強力投手陣相手にも力を発揮。弘前学院聖愛が延長戦を制する

決勝打を打つ高木(弘前学院聖愛)

<春季東北地区高校野球大会:弘前学院聖愛7−6仙台育英(延長11回)>◇9日◇準々決勝◇県営あづま

 昨夏、甲子園出場を果たした弘前学院聖愛(青森)。東北大会出場の常連であり、伝統的に野球を知っていて、試合の流れに応じて冷静にパフォーマンスができる野手が多い。さらに走攻守すべてにおいて磨かれている。

 強力な仙台育英投手陣にもその強みを発揮した。

 1回、いきなり三者連続三振を奪われたが、僅かなチャンスを逃さなかった。3回表、先頭打者が四球で出塁。ここから1死後、1番・丸岡 昂太郎外野手(3年)の右越え二塁打で、二、三塁のチャンスを作り、2番工藤 遼大内野手(3年)の中前適時打で2点を先制した。

「第1打席(三振)は結構(球が)速いなと思いましたが、一度、切り替えました。この打席はしっかりと食らいついて、とにかく当てようと思いました」(工藤)

 振り抜いた打球はセンターへ抜けて二者が生還した。3回裏に2点を取られ、同点に追いつかれたものの、今度は4回表、1死から四球で出塁した走者を一塁に置いて、6番工藤 天晴捕手(3年)が打席に入った。

「先頭打者が四球でしたので、120%、直球でストライクを取るかなと思いました」

 狙い通りだった。直球を振り抜いた打球は左翼席へ飛び込む2ランとなった。その後も、9番・神 蓮虎内野手(2年)の適時打で5対2とした。6回表にも工藤遼の適時打が飛び出す。7回に同点に追いつかれたが、11回表には3番高木 優斗内野手(3年)の適時二塁打で勝ち越しに成功し、ベスト4進出を決めた。

 今年も例年通り野手のレベルが高い。俊足を生かし、広範囲の守備が光る1番中堅の丸岡は打撃力が高く、3安打の2番工藤遼もバットコントロールが巧みで、速球投手への対応力も高い。正捕手の工藤 天は172センチ、90キロと恵まれた体格からパワフルな打撃と強肩を売りにする捕手であり、7番遊撃の三上 泰斗内野手(3年)は俊敏な動きと強肩が光る遊撃手だ。9番神はバットコントロール技術が高く、9番打者とは思えない。速い打球にもしっかりと合わせる二塁守備にもセンスの良さを感じさせた。

 投手のレベルも高く、エースの葛西 倖生投手(3年)は上背はないが、バランスが取れた投球フォームから繰り出される直球は135キロ〜142キロを計測。ここぞという場面では140キロ前後の速球で押す投球が光る。津川 凱投手(3年)も真上から振り下ろすフォームから投げ込む直球は常時130キロ前半で、12キロ台のフォーク系の変化球も光っていた。

 弘前学院聖愛の選手の特徴として、プレーに落ち着きが見えた。選手たちは「前後際断」という言葉を大事にし、1つ1つのプレーに集中することに努めているという。ノーサイン野球を掲げるなど、大人びた野球を実践しようとしている弘前学院聖愛。面白いチームであることは間違いない。

全国トップレベルの投手陣擁する仙台育英 脆さを露呈し、初戦敗退

先発・古川翼(仙台育英)

<春季東北地区高校野球大会:弘前学院聖愛7−6仙台育英(延長11回)>◇9日◇準々決勝◇県営あづま

 仙台育英(宮城)の強みは、140キロ超えの投手が多い強力な投手陣だといわれている。昨秋の東北大会でも感じられたが、投手1人1人の出力は他校と比べても高く、全国レベルの投手陣といえる。ただ、浮き沈みが激しく、県大会以上のレベルになると、その脆さを露呈しやすいチームだと感じた。

 仙台育英の先発・古川 翼投手(3年)は、初回いきなり三者連続三振を奪った。2021年のセンバツも経験した143キロ左腕。コンパクトなテークバックから振り下ろす直球は常時135キロ〜142キロを計測し、球威もあり初回は140キロを何度も超えた。120キロ前半のスライダーや100キロ台のカーブも低めに決まり、最高の立ち上がりだった。

 ただ2回以降からコントロールが少しずつ甘くなり、140キロ超えの直球も少なくなっていた。3回表には先頭打者に四球を許し、1死から弘前学院聖愛(青森)の1番・丸岡 昂太郎外野手(3年)の右越え二塁打で、二、三塁のピンチを招き、2番工藤 遼大内野手(3年)の中前適時打で2点を先制された。

 仙台育英はすぐにその裏に追いつくが、4回表には1死から6番工藤 天晴捕手(3年)に高めの直球を振り抜かれ、左翼席へ飛び込む2ランを打たれてしまった。さらに9番・神 蓮虎内野手(3年)の適時打で、2対5と突き放される。背番号「1」の古川は3.1回を投げて、5失点で降板。古川は「四球からピンチを招いて打たれるという自滅の投球になって悔しかったです」と振り返った。2回以降は全体的に球が高く、振り抜かれやすいゾーンに集まっていた。夏までの修正を期待したい。

 2番手として登板した長身右腕・鈴木 晶太投手(3年)は、長い腕を振り下ろす独特の投球フォームから常時130キロ〜135キロの直球に、120キロ前半のスライダーを投げ込んだが、球が高めに浮くことが多く、6回表に2番工藤遼に適時打を打たれ、チーム6失点目を喫した。

 3番手の速球派右腕・髙橋 煌稀投手(2年)は130キロ中盤ぐらいだったが、球速表示以上を感じさせる速球を投げ込み、変化球も鋭く、無失点に抑えた。

 仙台育英打線は7回裏に追いつき、8回表から145キロ左腕・仁田 陽翔投手(2年)が登板。真上から振り下ろす直球は常時130キロ後半〜145キロを計測。特に指にかかった時の直球は前田 悠伍投手(大阪桐蔭)にひけを取らないものがあり、120キロ後半のスライダーの切れ味も鋭く、来年のドラフト候補として期待できそうな内容を見せた。11回表に決勝打を打たれ、惜しくも初戦敗退となったが将来性を感じさせた。入学当時は136キロだった直球の最速が、この1年間で9キロもアップした。仁田は「課題は制球力なので、しっかりと自分のスタイルを確立して、成長したいです」と意気込みを口にした。

 投手、打撃、走塁ともに詰めの甘さがあったとはいえ、下級生も多いチームでもあり、ケアレスミスが出るのは致し方ない面があるだろう。

 個々の選手のレベルは高いが、戦術、判断力や、自分の技術を安定して発揮できるメンタルなど短期間でどれだけ仕上げることができるか。

(記事:河嶋 宗一)