毎日のスケジュール管理、ニュースチェック、SNSでの情報交換や会話など、今やライフラインとして欠かせないスマートフォン(以下、スマホ)。片時も手放せないという人も多いはずだ。しかし、それとともに「スマホ老眼」と呼ばれる新種の老眼が、スマホを使う頻度が高い若年層を中心に急増している。

 どんな老眼なのか。眼科専門医である「クイーンズ・アイ・クリニック」(横浜市西区)の荒井宏幸院長が言う。

「老眼は誰にでも起こる目の老化現象のひとつで、早い人では40代から目の見え方に変化が起こります。近くにピントが合いにくい、小さな文字の読み書きがしづらい……などです。しかし、スマホ老眼は本来、老眼とは無縁のはずの20〜40代が最も危ないゾーン。それは加齢性の老眼ではなく、老眼と似たような症状がスマホの使い過ぎによって起こるからです」

 スマホ老眼を疑うチェック項目が7つある。

①スマホを1日に延べ3時間以上操作している。②スマホの操作直後、画面から目を離すと周囲の視界にピントが合わない。③遠くを見ていた後に近くを見るとピントが合わない。④近くを見ていた後に遠くを見るとピントが合わない。⑤朝はよく見えていたスマホ画面が、夕方になると見えにくくなる。⑥以前は読めていたスマホの文字が、最近読みづらい。⑦原因は分からないが、肩や首の凝り、頭痛などが以前よりひどい。

 この項目のうち3つ以上当てはまれば、スマホ老眼の可能性が高いという。また、「目のピントが合わない」と感じたとき、それが本物の老眼かスマホ老眼かを見分けるには、試しに3日間スマホを使うのをやめてみる。それでもまだ目のピントが合いにくい場合は本物の老眼の始まりの可能性が高いという。

 では、スマホ老眼は目がどのような状態になるのか。目のピント調節機能は、カメラのレンズの役目をしている「水晶体」と、水晶体の厚みを調節している「毛様体筋」によって行われている。

「遠くを見るときは、毛様体筋がリラックスして水晶体が薄くなります。近くを見るときは、毛様体筋が緊張して水晶体が厚くなります。しかし、本物の老眼は加齢によって水晶体自体が硬くなってピントが合わせにくくなる。一方、スマホ老眼の原因は毛様体筋の疲労です。本物の老眼は加齢による目の変化なので治りませんが、スマホ老眼は目の調節機能の一時的な不具合なので、少しの気づきと工夫で元に戻すことが可能です」

 しかし、スマホの使い過ぎを改善しないでスマホ老眼を放置していると、肩凝りや頭痛を悪化させる。それにスマホのディスプレーからはブルーライトが発せられるので眼精疲労を引き起こしたり、夜間の使用は睡眠のリズムを乱す。睡眠障害から慢性疲労はもちろん、うつ病の発症にもつながりかねないのだ。

 また、ゲームプレーなど長時間のスマホ操作は画面を凝視するので、まばたきの回数が減少しドライアイに直結する。特にゲームは、せめて「1日1時間」に抑えた方がいいという。

「スマホ老眼をつくる3大悪習慣は、『電車内スマホ』『歩きスマホ』『寝転がってスマホ』です。電車内など動いているものの中や歩きスマホは、手元がブレるので目を激しく疲れさせます。また、あおむけに寝ると目はバランスを取るために自動的に眼球を外側へ回転させます。その状態で近くのスマホを見るためには、目を内側に寄せるので目の周りの筋肉を過剰に働かせるのです」

■音声ガイドを活用して画面を見る頻度と時間を減らす

 正しいスマホ画面と目との距離は30〜40センチ。画面を眺める角度も重要で、目線を画面に向けたとき、目が少し下を向くくらい(約30度下)の角度が最適とされる。注意することは、あくまで目線を下向きにするだけで、首まで下に傾けないことだ。

 周囲とスマホ画面の明るさに差がありすぎると、目に負担がかかる。目に不快(見づらい)な状況で長時間のスマホ操作をするのはNG。画面の「輝度」も高いと目が疲れるので、低めの設定にするのがいい。

 スマホの待ち受け画面は、白っぽくて明るめの画面より、暗めの落ち着いた画面がおすすめという。

 スマホ画面を見る頻度や時間を減らすためには、「音声ガイド機能」や「バイブレーション機能」を活用する手がある。たとえば「カーナビ」アプリの場合、音声で道案内をしてくれたり、曲がる地点に来ると振動して伝えてくれるサービスがある。これらの機能を上手に使うといいという。 次回は、スマホ老眼を解消する目のケアを紹介してもらう。