第104回全国高校野球選手権(6日開幕、甲子園)の出場49校が決まり、8月3日に抽選会が開催される。

 今回は甲子園優勝を狙える学校について紹介したい。

大阪桐蔭の凄さは役割が明確であること

歓喜の輪を作る大阪桐蔭ナイン 東京スポーツ/アフロ

 今大会、圧倒的に前評判が高いのは大阪桐蔭だ。大阪大会では54得点、1失点と圧倒的な勝ち上がりを見せた。

 能力的にいえば、歴代最強クラスといえばそうではない。昨年のほうが脚力が高い選手や、肩が強い選手、長打力が優れた選手などスケールが大きい選手が揃っていた。

 ただ、試合運びはダントツでうまい。特に2巡目になってから攻撃力がアップする。ドラフト候補・松尾 汐恩捕手(3年)、海老根 優大外野手(3年)が注目されるが、4番・丸山 一喜内野手(3年)のように「引っ張りたい気持ちはあるけれど、チームのために逆方向などを心がけています」と語るように、相手投手が嫌がるような打撃を心がけている点が強さの秘密のようだ。

 松尾自身も「2巡目でつかまえるつもりでいければと、それぞれ打席が終わった後に投手の情報を伝えて、2打席目以降に心がけています」と語るように、チーム内でどう勝つのかを徹底していて、決して独りよがりの打撃になっていない。スラッガーの松尾ですら、振り回すだけではなく、右方向への打撃や、相手のスキをついた走塁もできる。

 それぞれの選手たちの役割が明確になっている。近畿大会から今年のチームを見てきているが、無駄なイニングや、無駄な打席が本当に少ない。

 投手陣の安定感は歴代最強クラスだと思う。去年は能力は高いが、何かハラハラ感があった。落ち着いた試合運びができる点で昨年と比べても全く違う。長身右腕の 川原 嗣貴投手(3年)、150キロ右腕・別所 孝亮投手 (3年)、148キロ左腕・前田 悠伍投手(2年)の強力3人だけでない。大阪大会で登板した本格派右腕・南 恒誠投手(2年)は角度のある速球、シンカーが素晴らしい。ストライク先行の投球ができる左の技巧派左腕・小林 丈太投手(3年)もいるなど、バラエティーに富んだ投手陣の構成となっている。

 このように戦力や戦い方を整理すると、優勝候補に挙がるのは十分理解できる。

 では、どんな学校が大阪桐蔭を破り、優勝できる実力を持っているのか?それを考えていきたい。

大阪桐蔭の敗戦パターンから対抗できる8チームは?

古川翼(仙台育英)、武元一輝(智辯和歌山)、森下瑠大(京都国際)

 近年の大阪桐蔭の公式戦敗退を振り返る。

21年センバツ 智辯学園(奈良) 6対8
21年夏甲子園 近江(滋賀) 4対6
22年春近畿大会 智辯和歌山 2対3

 相手チームはいずれも継投策を行っている。さらに最後に投げた投手が、速球を武器としたクローザー役を務めている点が挙げられる。

 センバツの智辯学園戦では大阪桐蔭が追い上げムードの中、小畠 一心投手(現立教大)が抑え、近江も岩佐 直哉投手(現龍谷大)、智辯和歌山も速球派右腕の武元 一輝投手(3年)が抑えている。

 大阪桐蔭を倒すには僅差に持ち込めるほどの複数投手陣を擁し、後半にセットアッパー系の速球投手がいるチームが、戦える条件になると考える。

 その条件に当てはめてみると、以下の7校が有力になると考える。

智辯和歌山(和歌山)
京都国際(京都)
仙台育英(宮城)
下関国際(山口)
星稜(石川)
興南(沖縄)
愛工大名電(愛知)

智辯和歌山

 144キロ右腕の塩路柊希投手(3年)と、149キロ右腕・武元 一輝投手(3年)のほか、長身右腕の西野 宙投手(3年)、145キロ右腕の清水 風太投手(2年)を擁し、ハイレベルな布陣となっている。速球投手揃いの布陣だけに、どうバリエーションをもたせるかが課題となりそうだ。打線も強力で、速球投手への対応力も高く、戦力は全国トップクラスだ。

京都国際

 エースで主砲の森下 瑠大投手(3年)の復活が大きい。切れ味鋭い速球とスライダーのコンビネーションで打者を圧倒する投球は見応えがあり、打者としてもレベルの高い投手から打てる能力がある。また平野 順大投手(3年)も、伸びのある140キロ前半の速球には見応えがあり、球質の良さについては森下投手以上のものがある。春から伸びてきた森田 大翔投手(3年)をはじめ、攻守の要である辻井 心捕手(3年)も攻守で安定感があり、春先に比べるとチームも安定感がでてきて、力強い戦いもできている。

仙台育英

 投手陣の層の厚さという点では、大阪桐蔭に匹敵するものがあり、6月に取材した時は140キロ以上投げる投手が14人いるなど、スケールの大きい投手陣を形成できている。

 実績抜群の左腕・古川 翼投手(3年)を筆頭に大会前までにどの投手がベンチ入りするのか興味深い。また打線もスイングスピードが速い打者が多く、好投手からも打ち返せるほどの打力がある。

複数の好投手を擁する下関国際、愛工大名電、興南も怖い存在

山田陽翔(近江)、有馬伽久(愛工大名電)

下関国際

 下関国際は、147キロを誇る大型左腕・古賀 康誠投手(3年)、最速146キロを誇る仲井 慎投手を擁し、その実力は全国レベル。打線も強力で、攻撃力が高く、18年以来のベスト8躍進も十分にあり得る。

星稜

 今センバツベスト8の星稜は、マーガード 真偉輝 キアン投手(3年)、140キロ中盤の速球を投げ込む武内 涼太投手(2年)を中心に、投手力は充実していて、打線も巧打者揃い。上位下位切れ目ない打線が特徴だ。投打が絡んでいけば、十分に上位進出も狙える。

興南

 興南の生盛 亜勇太投手(3年)の復活が大きい。最速147キロの速球は角度があり、変化球の精度もよく、4年ぶり出場の原動力となっている。2年生左腕の平山航太投手、140キロを超える安座間 竜玖投手(3年)と投手陣の層が厚い。

 さらに、盛島 稜大捕手(3年)や、主将の禰覇 盛太郎外野手(3年)を中心とした打線も破壊力があり、走塁技術も高い選手が多く、攻撃力の高さは全国レベル。興南らしい緻密な野球を展開している。

愛工大名電

 147キロ左腕・有馬 伽久投手(3年)は威力抜群の直球を投げ込み、打力も高い。さらに本格派右腕の山田 空暉投手(3年)、中日のクローザーで活躍した岩瀬仁紀氏(野球評論家)を父に持つ岩瀬 法樹投手(3年)と、投手陣の顔ぶれが豊富だ。打線も伊藤 基佑内野手(3年)、市橋 昂士内野手(3年)の二遊間コンビもハイレベル。激戦区の愛知を勝ち抜いた実力は本物といっていい。

 例外パターンとして、山田 陽翔投手(3年)がいることで、近江を挙げたい。149キロまで伸びた速球の威力は抜群で、変化球の切れ味も増してきて、滋賀大会の伊吹戦では6回9奪三振、無失点の投球を見せた。メンタルの強さが他の投手と段違いで、大阪桐蔭相手でも1人で投げ勝ってしまうのでは?と思わせるほどの引き出しを持った投手ではないだろうか。山田以外にも、星野 世那投手(3年)の成長が著しく、継投もセンバツ時に比べて確立されてきた。攻撃力、守備力ともに進歩が見える点についても楽しみだ。大黒柱がいるので、戦い方が安定している。昨夏はベスト4、センバツでは準優勝とステップアップしており、十分に優勝を狙えるチームではないか。

 後編では、組み合わせ次第でベスト8以上を狙える学校について紹介したい。

(文=河嶋 宗一)