うっとりするほど美しいフォームの中学生がいる。
その噂を聞いたのは昨年12月だ。噂は次第に事実として中学野球関係者の間で認知されるようになり、実際に見たその投球フォームは別格の完成度を誇っていた。

 「中学野球では140キロを投げて、全国優勝したい」と意気込むのは、大田水門ボーイズの千葉 雄斗投手だ。身長183cm、体重78kg、バランス良い体格から投げ込む、最速136キロの直球が持ち味の千葉投手。今回は球速だけでは測れないボールの質、そして高校野球に向けた目標に迫った。

ラプソードではプロに匹敵する数値を記録

千葉雄斗(大田水門ボーイズ)

 「小学校3年までは地域の子供会の野球部に入っていて、小学校4年生から硬式野球チームの大田リトルリーグに入りました。大会でも優勝したことは無かったですし、選抜チームにも入ることもなかったです」

 小学校時代から特に大きな実績は無かったと話す千葉投手だが、中学1年時には123キロを記録するなど、才能の片鱗は見せていた。冬場のトレーニングでは体幹を重点的に鍛え、瞬間的な出力を意識したことでボールにもキレが出るようになり、また身長の伸びにも比例するように球速も伸びていった。

 現在の最速は今年2月の大田区長杯で記録した136キロだが、千葉投手の魅力は速さだけではない。ボールの回転数や回転軸、変化量など、スピードガンだけでは測れない球質を測定できるRapsodoを用いて千葉投手の投球を測定すると、驚きの計測結果が出た。

 ブルペンでの球速は129.7キロ、回転数は何と2393回転を記録。
プロ野球の投手の平均は2200回転程と言われており、トップ選手になれば2400〜2700回転を計測する。中学生だと2000回転を超える投手はなかなかいないことを考えると、千葉投手は世代でもトップクラスの投手であることがわかる。

 だが好記録にも千葉投手は「もっとコントロールを良くしないと、甘い球を打たれることが多い。内角や外角へのコントロールを高めていきたい」と冷静に現状を分析する。球質と制球力の両立こそ、千葉投手が目指すストレートなのだ。

勝利への貪欲な姿勢がまだ足りない

千葉雄斗(大田水門ボーイズ)

 また千葉投手を指導する大田水門ボーイズの日野貴透監督も、「今のままでは上で活躍することは難しい」とあえて厳しい言葉を口にする。
誰が見ても「良い」と評する千葉投手であるが、勝利に対する貪欲な姿勢や精神的な強さに日野監督は物足りなさを感じているのだ。

 「確かに千葉は良い投手です。ですが、まだチームの柱にはなれていません。
 私は勝利至上主義ではないですが、勝つことで学ぶことも多くあると思っています。勝てば嬉しいし、家族も喜びますし、次もやろうという意欲にも繋がります。ですが勝ってやろうという気持ちが、まだ千葉には少し欠けていると感じています。
 彼が本当に気持ちを出して投げれば、それはもう打たれないですよ。ここからは人間的な成長に期待したいと思っています」

 千葉投手も、自らのウィークポイントを自覚して改善へ意欲を見せている。
 日野監督から指摘される気持ちの弱さを認めた上で、今後は持ち味である直球をさらに磨いていきたいと思いを語った。

 「打たれ始めると、気持ちが小さくなってしまうところは確かにあったと思います。自信を持つことと、気持ちを外に出していこうとよく言われるので、これからは自分の持ち味であるストレートでどんどん押していきたいと思います」

 高校野球では、1年生から試合に出場して甲子園で150キロを投げることを目標に掲げる千葉投手。また最終的な目標にはプロ野球選手を掲げており、ここから更なる成長に燃えている。潜在能力は誰しもが認めるだけに、ここから圧倒的な自信をつけていきたい。

(記事=栗崎 祐太朗)