今年のいなべ総合には2人の注目選手がいる。まずはエースで、最速146キロを誇る本格派右腕・伊東 邑航。そして高校通算30本塁打超、スローイングタイム1.8秒台の強肩を誇る田所宗大である。179センチ85キロという恵まれた体格を生かす技術を3年間で身に着け、スーパーキャッチャ−とも言っていいスペックを持つようになった。

 田所はいなべ総合の3年間で、実力を培うことができたのか。

転機となったボーイズ選抜の試合

田所 宗大

 小学校1年生から野球を始めた田所は同時期にレスリングも行っていた。小学校高学年のチームに加入する4年生まで行っていたが、レスリングの経験は田所の運動能力を培うことができた。
 「野球の技術は直接生きたということはないのですが、運動神経、バネの強さ、ジャンプ力はそういうのは培われたと思います」

 そして中学では三重の名門・桑員(そういん)ボーイズに入団する。しかしレベルの高い選手が多く、なかなかレギュラーを掴むことができなかった。
 「3年生まで代打要員でした。3年生のときに出た全国大会の時、たまたまけが人がいて、6番レフト、6番ライトで出場することができました」

 この時、田所は強豪校に進学できる選手だとは微塵も思っていない。多くの主力選手が強豪校の進学が決まる中、焦りはあった。その時、転機となったのは三重県のボーイズ選抜に選ばれたことだった。

 選抜に選ばれ、その後に登場した公式戦をタイミングよくいなべ総合の尾崎監督がみていたのだ。尾崎監督は当時の田所のどこに惹かれたのか。
 「やはり体の強さもあって、長打力もあって、将来の4番打者候補として面白いと思いました。捕手をやっていた経験もあったので、高校では捕手だなと考えていました」

 こうして尾崎監督に声をかけられ、3年秋にいなべ総合への進学が決まった田所。嬉しい気持ちを隠せなかった。
「繰り返すように、僕は3年春まで代打要員で、強豪校で続けられる選手だとは思っていなくて、まず全国大会に出場できたこと、選抜チームに選ばれたことも嬉しくて、そこで尾崎先生に声をかけられたことは嬉しかったですね。他の選手と比べて、だいぶ遅い時期なんですけど、強豪校進学が決まって本当に嬉しかったですね」

 そしていなべ総合では外野手ではなく、小学校以来の捕手としてプレーすることとなったが、すぐにレベルの高さを実感する。高校野球の捕手はここまで求められるものが多いのかと。
 「捕手をやっていた経験はありましたけど、高校野球の基準でいえば、僕のレベルは初心者みたいなものでした。バッテリーコーチの方がいて、その方に必死についていく感じでしたね」

「確実」に捕る、投げることを意識して、2秒を切るスローイングに

田所 宗大

 田所は1年秋からベンチ入りを果たすが、今のようにクリーンナップを打っていたわけではない。
 「まずは尾崎先生から守備のことを覚えてほしいということで、打順は8番。ずっとバントばかりしていましたし、打撃練習に入っていた時間もほとんどなかったですね」

 守備重視の練習となったのは、それだけ田所に時間を投資するだけの才能を持っていたから。

 尾崎監督は大成してほしい思いで長嶋斎直バッテリーコーチに田所の育成を託した。長嶋コーチは、2016年のU-18代表に選ばれた強肩捕手・渡邉 雄太(法政大)といなべ総合の守備を支えた好捕手の育成に携わってきた。尾崎監督も「細かいところまでしっかりと指導して頂いていて、とても信頼を置いている方です」と頼りにしている。

 まず田所の代名詞である「スローイング」。2秒を切るスローイングの秘密は「正しく捕って、正しく投げる」ことがポイントだ。
 「長嶋さんから指導いただいたこととしては、フットワーク、足の運び方など技術的なことを教わったのですが、その中で一番大事な考えとして、『タイム』は気にするなということです。しっかりと捕球して、しっかりと送球して、セカンドベースに入った野手の捕りやすいところに投げることができれば、アウトにできる確率は高まるからと教わりました」

 そして田所自身が意識したのは右足の使い方だ。
 「捕球時に右足は少しでも前に出します。引いてしまうと遅くなってしまいますし、横に引いてしまうと、これもロスが出てしまうので、少しでも前に出すことを意識して投げています」

 その積み重ねをしていくと、スローイングの確実性が高まっただけではなく、タイムも速くなり、2年生になると2秒を切るようになっていた。

 こうして1年間の鍛錬で、高校生捕手でも高いレベルの技量を身に着けていた田所。そして次のステップとして、打撃強化に入る。田所が行ったのは一流打者の模倣だった。

(取材=河嶋 宗一)

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