南 恒誠、松井 弘樹、前田 悠伍、南 陽人大阪桐蔭も取り入れた小刻みな継投策

 第53回明治神宮野球大会は、大阪桐蔭(近畿・大阪)が2連覇という形で終えた。エース前田 悠伍投手(2年)が投げた試合は、初戦と準決勝、決勝だが、決勝に関してはリリーフ登板だった。準決勝の仙台育英(東北・宮城)戦は、先制を許して打線も仁田 陽翔投手(2年)の前に苦しんだ。しかし、2番手のエース・高橋 煌稀投手(2年)を攻略して逆転。対する大阪桐蔭は前田が161球完投する真逆の投手起用が見られた。

 しかし、決勝と2回戦で、大阪桐蔭は近畿大会準決勝の龍谷大平安(京都)戦と同様に、エースの前田を先発で起用せずに戦った。

 2回戦では、先発の南 恒誠投手(2年)が4回51球を投げて、2番手の藤井 勇真投手(2年)は1回9球、3番手の松井 弘樹投手(2年)が1回14球と、1人の投手に属人的な起用をせず、100球以内に抑えて勝利した。決勝戦では、南恒が2回72球、2番手の南 陽人投手(1年)が2回37球、3番手の松井が1回16球、最後は前田が4回72球で締めた。

 まだまだ、前田に属人的な投手陣であるが、この近畿大会で投手陣の底上げはかなりされたのではないだろうか。南陽は馬力を見ても、リリーフとしての稼働力が上がれば、かなり戦力になっていくのではないだろうか。さらに、前田が投げない試合でも、他の投手がレベルの高い高校と張り合えるようになれば、盤石なチーム体制を築いていけるのではないだろうか。

 明治神宮大会では、ビハインドの展開を逆転する総合力の高さで2連覇を果たした大阪桐蔭。エースの前田に関しては、高校野球のレベルであれば、外角攻めをすれば長打は避けられるというのがセオリーであることも含めて、高校野球特有の広い外角のストライクゾーンを、めいいっぱい生かしていたように思えた。冬を越えた後のセンバツでは、2度目のセンバツ2連覇にも期待していきたいところだ。

今後はエースを先発ではなく後ろに回す継投策もトレンドに

 明治神宮大会を優勝した大阪桐蔭を見て分かるように、状況に応じてエースを先発ではなく後ろで起用する高校は増えていくだろう。大阪桐蔭の場合は、前エースの川原 嗣貴投手(3年)を後ろに回す試合も夏が近づくにつれて増えていった。センバツの決勝に関してもまさにそうだ。大阪桐蔭の場合は、上級生に最後の場面で華を持たせる傾向もあるが、これは他の高校も同じである。

 夏に準優勝を果たした下関国際(山口)の継投策は、先発と抑えの2人で勝ち上がるという戦略だった。このパターンは、2017年に清水 達也投手(現中日)と綱脇 慧投手(現NEOS)を擁して、夏制覇した花咲徳栄(埼玉)と似ている。この時の花咲徳栄はエース級の実力があった清水をリリーフとして起用。清水は試合展開によっては早い回から登板し相手の流れを断ち切ったり、終盤の抑えとして登板するなど、臨機応変な起用に応え、チームに優勝をもたらした。

 プロ野球のセットアッパーやクローザーのように、先発よりも打つことが困難な投手が後から出てくる方が、相手チームへの脅威になる。そのため、エース級の投手を後ろに持って来られるチームは、エースを先発させるチームよりも逆転負けが少なくなるというメリットもある。

 このようなオーソドックスな継投にも、デメリットはある。それは、先発の調子次第では片方の投手に負担がかかることだ。先発投手が大会を通して試合を作れないピッチングが続くと、リリーフでマウンドに上がる投手に多大な負担がかかる。2006年の駒大苫小牧がまさにそうだった。田中 将大投手(現楽天)をリリーフ待機させていた試合は、4試合あったが3試合で先制を許し、しかも4試合全てで田中が6イニング以上を投げている。後から田中が投げることによって、ピンチを抑えられることや流れを引き寄せられるが、先発とエースの力の差がはっきりとしていることや水準以上のゲームメーク力がないと、ほとんど後から投げるエース頼みになる。

 さらに、今年の明治神宮大会の仙台育英は、準優勝でエースの高橋を2番手にしたが、大阪桐蔭打線から見ると、荒削りながらも球威がある仁田の方が打ちづらさはあったのではないだろうか。さらに、3番手の田中も仁田や高橋と比較すると、球威不足が露呈した。そのため、継投のタイミングや相手との相性も見計らいながら、投げさせることも重要である。

 今後は、小刻みな継投策とエース級を後ろに回す継投策がトレンドになっていきそうだ。

(記事=ゴジキ)