投手、捕手を含めた内野手、外野手から主将がそれぞれ1人ずつ選ぶことになっており、戸井は南澤、藤森 康淳内野手(2年)、大城 志琉外野手(2年)を指名。彼らを中心に新チームがスタートした。

 センバツに出場した過去2年と比べて、「力は一番ないですけど、まとまりは同じくらいあると思います」と中村 良二監督は話す。そのまとまりを生み出しているのが、ほかでもなく主将の戸井だ。「自分の背中を見せながらやれるタイプのキャプテン」と指揮官が評する戸井は、下林 源太内野手(現・天理大)、内山 陽斗外野手(3年=法政大進学予定)といった過去2年の主将と同じように背中で引っ張れる存在。近年の好成績は主将の力によるところもかなり大きいようだ。

 しかし、秋の奈良大会は苦戦を強いられる。準決勝の高田商戦で南澤が打ち込まれ、9対13で敗戦。3位決定戦で奈良北に7対3で勝利してどうにか近畿大会の切符を掴んだが、課題の残る結果となった。

 県大会3位から近畿大会を勝ち上がったのは2年前と同じ。高校生は短期間で大きく成長するが、中でも一気に飛躍を遂げたのが南澤だ。元々はスリークォーターで投げていたが、達への憧れもあり、高校に入ってからはオーバースローに転向していた。しかし、球に強さがなく、変化球のストライク率も悪かった。それを露呈する試合となったのが、敗れた高田商戦だったのだ。

フォーム大改造が成功

南澤 佑音

 この敗戦を機に中村監督は、南澤にスリークォーターへの再転向を提案した。「何か変えないといけないと思ったので、思い切って覚悟を決めて変えました」と南澤も素直に受け入れた。

 すると、近畿大会では1回戦の滋賀学園(滋賀)戦で10回2失点、準々決勝の市立和歌山(和歌山)戦は9回1失点でそれぞれ完投。高田商戦とは見違えるような好投でチームを4強入りに導いた。

「ストレートも良かったし、バッティングカウントでスライダーやカーブで簡単にストライクを取れるんですよ」と中村監督はスリークォーター転向後の南澤について語る。エースが本来の投球を取り戻したことで守りが落ち着き、投打のかみ合った試合を展開することができるようになった。

 準決勝では大阪桐蔭(大阪)と対戦。全国屈指のチームを相手に力試しという位置付けで挑んだが、1対9で7回コールド負けを喫した。打線は先発の前田 悠伍投手(1年)に対して9安打を放ったが、要所を抑えられ、逆に守りでは12安打で9失点と効率良く得点されてしまった。

「前田君から、そこそこチャンスは作りましたけど、ここぞの一本を出させてくれなかった。大阪桐蔭さんは試合巧者というか、チャンスを作ったらことごとく点に絡めたんですよね。それで点差の開いた試合になったんじゃないかなと僕は分析しています」

 11月20、21日には香川県での招待試合に参加した。秋の香川大会で4強入りしたチームと2日間で4試合を戦い、4戦全勝。「しっかり力試しに行って、4勝して帰ってこられた。それが凄く彼らの中では自信になったと思うんですよね」と中村監督は選手たちの成長ぶりに手応えを感じていた。

 後編ではこの冬の取り組みを紹介する。


(取材=馬場 遼)