今年のドラフト候補で伸びのストレートを投げるドラフト候補といえば豆田 泰志(浦和実)だろう。最速147キロまではドラフト候補に上がる右投手としては標準だが、豆田の場合、高確率で空振りが奪える球質の良さが高く評価をされている。夏の大会が終わり、練習を重ねる豆田の伸びのあるストレートはさらに凄みが増している。脚光を浴びた昨春の関東大会からここまでの軌跡を振り返る。

自分の名を高めた2年春の関東大会と浦和学院戦

山梨学院戦の豆田泰志(浦和実)

 昨年の春季関東大会の山梨学院戦は、一好投手から全国レベルの好投手に昇格した試合だった。

 埼玉スーパースターズから活躍を見せ、1年秋は県大会ベスト4入りに貢献。2年春の県大会準々決勝の昌平戦では7回まで無安打の投球を見せるなど、埼玉県内では実力の高さを知れ渡っていた。
 そして山梨学院戦、先発した豆田は130キロ後半の速球で次々とを空振りを奪い、山梨のデスパイネと呼ばれた野村 健太(早稲田大)から2三振を奪うなど、6回11奪三振の快投。豆田の名を知らしめた試合となった。
 「あの試合で自信がつきましたし、力は自分の中でついているんだなと思った試合でした」と振り返る豆田。伸びのある快速球は東海大相模相手にも通用し、5回3失点の力投。プロ志望届を提出した山村 崇嘉、西川 僚祐を2打数0安打に無安打に抑え、手応えも多い大会だった。関東大会で得た自信はその後の練習のモチベーションにもつながった。

 意欲的に練習に取り組み、夏にかけてさらに成長した豆田は浦和学院相手にも快投を見せる。なんと伸びのある快速球を武器に2安打完封勝利を挙げる。次々と三振を取る姿に多くの人が「吉田 輝星タイプの投手」と称した。豆田はイニングを重ねるごとに抑えられる手応えを感じていた。
 「最初は全く抑えられる手応えはなく、不安の方が大きかったです。ただ抑えることにだんだん手応えは感じました」

 

 さらなるステップアップを誓った2年秋だったが、秋準優勝の西武台に初戦敗退。この試合を振り返って豆田は「スタミナ、コントロールなどあらゆる面が課題となりました」と、冬場では走り込み、ウエイトトレーニングなど基礎的な練習を繰り返した。練習の合間、終了後には補食などを摂り、体を大きくし、体重も5キロ増量の80キロまでとなった。

 順調に体を大きくしていった豆田だが、成長の手応えを掴んだのは冬を明けてからではなく、長期自粛明けのほうが大きかったようだ。この期間、トレーニングを継続しながら、自身の投球フォームを見直した。
「バランスが悪くなっていないか、全体を見直しました。そして体全体を使えているのか、肘をしっかりと上げるなども確認していきました」

 豆田は野球を始めた時から大きくフォームを修正されたことがない。無意識に多くの投手が羨むような完成度の高いフォームをしていた。ワンセンテンス程度だが、それでも修正できる豆田には高いセンスが備わっている。

 理想的なフォームで投げられるよう土台固めを行ったことと冬場のトレーニングが実を結び、最速147キロまでに達した。もともと空振りを奪えるストレートに豆田に、球速が加われば、鬼に金棒。大きくパワーアップを遂げて、夏に臨んだ。

自分が伸びることができたのは浦和実の環境があったから

豆田泰志(浦和実)

 夏の独自大会でも快投を見せ、南部大会準決勝では内田 了介(埼玉栄)、南部地区決勝戦では美又 王寿(浦和学院)とプロ志望の投手と投げあいを演じた。
 「色々疲れました」と笑うが、それでも、「2人と比べればボールのキレでは絶対に負けない」と胸を張る。埼玉独自大会では18.1回を投げて23奪三振と真夏の中、三振が取れることをアピールにした。

 夏の大会後、美又、内田が9月5日・6日に開催される合同練習会に参加することを聞き、練習会に参加。そして登板した豆田は「調子が良かったです」と語るように最速147キロを計測したストレートを武器に5奪三振を記録。スラッガー・石川 慧亮(青藍泰斗)から三振を奪うなどアピールに大成功した。

 「自分は南部地区決勝まで進んでいないので、それほど注目はされていなかったと思います。だからこういう練習会があってよかったと思いますし、良いアピールができたと思います」と笑顔で振り返った。

 今ではNPBから指名があれば、すぐに投げられるよう、投球練習を行っている。実際に投球練習を見たが、とてつもないストレートだった。
 「投げる際に、スナップを効かせて投げるよう意識しています」と語るストレートはキャッチャーミットに突き刺さるストレートだった。こちらではドットコムチャンネルで動画を配信しているので、ぜひ見ていただきたいが、回転数が高いストレートは捕手の後ろから見ると恐怖感がある。

 ただ豆田自身は「調子は良くなくばらつきはありました」と反省。ストレートには自信を持っているものの、変化球の精度について「まだまだ全然だめです」と語るが、ストレートと同じ腕の振りで投げるスライダーも打者の手元で鋭く曲がるもので、大きな武器となっている。

 そして豆田について吉田 輝星タイプと表する声もある。それについて豆田は「とても光栄なことではありますが、自分はとても吉田さんの足元にも及ばない投手です」と謙遜する。
プロ入りが実現すれば、「これまで追求してきた『勝てる投手』を実現したいと思っています」と意気込みを語った。

 浦和実業の3年間について豆田はこう語った。
 「投手陣については、結構任せてくれて、2年生から自分で考えて練習する時間も増えてとてもよかったです」と自主性を尊重した方針が大きく成長できたと振り返る。最速147キロまで伸ばせたのも自粛明けからだ。どんな状況になっても豆田は自分で考えて練習ができる習慣があったのだろう。

 取材前、取材後も1,2年生と混じって黙々と練習を行っていた豆田。こういう姿勢があるからこそ、3年間、順調に素質を伸ばしてきたのだろう。プロでも生き抜いていける覚悟を持った投手だと直感した。

(取材=河嶋 宗一)



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