【最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと】#19

 在宅医療中の患者さん側の困り事には、基本的に「今困っていること」「私たちから見て客観的に困っていると思われること」「これから困るであろうこと」の3つに分けて考えています。

 このうち予想のつく困り事の場合、あらかじめ解決の道筋をつけて準備しておけば、ご家族も慌てることなく落ち着いて対処できます。具体的にどういったことを念頭に置いておけばいいか、次に挙げたいと思います。

 まずは、「自分たちだけでやってしまわない」。たとえば、入院から在宅医療に切り替えた患者さんがいた場合、家族は薬の世話やトイレの付き添いをはじめ、すべてを自分たちでしなければいけないと考えがちです。

 しかし、心配ご無用。今の医療保険や介護保険はとても充実しており、収入により決まった上限額の負担で、がんの末期であれば医師や訪問看護師さんが連日介入し、全身の状態の確認や投薬の管理などを行います。だから、安心して頼ってください。独居の方でも同じで、人の手を借りることをいとわずに頼ってもらえればと思います。

 次に、「在宅医療スタッフへなんでも気軽に相談し連絡する」。患者さんやご家族は悩みや迷いがあっても、「家に来てもらうほどじゃないし、もし連絡したらお医者さんに迷惑かも」「こんなことを相談してもよいのか判断がつかない」など迷われる方が多い。しかし、少しでもなにかあれば気軽に連絡してください。

 連絡いただいた電話で、食欲や体温や排便・排尿についてうかがい、往診の必要の有無を判断します。連絡いただいた内容はカルテにも記載しているのでその後の診断にも役立ちます。

 最後に、「慌てて救急車を呼ばない」。

 救急車の方が速くて安心と考えがちですが、受け入れ先の病院を探すのに時間がかかった揚げ句、到着後、医師の診察を受けられるまでさらに時間がかかるのは珍しくありません。救急車を電話で呼んでから診察まで30〜40分もかかった……という場合もあるのです。初診であれば、もっと時間がかかります。

 その点、在宅診療では医師が現場に到着するまで20〜30分ほどで、顔なじみの医師や看護師がうかがい、診察もスムーズに進みます。

 仮に容体が変化し病院への搬送時に死亡した場合は、病院側では受け入れてもらえず、最悪の場合は警察署に移送され、遺体安置所で主治医が死亡診断書を書くなんてことにもなりかねません。そうなれば遺体は警察署に留め置かれ、すぐに帰宅できない場合も。

 朝起きたら患者さんの息が止まっていた――となると、びっくりして救急車を呼びたくなる気持ちはわかりますが、まずは診療所に連絡してください。死亡診断書は在宅の主治医が書きます。

 在宅診療は常に患者さんやご家族に寄り添います。いろいろ話して相談してください。多くの方から、自宅で過ごせてよかったという声をいただいています。ぜひ、いろいろな気持ちを話してください。

(下山祐人/あけぼの診療所院長)