今年の大学生を代表するスラッガーとなった早稲田大・蛭間 拓哉外野手(浦和学院出身)。3年秋までに東京六大学リーグ通算10本塁打を放ち、群を抜く実績を残しているが、1年生から順調に成績を残したわけではない。いかにして強打者へ成長したのか。その過程を追っていく。



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肉体も技術も鍛えて覚醒

早稲田大・蛭間 拓哉(浦和学院出身)

 高校時代は日本代表にも選ばれ、狭き門である早稲田大の推薦合格4人に名を連ね、多大な期待をされた。1年春からリーグ戦に起用されるも苦しい打撃が続いた。

1年春 6試合 6打数0安打 打率.000
1年秋 6試合 20打数5安打 打率.250

 蛭間は改めて実力不足を痛感する。

「1年生の時は手も足も出ない状況で、悔しい思いをしました。中川など同級生が出てたり、活躍してたり、他大学でも1年生から活躍をしている選手がいたので自分の力はまだまだだなと痛感しました。

 

 逆にその経験がもっと自分を変えなければいけないと思えました。1年目は結果出なくてもしょうがないと割り切ってました。結果が出ない中でも、経験をしてその中で今できることを3、4年生で活躍できることを考えていました。そんな思いで1年生の頃は取り組んだので、いい経験ができました」

 技術的な見直しをしたことはもちろん、肉体的な強化にも励んできた。技術的な見直しについてはいろいろな指導者からアドバイスをもらい、その中から自分の形を作り上げてきた。体重は高校時代から6キロ増の87キロとなり肉体強化も成功。明らかに別人のような体型となった。その取り組みが実を結ぶのは、2年生になってからだ。2年春、秋ともに3本塁打を記録。2年秋の早慶戦は2試合連続で勝ち越し本塁打を放ち、そのうち1本は優勝を決める逆転2ランとなった。

 成績は大きく向上した。

2年春 5試合 3本塁打9打点 打率.318
2年秋 10試合 3本塁打8打点 打率.364

「1年生の時に全く打てずに、経験して2年目は少しづつ結果が出るようになって、最後打てたのですが、まだまだ技術としては全然ダメでした。実力不足でしたが、ただ打てただけかなと思っています」

蛭間がこだわる打撃ポイントとは

早稲田大・蛭間 拓哉(浦和学院出身)

 3年春も3本塁打。3年秋は苦しみながらも1本塁打を記録し、計10本塁打に到達した。もちろん、現時点のパフォーマンスについては満足していない。昨冬の練習では、ロングティーでは凄まじい打球を飛ばしていた。打撃でこだわっているのはスイング時間を短くし、最短距離でボールを捉えることだ。

「今は下半身を意識してやっていて、スイング軌道を短くなるように意識しています。大きくなってしまうと速いまっすぐに対応できなないですし、とにかくスイングを短くというのを意識した中で、短くするためにも強い打球を打つには、やはり下半身が大事になってきます。まずは下半身で打つということと、スイングを短くすることを意識してやっています」

 確かに打撃練習を見ていくと、スイングと下半身の回転が連動していた形で打てているように感じる。とにかく打球とスイングが豪快。それでありながら全く粗さがない。ここまで力強さと技術力の高さを兼ね備えたアマチュア選手はなかなかいない。

 上半身と下半身の動きの連動性について質問すると、蛭間選手も意識していた。

「それを意識して取り組んでいるので、そう言ってもらえるとありがたいです。高校の時はレベルが高くなかったですし、知識もない中でやっていました。大学では勉強したり指導してもらったおかげで、まだまだですけど、結果も残せるようになってきているので、今はいい経験ができてると思います」

 今、振り返るとU-18日本代表の時は、先に腕が動いて、次に下半身が動き、いわゆるバラバラな感じだった。これでは強い打球を打つことができない。大学3年間で世代屈指の強力打者になった努力の姿を取材日の練習で直に感じることができた。

目指すは三冠王は

早稲田大・蛭間 拓哉(浦和学院出身)

 昨年12月には大学ジャパン候補合宿に参加。参加選手トップレベルの活躍を見せた蛭間には大きな収穫があった。

「実戦から少し離れていたので、不安だったのですが、いろいろな人と会話していく中で、これ良いなとか、自分の感覚に合いそうだなというのが何個かありました。それらを自分で整理して、形にすることができ、いい感覚で打てたので良かったです」

 大学ラストイヤー。プロ志望の蛭間は今年の誓いを立てた。

「ラストシーズンということで、1日も無駄にすることはできないので、とにかく一日一日を大切に。小さい時からプロを目指してやってきたので、悔いが残らないように頑張りたいと思います。三冠王を目標にしているので、それを達成できるように頑張りたいです」

 一部では、1位候補の名前にも挙がる蛭間。早稲田大の野手では、14年の中村 奨吾(天理出身・ロッテ1位)以来、1位指名選手は出ていない。蛭間はそれが目指せる素質を持った選手である。この1年、圧倒的なパフォーマンスを示し、目標を達成できるか注目だ。

(記事:河嶋 宗一)