夏の借りは夏に返す!・鹿児島実

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<第104回全国高校野球選手権鹿児島大会:鹿児島実3−2大島>◇24日◇決勝◇平和リース

 104回目の夏の鹿児島の頂点を争ったのは鹿児島実と大島。鹿児島実は全国的にも名前の知れた県内屈指の名門校ながら4年間遠ざかっていた夏の甲子園を目指す。一方の大島は、春センバツに続いて初の夏の甲子園を目指す離島の進学校。注目度が高く、夏休み最初の日曜日ということもあって早朝から長蛇の列ができた。5回を過ぎても会場に収容できず、急きょ外野席を開放する異例の措置がとられるなど、多くの人の熱気に平和リース球場は包まれた。

 試合は立ち上がりから鹿児島実・赤嵜 智哉(3年)、大島・大野 稼頭央(3年)、今大会の注目両左腕エースが前評判通りの好投で、5回まで互いに得点できなかった。

 赤嵜はスライダー、チェンジアップの切れが抜群で、大島打線に狙いを絞らせず、淡々とスコアボードに0を刻んだ。

 一方の大野は度々走者を背負ってピンチも招いたが、ここぞという場面では緩急を生かし、仕上げは140キロ超の速球でねじ伏せ、こちらも得点を与えなかった。

 グラウンド整備直後の6回、鹿児島実は下位打線が粘って1死一、二塁の好機を作ると、8番・筏 伸之助(3年)が遊撃強襲の内野安打を放って先制。9番・田中 大翔(3年)が左翼線二塁打で続き、2点を先取した。

 7回には1死二塁から5番・濵﨑 綜馬(3年)の左前適時打で3点目を挙げた。

 大島は8回まで赤嵜の前に散発2安打。7回は2つの四球と暴投で初めて三塁まで走者を進めたが、肝心の適時打が出なかった。

 9回裏、併殺で2死となりこのまま鹿児島実の軍門に下るかと思われたが、そこから粘りを見せる。エラー、途中出場の6番・体岡 大地(2年)が中前打でつなぎ、暴投で二、三塁に進むと、代打・青木 蓮(3年)が左翼線二塁打を放って1点差に詰め寄った。

 なおも2死二塁と一打同点の好機だったが、赤嵜が踏ん張って右飛に打ち取り、鹿児島実が4年ぶり20回目となる甲子園への切符を勝ち取った。

「夏の借りは夏に返すしかない」(宮下正一監督)。鹿児島実ナインの合言葉だった。昨夏の決勝で宿命のライバル樟南に敗れて以降、この1年間は思うような結果を出せず苦しんだが、その悔しさをエネルギーに替え、名門らしい勝負強さを発揮した。

 大島のエース大野は「ビデオで研究するたび『これは打てない!』と思えた」(宮下監督)ほどの存在感があったが「大島を上回る粘り強さ」を打線が発揮。立ち上がりから、初球からでも果敢に打っていく積極的な打撃でプレッシャーをかけた。得点は中軸ではなく、下位打線の粘りから生まれたものだった。

 何といっても左腕・赤嵜の粘投は、今大会を勝ち上がり、この試合を勝ち抜く最大の原動力だった。途中左指の血豆が破れるアクシデントもあり、終盤は球が抜けてピンチを招いた場面もあったが最後まで投げ抜いた。

「力はあると思っていた」(宮下監督)今チームだが、赤嵜が左ひじの疲労骨折で戦線離脱。ベストメンバーを組めないまま昨秋は2回戦敗退、今春は準々決勝敗退、NHK旗は初戦敗退と結果を残せず、10年ぶりにノーシードで夏を迎えるという屈辱を味わった。

 それでもこの夏は初戦で宿敵・神村学園を延長戦で破り、準決勝では昨秋2回戦で大敗した鹿屋中央に雪辱。決勝は大会屈指の好投手・大野を攻略して栄冠をつかんだ。「鹿実らしい不撓不屈の野球ができるようになった」と宮下監督。駒壽 太陽主将(3年)は「鹿児島の代表として恥ずかしくない試合をして、上位に勝ち進みたい」と甲子園への意気込みを語っていた。

 9回表2死。大島・大野は捕手・西田 心太朗(3年)の変化球のサインに首を振った。「最後の球は直球と決めていた」。この日最速となる144キロの直球で空振り三振。全身バネの若鯉のように躍動し、この日一番の雄叫びを上げた。

 鹿児島実のエース赤嵜とは昨夏も投げ合って敗れている。雪辱の気持ちも強いが、どんな場面でも淡々と投げる姿は「学ぶものがある」と一目置く好敵手だ。

 だからこそ、余計に負けたくなかった。鹿児島実打線を封じるカギは「緩急を生かす」。140キロの直球を生かすためにも、120キロ台のスライダー、110キロ前後のチェンジアップ、90キロ台のカーブ、これまで磨いた変化球を巧みに織り交ぜた。

 序盤から度々走者を背負う緊迫した展開だったが、「相手の待っているコースを続けない」西田の頭脳的な配球に導かれ、ピンチも小気味よく切り抜けていく。3、5回の締めくくりは、いずれも4番・永井 琳(3年)を140キロ台の直球で空振り三振に仕留めた。ここぞという場面は直球の真っ向勝負にこだわった。

 6、7回で3失点したが「4点とって逆転する」味方の奮起を最後まで信じ抜いた。8、9回は1本のヒットも、1人の走者も許さない気迫の投球が9回裏の反撃を導く力になった。

「甲子園に行けないのは悔しいけれど後悔はしていない」と胸を張って言い切る。最後は赤嵜と握手を交わした。「自分は甲子園で悔しい思いをした。その悔しさを晴らせない分、赤嵜君には思う存分甲子園で暴れてきてほしい」という思いを込めた。自身の悔しさは、これからプロに行くためのエネルギーにするつもりだ。

(取材=政 純一郎)