◆大相撲名古屋場所9日目 ○宇良(とったり)日馬富士●(17日・愛知県体育館)

 前頭4枚目で人気の業師、宇良が横綱・日馬富士をとったりで沈めて初金星。2015年春場所が初土俵の同期・北勝富士らに並び、史上2位タイとなる15場所目での快挙を涙で喜んだ。横綱・白鵬は初顔の前頭4枚目・輝をはたき込みで退け、初日から9連勝。元横綱・千代の富士(故人)に並び、史上2位の通算1045勝目を挙げた。元大関・魁皇(現・浅香山親方)が持つ1位の1047勝まであと2勝とした。

 表現できない感情が涙となってあふれ出た。2度目の横綱戦で初金星。インタビューに応じた宇良は言葉に詰まった。「ちょっと…ちょっと…分からないです。(言葉が)出てこないですね」。感激の余り、答えが見つからない。「力を出し切れて良かったです。明日も頑張ります」。唇をかみ締め、声を震わせて何とか絞り出した。

 地をはうような日馬富士の突進に、さらに低く、頭からぶつかった。左に重心をずらし、横綱の右腕を両手で抱えた。体を開きながらねじり倒した。2秒6の早業、とったり。結び前なのに座布団が舞う土俵で、勝者だけがぼう然としていた。「(勝った瞬間は)分からない。声もいつもと違って震えていますよね」。本来なら横綱、大関戦は組まれなかった今場所。上位陣の休場で生まれたチャンスを勝負強さでものにした。

 鳥羽高校3年で就職支援コースを選択。相撲を職業にする意思はなかった。「(今の自分は)想像できなかったですね」。当時の恩師・田中英一先生は「指導者への適性がある」と見て、大学進学を勧めた。運命の一番は3年の近畿大会。「決勝まで残ったら大学に推薦しよう」と考えていたところ80キロ級で準優勝。ホテルで母・信子さん(50)ともども説得した。先生の熱意に押され、関学大への進学を決めた。勝負強さの一端は、この頃から発揮していた。

 自己最高位で6勝3敗1金星の快進撃だが「通用したとは思ってない」と謙虚。「居反りの宇良」と話題が先行したものの、幕内で通用する押しも身に付け、本格派の力士へ進化しつつある。「これで終わりじゃないので」。10日目は新大関・高安戦。感傷に浸っている暇はない。次世代のスター候補は右肩上がりの成長曲線を描く。(秦 雄太郎)

 ◆宇良和輝(うら かずき)

 ▽生まれ 1992年6月22日。大阪・寝屋川市生まれ。25歳。

 ▽相撲歴 4歳から相撲を始め、京都・鳥羽高から関学大教育学部(小学校と幼稚園の教員免許取得)に進学。13年にロシアで開催されたワールドコンバットゲームズ軽量級決勝で居反りを決めて優勝。

 ▽体重 鳥羽高入学時は152センチ、52キロ。関学大2年時に無名の京大1年生に負けるまでは体重別65キロ級で出場。全国大会に出られなかった悔しさから、無差別級に出場するため増量を開始。大学時代は白飯をラップに包んで持ち歩き、1日5合食べることを目標にしていた。

 ▽MC宇良 巡業中にはお題に対して即興でラップを披露し周りの関取衆を驚かせた。

 ▽サイズ 174センチ、137キロ。