大阪桐蔭の強打者たちも絶賛。近江の山田陽翔の技ありのピッチング

先発・山田 陽翔(近江)

<春季近畿地区高校野球大会:大阪桐蔭11−2近江>◇28日◇準決勝◇紀三井寺運動公園

 大阪桐蔭vs近江(滋賀)。センバツ決勝戦再現のカードに、球場の応援席を除いた内野席は満員。立ち見、通路で見る観客も多くいた。そんな中、行われた一戦は大阪桐蔭が大差で勝利したが、7回を終わった時点では2対2と見応えのある試合内容だった。

 近江のエース・山田 陽翔投手(3年)が万全ならば、大阪桐蔭打線に大量失点することはほぼない。そう思わせるほどの投球だった。速球は140キロ〜145キロ前後だが、山田の一番の持ち味は高速変化球を操る点にある。変化球は130キロ前後のカットボール、130キロ前半のツーシーム、130キロ前半のスプリット、120キロ台のカーブと、いずれも抜群の精度を誇り、高校生としてはレベルが高い。

 大阪桐蔭の1番・伊藤 櫂人内野手(3年)に対し、内角へのカットボールから入り、そしてスプリットで追い込んだ攻めは高校生のレベルを超えていた。甲子園で圧倒的な打撃を見せた大阪桐蔭を圧倒していた。

 対戦したドラフト候補・松尾 汐恩捕手(3年)はこう振り返る。

「対戦が決まってから、接戦は予想していて、簡単に打てないと思っていましたが、低めの変化球に手が出てしまいました。手が出てしまうほど凄かったです」

 センバツ、春季大会大活躍の松尾でさえも、山田の切れ味に驚いていた。

 星子天真主将も続ける。「変化球の切れ味が本当に凄かったです。9回にヒットを打ちましたが、山田投手から打ちたかった。新チームでいろんな投手と対戦してきて一番良い投手というのは間違いありません。苦しかったですが、僕も含めて、みんな山田投手との対戦を楽しんでいたと思います」

 大阪桐蔭のどの打者も山田の投球に脱帽だった。

 山田は大橋 大翔捕手(3年)のリードに感謝していた。

「相手打者を見ながら、ストレート中心なのか、変化球中心なのか。そのメリハリはできていたと思います。その点は大橋のリードが良かったと思います」

 6回途中でマウンドを降りてしまったが、そのインパクトは強烈だった。 

控え左腕の急成長で見えた近江の方程式

2番手・星野 世那(近江)

 2番手としてマウンドに登ったのは星野 世那投手(3年)。センバツで毎試合完投して勝ち上がった山田の姿を見ている高校野球ファンにとっては、最後まで投げるイメージはあったかもしれないが、実はもともと星野は7回から登板する予定だった。

 近江にとっては投手陣の「山田頼み脱却」が一番の課題。その克服に向けて動いたのが、山田本人だった。今年の投手陣で山田に次ぐ実力を持つ星野を7回からリリーフとして起用することを多賀監督に提案していた。多賀監督は「山田自身、今の山田頼みの投手陣をなんとかしたいと思ったのでしょう」

 継投策というのは、監督主導で決められるものだと思ったが、そこに選手の考えが入ることに驚きだったし、それを受け入れ、許可した多賀監督も素晴らしい。もちろんそういう起用ができるのは、星野のセンバツ後の成長が著しかったからだ。

 右腕のグラブを高々を掲げ、真っ向から振り下ろす投球フォームで、直球は常時130キロ前半〜139キロを計測。力で押すことができるようになった。110キロ前半のスライダーや90キロ台のカーブを織り交ぜ、緩急を使った投球もできる。何より、表情、攻めから大阪桐蔭の打者に立ち向かっていく姿勢が感じられたことだ。センバツが終わり、多賀監督からも山田頼み脱却へ向けて、奮起を促す話をもらっていた。

 なにか変えなければならないと決めた星野は日々の投球練習の取り組みを変えた。

「常に実戦を想定することを意識しました。打者、カウントを想定して、試合を意識した投球ができるようになったと思います。今までは焦ることはあったのですが、焦りそうになったら深呼吸をして落ち着かせることもできるようになったと思います」

 県大会、近畿大会で安定した投球を続け、今ではリリーフについても「得意です」と語るまで自信が持てるようになった。この日は8回表、相手4番・丸山 一喜内野手(3年)に勝ち越し本塁打を浴びてしまった。この点について「甘い球ではなく、ストレートも悪くなかったです。ただストレートと分かってしまうような配球の仕方が反省点です」

 それでも集中打を許さなかった。以前と比べても十分に渡り合えるレベルになっていた。最終的に2対11と大差をつけられてしまったが、多賀監督も「着実に差が縮まっている」と語るように、7回まではどちらに転ぶか分からない試合展開だった。

 山田は「夏へ向けて走り出しているチームも多くある中、良い経験をさせてもらいました。これからは一からチームを見直し、3年生全員で団結していきたい」と語った。

 着実にチームとして成長が見える近江。夏も主役になる存在となりそうだ。

140キロ中盤が3人。やはり大阪桐蔭投手陣は全国トップクラス

先発・川原 嗣貴(大阪桐蔭)

 大阪桐蔭が結果的に大勝したが、7回までは2対2と、両チームの投手陣の好投ぶりが光ったが、大阪桐蔭の投手陣が全国トップクラスの力量を証明した。

 長身から繰り出す140キロ中盤の速球が魅力的の先発・川原 嗣貴投手(3年)は立ち上がり2点を失ったが、女房役の松尾 汐恩捕手(3年)は冷静だった。
「(点を)取られたことに焦りはなかったですね。これから修正していけば取られることはないと思いました」

 その言葉通り、川原は威力ある直球を投げ込む。和歌山県営紀三井寺野球場 のスピードガンで、常時140キロ前半を計測し、自己最速の147キロも計測した。手元のスピードガンでも130キロ後半〜143キロ。川原が実戦デビューしたのがちょうど1年前の春の大会だが、当時は130キロ中盤〜130キロ後半がほとんどだったことを考えると、明らかにレベルアップしている。そして直球以上に強烈だったのがカットボールだ。球場のスピードガンでも130キロ後半を計測し、手元で鋭く曲がる。さらに130キロ前後のフォークも切れ味が鋭かった。2回以降は無失点で、6回まで投げて、5奪三振、2失点とゲームを作った。松尾は「ここにきてカットボールがだいぶ良くなっています。球速が速いのが良いです」と絶賛をしている。

 7回裏からは2年生左腕・前田 悠伍投手が登板。松尾曰く「ストレートの調子は本調子ではなかった」と語るように、ミットに突き刺すような直球は少なかったが、それでも追い込むたびに、力を込めた140キロ前後の速球を投げ込む。球場のガンでは141キロだったが、手元のスピードガンでは143キロを計測。130キロ前後のカットボールや120キロ前半のチェンジアップの精度の高さは相変わらず抜群で、2回を投げて無失点の好投だった。

 9回裏のマウンドに登ったのは[/player]別所 孝亮[/player]投手(3年)。速球が自慢の本格派右腕は、速球中心の投球を披露した。直球は140キロ前半〜147キロで、スピードが出にくい手元のガンでも143キロをマークするなど、速球の威力は川原に負けていなかった。120キロ前半のスライダーも精度は高い。センバツよりも明らかに出力が高まっており、さらに速くなる予感がある。松尾も「成長が見える投手で、まだまだ良くなると思っているので、期待をしています」と期待している。

 登板した3投手が140キロ中盤を計測し、精度の高い変化球を投げ込む。これほどの投手陣は全国でもなかなかいない。

 決勝戦の智辯和歌山戦では強力投手陣の実力を思う存分発揮する。

(記事:河嶋 宗一)