横隔膜のけいれんと声帯の閉鎖が連動。脳や消化器の病気、がんなどが原因で起こることもある

横隔膜のけいれんで声帯が閉じられるときに特有の音が

熱いものを飲んだときや大笑いをしたとき、あるいはお酒を飲みすぎたようなとき、不意にしゃっくりが起こってなかなか止まらずに困った、という経験はありませんか。自分の意思とは無関係に「ヒクッ」「ヒクッ」と続くとわずらわしいものですが、そのうち何とか治まるのがふつうのしゃっくりです。

ところが中には何時間も続くことがあり、そうなると食事や睡眠の妨げになって、高齢者だと全身が衰弱することにもなりかねません。ときには胃や食道など消化器の病気、脳神経系の病気などが原因で起こることもあります。たかがしゃっくり、されどしゃっくり、なのです。

しゃっくりは、実は赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいる胎児のときからしているといわれます。胎児が母体の羊水の中に浮かんでいるとき、飲み込んだ羊水で膨れた胃の刺激により横隔膜がけいれんを起こすことがあり、これらの運動がしゃっくりである、などの説があります。確かに、胎児のしゃっくりを感じとっている妊婦さんは少なくないようです。

けいれんを起こす横隔膜とは、体の内部の胸の部分とおなかの部分を上下に分けている膜状の筋肉です。この筋肉が何らかの刺激が引き金になってけいれんし、それと連動して声帯のすき間が閉じられるときに例の特有の音が出ます。引き金になる刺激とは、暴飲暴食、炭酸飲料を飲んだとき、たばこの吸いすぎ、食事や飲酒のときに空気も一緒に飲み込んでしまう空気嚥下(えんげ)症 [呑気(どんき)症ともいう]などがあり、また肥満によってもしゃっくりが起こりやすくなります。

しゃっくりは始まると一定の間隔でくり返し起こりますが、ふつうはしばらくすれば自然に治まるか、しゃっくり止めの民間療法を試みて止めるのが一般的でしょう。どのようなしゃっくり止めの方法があるか、いくつかご紹介します。これらのうち、どれかは試したことがあるという人も少なくないでしょう。

●しゃっくり止めの民間療法
・息を深く吸ってできるだけ長い間止める
・舌を引っ張る
・くしゃみを誘発する
・冷たい水を一気に飲み干す
・急に驚かす
・かきのへたを煎じて飲む など

病気が原因で起こる場合もある

いろいろな民間療法を試してもなかなかしゃっくりが止まらなかったり、たびたびくり返すようだと、日常の会話や仕事に支障が出るでしょうし、食事や睡眠も難しくなって健康が損なわれる恐れも生じます。外国には68年間もしゃっくりが止まらなくても普通の生活を送った人もいるようですが、一般には48時間以上続く場合は「難治性しゃっくり」として、何らかの病気が原因になっている可能性が高いとみられます。

以下のような病気がしゃっくりを引き起こすことがある、と考えられています。なかなか治まらないしゃっくりの原因を確かめるためには、「総合診療科」とか「振り分け外来」といった外来が近くにあればそこを受診し、必要なら別の専門科を紹介してもらうとよいでしょう。そういった外来が近くになければ、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。

●しゃっくりを引き起こす主な病気
・横隔膜を直接刺激する病気:横隔膜下腫瘍、肝臓がんなど
・横隔膜神経を刺激する病気:食道がん、肺がん、甲状腺がんなど
・脳神経系の病気やけが:脳腫瘍、脳梗塞、頭部外傷など
・呼吸器や消化器の病気:肺炎、気管支ぜん息、消化器系のがんなど
・代謝性の病気:アルコール中毒、痛風、尿毒症など

【監修】
河合 隆先生
東京医科大学病院 内視鏡センター教授
1984年東京医科大学卒業、88年同大大学院修了。同大講師、内視鏡センター部長、助教授を経て、2008年から現職。日本消化器病学会指導医、日本消化器内視鏡学会指導医、日本内科学会総合専門医。日本消化器病学会評議員、日本消化器内視鏡学会評議員、日本ヘリコバクター学会評議員、日本消化器内視鏡学会経鼻内視鏡研究会世話人などを務める。得意な治療は食道・胃癌診断と治療、ヘリコバクターピロリ感染症(2次除菌、3次除菌療法も行う)

(編集・制作 (株)法研)
※この記事は2009年6月に配信された記事です