2020年度を代表する剛腕・高橋 宏斗。184センチの長身から投げ込む速球は最速148キロ。ツーシーム、チェンジアップ、スライダー、カーブを武器に東海大会、明治神宮大会優勝を果たし、大きく評価を上げた。そんな高橋の歩みを中心に前編では話を聞いてきた。

 後編の今回は投球術から話を広げていき、神宮大会での戦い。そして最後に高校野球ラストイヤーへの意気込みを伺った。

前編はこちらから!
小柄な2番ショートが4年間で146キロ右腕になるまで 高橋宏斗(中京大中京)【前編】

自分の特性にあったフォーム、変化球で勝負し、飛躍につなげる

ツーシームの握りを見せる高橋宏斗(中京大中京) 

 また、2年秋の県大会から新変化球を習得した。それが現在の決め球であるツーシームである。

 高橋のツーシームはフォークのように落ちるが、実際に握りを見せてもらうと、確かに挟んでいる。挟んでいながらツーシームにしている理由とは何か。

 「まず投げるイメージとしては真っすぐと同じ腕の振りで投げることです。挟んでいるものをフォークといわない理由は、フォークというと落とさないといけない概念があるじゃないですか。ツーシームと意識することで、腕が振れますし、落ちなくても少し沈んでバットの芯を外して内野ゴロを打たせていければ、大きいと考えています」

 またストレートも縫い目を深く握って投げている。
 「自分の場合はこの握りのほうが球威もあって、勢いのあるストレートを投げられます。シュート回転はするのですが、それも逆手にとって投げています」



神宮大会で好投を見せた高橋宏斗(中京大中京)

 高橋は自分の長所も欠点も理解しながら、それを武器しながら投げている。また高橋源一郎監督は高橋の投球フォームの課題についてこう言及していた。
 「まだ打たれる試合を見ると、力んでバランスを崩し 角度がないフォームになる。しっかりと体重が乗って、腕が上から振れるときは良いボールが投げられるのですが、体重が前に乗らず、力んで横振りになると、下半身が粘れないので、指先に伝わる力が弱いですでロングを打たれる傾向があります」

 高橋の投球フォームを横から見ると、前傾がしやすくなり、角度がなくなり直線的なフォームになる。この話を高橋について話すとこう語ってくれた。
 「確かに課題ではあるのですが、自分にとって前傾する動きが最も力が伝わる動きなのかなと思っています。投球フォームについては自分の力を最大限に発揮できるフォームを模索中です」

 高橋は投球フォームの微調整を重ね、成長を見せてきた。東海大会ではバランスを崩し、防御率4点台に終わったが、明治神宮大会開幕までの2週間はもう一度投球フォームを見直し、明治神宮大会に臨んだ。

目指すは世代ナンバーワン投手

高橋宏斗(中京大中京)

 初戦の相手は巧打者揃いの明徳義塾。この日、高橋は気合が入っていた。受ける印出はボールからも伝わっていたようだ。
 「かなり気合入っていましたし、ボールも走っていたので、150キロは出るんじゃないかと自分も受けていて感じました」

 いきなりピンチを迎えたが、3番・鈴木 大照に対し、最速148キロのストレートで空振り三振を奪う。このストレートはボール球だったが、打者の手元でぐっと伸び、印出が後逸しそうほど勢いがあった。印出も「伸びもすごかったですし、思わず持っていかれそうになりました」と振り返る。

 高橋自身も「ボール球でしたし、あの試合は緊張していたんですけど、その緊張を力に変えることができてよかったです」とストレートに手ごたえを感じた高橋はこのストレートを軸に7回10奪三振完封勝利。

 馬淵史郎監督も「ストレートは松坂 大輔以上。今年対戦した投手の中では一番」と絶賛した。リードした印出も「マックスも148キロと更新しましたし、力が入っていた部分と冷静になっていた部分を使い分けできていてよかったです」と評価した。

 明治神宮大会では計3試合を投げ、15回を投げ、16奪三振、防御率1.80の好投を見せ、優勝に貢献。高橋は「神宮大会を通して成長できたと思いますし、自分のボール、スピード、質を改善する部分は見られましたので、直していきたいと思いました」



さらなる成長を目指す高橋宏斗(中京大中京)

 この大会で世代トップクラスの評価を受けた高橋。しかしこの風潮について高橋監督は気を付けていかないと伸びしろが小さくなってしまうと危惧する。
 「この2年、大きなけがもなく、体力がついてきたのも同時にボールも強くなってきました。それでもまだ体の力は弱いですし、粗さがあります。その粗さは逆に伸びしろだと思っています。だけど、周囲の評価で、このままでいいと思ってしまうと、成長が止まってしまうので、そうではないということを認識させることが大事だと思います」

 高橋も自分の実力がまだまだだと自覚している。
 「全体的にまだまだだと思っています。その中で自分の長所はストレートだと思うので、スピードガンでいうと全然出ていると思わないので、この冬から5キロ〜10キロ速くして、常時140キロ前半を後半まで速くしたいと思っています」

 最終学年には高校日本代表候補にも上がる可能性があるが、高橋はその思いを封印し、日本一を目指す。
 「もちろん目標にしていますし、選ばれたい思いはありますが、自分の実力次第なので、まずはチームが勝つためにはどうすればいいか考えたいと思います」

 1966年以来となる選抜優勝へ向けて、付け入る隙を与えない世代ナンバーワンピッチャーになるだけだ。

(取材=河嶋 宗一)

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