今年も強打と140キロ投手の存在は健在。智辯和歌山が報徳学園に競り勝ち

適時打を打つ渡部 海(智辯和歌山)

<春季近畿地区高校野球大会:智辯和歌山5−4報徳学園>◇28日◇準決勝◇紀三井寺運動公園

 試合内容的に見応えが多くあったこともあり、両チームごと掘り下げていきたい。

 名門校のレギュラーには当たり前の「基準」というのがある。あるチームのエースは必ず140キロを超える、あるチームの4番の通算本塁打は必ず2ケタを超えるなど。しかし、昨夏甲子園優勝の智辯和歌山の選手たちは全員、レベルが高い。

 野手たちは、高校生離れした筋肉隆々の体型から高速打球を放つイメージがある。今年もそんな選手が多い。

 1回表、いきなり先頭打者本塁打で1点を先制されたが、自慢の強打で逆転した。3回裏、1死一、二塁から2番・中西 陸外野手(3年)があっという間にレフトを超える適時二塁打で同点とすると、3番・渡部 海捕手(3年)が痛烈な左前適時打で勝ち越しに成功した。2人とも恐ろしく速い打球だった。

 その後、内野ゴロで1点を追加し、4回裏にも併殺崩れの間に1点を追加。6回裏には1番・山口 滉起外野手(3年)の高く打ち上げたフライがレフト前へのポテンヒットとなり1点を追加。そこまでの5安打中、ポテンヒット以外の4安打は打球が速かった。インパクトの強さが際立っているからにほかならない。

 岡西 佑弥主将(3年)は普段の打撃練習で意識していることについてこう語る。

「低く強い打球を打つことを心がけています。ヒットの延長線上がホームランの意識で打席に立つことができています」

 適時打を放った渡部も「ライナー性の打球を打つことはチームとして徹底しています。高めに浮いたストレートを標準に置いていたので、それがしっかりと打てて良かったです」と勝ち越しの場面を振り返った。

 もちろん、良いところだけではない。課題も多くあった。次の塁を狙う意識がやや低い印象を受けた。全国上位チームが持つ走塁意識や、技術、スピードに比べるとやや低い感じがあり、好走塁が生きた得点がない。また守備の連係でも細かなミスがあった。主将の岡西は「自分も守備のミスがありましたし、次の塁を狙う意識はまだ低かったと思いますし、バントなど、そこがしっかりとできれば、もっと点を取ることができました。相手の報徳学園さんはチームで点を取る。つなぎで取る意識はあったと思います」と決勝戦へ向けての課題を挙げていた。

 エース・塩路 柊希投手(3年)は右スリークォーター気味から常時140キロ〜143キロの直球を投げる。智辯和歌山のエースは140キロ以上の速球を投げるという毎年の流れを受け継いでいるといえる。スライダーの切れ味も鋭く、高めに伸びる直球もある。さすが名門校のエースと思わせたが、8回を投げて、124球、8奪三振、4失点と終盤に苦しい内容となってしまった。中谷監督は「これほど大勢のお客さんが入った中で投げる経験はなかなかありません。そこで完投ができれば、夏につながるかなと思っていたのですが…」と完投勝利を期待していたが、さらに安定感のある投球を求めていた。

 9回表、武元 一輝投手(3年)が登板。ドラフト候補と呼ばれる武元は常時140キロ前半〜145キロの直球で相手打者を圧倒。報徳学園打線を抑え、勝利を収めた。これで4年ぶりの決勝進出。前回同様、大阪桐蔭との顔合わせとなった。

報徳学園に現れた超高校級捕手。超強肩、さらに元プロの教えで打撃も成長中

1番キャッチャー・堀 柊希(報徳学園)

 今年の報徳学園(兵庫)では、榊原 七斗投手(3年)がドラフト候補として注目を浴びているが、1番捕手の堀 柊那(ほり しゅうな)捕手(2年)の注目度が高まっている。二塁送球タイムは最速で1.8秒台を計測し、上位打線を打つように打撃力も高い。

 その堀がいきなり見せた。1回表、智辯和歌山の144キロ右腕・塩路 柊季投手(3年)から左中間スタンドへ飛び込む先頭打者本塁打を放った。これが高校通算11本目の本塁打という。

 178センチ、75キロといわゆる大型捕手ではなく、大型捕手と騒がれる選手と比べると細身に感じてしまう。それでも遠くへ飛ばす高い打撃技術を持っているのは確かだ。シンプルな構えから、きれいなレベルスイングで球を捉えることができ、高校2年生としてはかなりレベルが高い。

 打撃技術については、元プロの葛城育郎コーチからタイミングの重要性を学んだ。

「タイミングをどう取って、しっかりとコンタクトできるか。その点については繰り返し言われてきました。ヒットの延長線上がホームラン。想像以上に打球が飛ぶようになりましたし、中学時代はそれほどホームランが打てる打者ではなかったんですけど、だいぶ変わったと思います」

 堀の代名詞である「セカンドスローイング」も健在だった。1.9秒台を連発し、最高で1.85秒を計測。本人の自己最速タイに並んだ。憧れは甲斐 拓也捕手(ソフトバンク)。兵庫夙川(しゅくがわ)ボーイズ時代に、甲斐の特徴である捕球時に左足を前に出すスローイングフォームを参考にして、1.9秒台のスローイングまで速くなった。報徳学園入学後、体の近くで捕球したり、捕球後のステップの歩幅も狭くする努力を積み重ね、1.8秒台をたたき出すまでに成長した。

 6回には盗塁を決めるなど脚力もある。走攻守三拍子揃った2年生捕手の最終的な目標はプロ入り。報徳学園は今までも好捕手は多かったが、これほど野球センスが溢れた捕手も、なかなかいない。来年夏まで見逃せない。

ドラフト候補に挙がる報徳学園の二刀流は元プロの教えで打撃技術が進化。無安打もセンスの高さを示す

榊原 七斗(報徳学園)

 今年の報徳学園で最も注目を浴びているのが榊原 七斗投手(3年)。強力投手陣に左の好打者が揃っていた前チームからベンチ入りし、センスの高さを発揮。現チームでは投打の柱として活躍を見せている。初戦の市立和歌山戦でも本塁打を放つなど高い打撃技術を誇る。

 構えた時に安定感がある。スクエアスタンスで立ち、バットを立てて構えている。その時、グリップが体に近いところにある。構えで意識しているポイントについて榊原は「自分は体が硬いので、少しリラックスしたり、体を揺らして、うまくバットが出るように工夫をしています。またグリップの位置も一番バットが出やすくて、うまく力が伝わりやすいからです」

 準決勝は4打数0安打に終わったものの、1本はホームラン性のファウルがあった。ロスが小さく、力をしっかりと伝えられる打撃フォームが武器でもある。ヒットだけではなく、本塁打も打てるため、高校通算で14本塁打も放っている。元プロの葛城育郎コーチから最も学んでいるのは「タイミング」のとり方だ。

「右投手、左投手といろんな投手のタイプがいますが、葛城さんはそのタイミングのとり方、準備の仕方、目付けの仕方などいろいろ教えてくれました。ただ自分のフォームにこだわるだけではなく、準備の仕方によってタイミングの取りやすさが変わってきます。今まで知らない教えでしたし、打撃の引き出しが大きく広がりました」

 高度な技術があり木製バットへの順応も早いタイプではないか。センターの守備では抜けそうな打球をダイビングキャッチ。守備範囲の広さも一級品であるところを証明してみせた。

 投手としてはコンパクトな投球フォームから最速138キロをマークする。常時135キロ前後を投げるが、8回から3番手として登板したこの日のマウンドについては本調子ではなかったという。「(打席で)無安打に終わって、チームに貢献できず、悔しかったです」と振り返った。

 投手ではオリックス・宮城 大弥投手(興南出身)、野手ではソフトバンク・柳田 悠岐外野手(広島商出身)に憧れる兵庫の二刀流はこの夏、投打での大暴れを目指す。

(記事:河嶋 宗一)